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秘密にしてもらおう

私は慌てて家に帰った。帰って祐兄と雅兄に相談した。

「うえ~ん!」

「は?木本に?何見られたって?何?」

「逆エビ固め。」

祐兄は少し考えて言った。


「なんだ、逆エビか……せっかくロメロスペシャルのやり方教えてやったのに……」

「そこじゃないでしょ!?男の子に見られたんだよ?!しかも木本君!」

「え?見られた?聡にかけたじゃないのか?」

木本君にかけるワケがなかろうが!!

「うぇ~ん!もうお嫁に行けないよ~!」

「良かったな。ミアが嫁に行かないってよ!隆が泣いて喜ぶな。」

「そもそも、それを披露する場がどこにあったかが疑問なんだけど……?」

やっぱり雅兄は冷静で、色々気がつく。


私は木本君の部屋であった事を大まかに説明した。

「中坊の分際でミアを襲うなんざ……ふてえ野郎だ!」

「いや、中坊だからでしょ。下の奴らは俺達の存在知らないし。」

確かに、私の同じ年くらいまではお兄ちゃんのシスコンと私のブラコンは周知されてて、誰も私と付き合おうとはしなかった。ただ単に、モテないだけだけど……。


「でもね、全然見た目は女子なの!本当に!祐兄好みのサラサラショートのボーイッシュな女の子!図的には完全にガールズラブ!」

「いや、だからって襲われるなよ!」

「まあ、とにかく隆に知られなくて良かったな~あいつに知られると面倒な事に…………」


祐兄の後ろにはちょうど通りかかった隆兄がいた。


「何が面倒だって?祐也!お前またミアの報告を怠ったな?」

「いやぁ、だって隆、女と忙しいと思って……。」

「仕事じゃボケぇ~!アケミにはほとんど会えてないんだよ!」

隆兄は祐兄の胸ぐらを掴んだ。


もはや私の事というより、個人的感情で祐兄に喧嘩をふっかけていた。私と雅兄は急いで隆兄を止めた。

「隆兄!違うの!隆兄が心配するような事じゃないから!」

「じゃあ、ちゃんと説明しろ。」

「あのね、あの、私が木本君の従兄弟にプロレス技かけちゃって……」

隆兄は祐兄を離すと、首をかしげた。


「プロレス技?ミアが?」

「祐兄に教えてもらったの。」

隆兄はまた祐兄を掴みかかった。

「お前馬鹿か!ミアに何教えてんだ!教えるなら護身術だろ?」

「いやぁ、まさか実践するとは思わなかったし……。でも、役立っただろ?」


祐兄はそう、ドヤ顔で私の方を見てきたけど…………正直、複雑……。確かに、役立ったね…………私が怖い女だと印象づけるのに、一役買ってくれたよ!!プロレス技かけるとか、どんだけ乱暴な女子だよ~!襲われて、襲い返すって……。


私が詳しい事情を話すと、隆兄はしばらく頭を抱えた後、冷静に言った。

「まず、男と二人きりで部屋に入ったらいけない。」

「どうして…………?」

すると、雅兄がツッコむ。

「いや、襲われてるんだからわかれよ。学習しろ。」


「でも……結局私が襲っちゃったし…………。」

私が悔やんでいると、祐兄が言った。

「うん、じゃあ、こうしよう。ミアは男と寝ると、プロレス技かけちゃう体質なんだ。うん、きっとそうだな。だから、男と寝る状況は絶対にダメだ。」

そっか…………


「わかった。気をつける。」

「それ、後々支障出て来ない?」

「ここは安心を最優先だ。」

雅兄は少し府に落ちなさそうな顔をしていた。


「いや、むしろ逆にミアがうっかりそんな事言いふらしたら……逆にモテるんじゃ……」

「ミア!男に技かけちゃう癖は秘密な!聡にも秘密にしてもらえ!」

「そうだよね……!ハルちゃんに技かけた事謝って、みんなにも秘密にしてもらう。」

明日、バイト帰りに木本家に寄って、ちゃんと話をして来よう……。

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