上手に誘えない
あれからというもの…………唇の感触を思い出しては、祐兄に技をかけるという修行をしていた…………
って、そんな訳ないでしょ!?もう二度とやらない!!絶対、誓って誰にも技はかけない!
「ミアちゃん何だかご機嫌だね~!彼氏と上手くいってるんだ?」
店長が私の様子を見て言った。
「え?そう見えます?あ、店長の方はどうですか?ミナさん、デートに誘えました?」
「あはははは!なかなかOKしてもらえないんだよ~」
店長はミナさんという難攻不落の城に苦戦している。
「今度の花火大会に誘ったんだけど……みんなの着付けとかがあるから無理って言われたんだ。」
みんなの着付けとか…………?結構どうでもいいことで断られてるよね?脈ないのかな?
ミナさんは、私に会いにたまにここに来てくれる。その時に、店長と話す姿はそんなに嫌そうじゃない。むしろ好感触なのに……。
「先に告白しちゃうってのはどうですか?相手に好きって言われると、好きになっちゃうっていうじゃないですか?」
「そっか……先に告白してみるか。ミアちゃん、ありがとう!あ、もしかして、ミアちゃんも好きって言われて好きになった感じかな?いいねぇ~青春だねぇ。」
好きって言われて…………?ない!!
店長…………青春は甘くないっすよ。
そうだった…………私…………聡に好きって言ってない!!言われてもない!!
ゆたか君の時もそうだった。何?私は好きとか言われない人種なの?!それとも言わせない何かがあるの!?
ああ!あの時コブラツイストじゃなくて、ちゃんと告白してたら…………キスして浮かれてる場合じゃない!!ちゃんと告白しなきゃ…………!
そうだ!私も花火大会に誘おう!
私は携帯を取り出すと、しばらく携帯とにらめっこしていた。
どうしよう…………どうしよう…………いざ誘うとなると…………どうメッセージを送っていいかわからない!!
『来週花火大会あるんだって~!一緒に行きたいな~!』
なんだこれ?浮かれてんな…………キスして浮かれてるとか思われたくない!!
『来週の土曜のご予定はどのようでしょうか?もしご予定がなければ、花火大会にご一緒させていただけませんか?』
敬語…………?業務的…………
『土曜の花火大会に行こう。』
簡潔!簡潔だけど、素っ気な!
もう無理…………。上手に誘える可愛い女子になりたい……。プロレス技の才能じゃなくて、モテテクの才能が欲しい!!




