手をつないで
私の後ろに、聡がついて来る。このまま走って逃げてやろかな……。
空は薄い雲間から、星が見えた。明日は晴れるのかな?そんな事を考えていたら、聡が話始めた。
「この前は、ごめん。花火大会の日は外せない予定があって……その用事が何時に終わるかわからなくて誘えなかったんだ……」
その予定って何?って……訊いても答えてくれなさそうだね。まぁ、花火大会に誘えなかったのはこっちも同じだし…………結果的に店番の交代して、店長とミナさんがうまくいったから、結果オーライなんだけど…………。
そもそも、聞きたいのはそこじゃない。
「どうして…………避けてたの?私のコブラツイストに引いたから?」
「違うよ!あれ、コブラツイストって言うんだ……。」
今そこ……?あれに恐怖を感じたんじゃないの?
「じゃあ、会った時どうして、怒ってる?って聞いたの?」
「え……だって…………勝手にキス……したから……ミア、怒ってるかと思って……。」
は?私がいつ?いつ怒った?
「それに…………その…………あの後、どんな顔して会えばいいのかわからなくて…………逃げてごめん。」
はぁ?乙女なの!?乙女男子ですか!?
何だか…………これ以上怒る気も失せた。
私、1人で何焦ってたんだろう。好きって言われてないからって……何?好きって言われなくても、それでも……こうして隣に聡がいる。私達は、私達のペースで進んでいけばいい。その事に、やっと気がついた。
「技、好きにかけていいよ。」
「かけないよ。」
断った。…………のに、それでもまだ訊いてくる。
「かけていいよ?」
「かけないって。」
「でも……」
でも…………?
「かけて欲しいの?!」
「…………少し。」
「…………。」
はい、アブノーマル決定……!
「あ、今、そうゆう趣味?って思った?」
「…………思った。」
思ったよ!ええ、思いましたよ!とうとう本性現しやがったなって思いましたとも!!
「それがミアの愛情表現なら、それもいいかなぁって。」
「聡…………。」
やっぱり聡は優しい…………!!って待て待て待てー!
「違う違う違う!技かけるの、愛情表現とかじゃないからね?」
「あはははは。そうなの?」
なんか、ちょっと感動しちゃって、スルーしそうになったけど、それ、私がアブノーマルな感じになってない?もはや、好きの裏返しでとかでも何でもないから!
「僕も、ハグとか…………キスとかの方がいいかなぁ。」
ええ、そうですね。それは、私も同じだな…………。
「じゃあさ、誘ってよ。」
「何故に私から?」
「最初に、一緒にシャボン玉やりませんか?って誘ってくれたのは、ミアだよね?」
「それは……」
今一番したい愛情表現?難しい…………。何だろう?ハグ?キス?違うなぁ。今は普通に…………恋人みたいに、ただ、手をつないで…………歩きたい。
「手……手……手……」
手、しか言えないよ。
「手……?」
「いや、手でわかるよね?」
聡は私を見て、しれっと言った。
「わかんない。」
こんの小悪魔~!
「そうゆう所あるよね?」
「え?何?手、繋ぐ?」
やっぱり……あんたはズルい!!
「じゃあさ、仲直りしたから、またあれやろうか?」
「アレ?」
「おまじない。」
どうやら、聡はあのおまじないが気にいったらしい。
「姿勢を正して、両足揃えて。これからもよろしく。ミア。」
右足と左足のペアがちゃんと揃って、いつまでもこうやって、手をつないで歩いて行けますように。




