天使
「きゃ~!ハルちゃん!今日も可愛い~!」
私がハルちゃんにハグすると、ハルちゃんが言った。
「めっちゃぷにぷにしてる!」
ど、毒舌…………!
「あははははは~!そんな所も可愛い~!」
そうやって、ハルちゃんと遊んでいたら、木本君がハルちゃんと私の間に無言で割って入って来た。
どうしたんだろう?木本君も、ハルちゃんと遊びたいのかな?
「ハルちゃんを返して欲しいの?も~しょうがないな~」
「ハルちゃんって…………ハルが男だってわかってる?」
「だってまだ中学生でしょ~?可愛いね~!」
木本君はため息をついて2階へ行ってしまった。
「あれ?なんか私怒らせてちゃった?」
「誰もこんなブス好きにならないのに……。聡、意外と嫉妬深いよな~」
…………ブス…………?面と向かって言われると意外と傷つくな……。
「ハルは顔は美少女なのに、なんでそんなに口が悪いの~?親の顔が見てみたいわ。」
「あんたらの母親の妹だよ。ババアの事しょっちゅう見てんだろ?」
「叔母さん言ってたよ~?ハルは天使のようだったって」
今でも天使じゃない?そう思っていると、ホナちゃんがアルバムを持って来た。
「私達のアルバムにもいるかも!天使だったハル!」
いや、今でも十分天使だから。アルバムを見せてもらうと…………リアルに天使がいた!!今よりもっと天使だ!!天使が二人!!
「ホナちゃんも天使~!」
「それ聡。」
「ええっ!!」
木本君も天使~!!可愛い~!!
「せっかく天使のように育てても、どこの馬の骨ともわからない女の所に行っちゃうんだよね~って言ってた。」
いまどきどこの馬の骨って……。
「結婚は家とするものってよく言ったもんだよ。」
ミナさん、親戚のおばさんみたいな事言ってる……。
「でも、今は親戚づきあいしなくても何とでもなる時代じゃん。やっぱり本人同士の関係じゃない?」
「はぁ?そうゆう意味で家と家との結婚じゃないよ。」
え?どうゆう意味?
「家庭が全部とは言わないけど、人生の半分以上は家にいるんだよ?家はその人のアイデンティティーを作り上げた工房みたいな所。そこだって相手の見えない所の一部って事。」
なるほど……。
「みんな、誰かに育てあげられた作品と結婚するんだから。」
確かに、みんな誰かに育てられた誰かと結婚する……。
「そうゆう意味ではミアは賢いでしょ?もう小姑は制覇してるからね~!」
「肝心の本人制覇は程遠いんですけどね~?」
「程遠い…………。」
まぁ、ずっとこんな風に三人といられるなら、別に木本君とうまくいかなくてもいいかな……。
「じゃあ、ミアちゃん、僕と付き合おうよ!」
さっきの話を聞いて、ハルちゃんが言った。
「無理だよ。一応、木本君と付き合う事になったんだもん。」
「え?えぇえええええ!!」
みんなは総立ちで驚いた。
「絶対、絶対無理かと思ってた。」
「それは、ミアちゃんから告白したのかな?」
「告白……?あれが告白になるなら……そうですね!私からですね!あ、木本君とお付き合いさせていただいてます。」
何だかみんな、喜びに浮き立っていた。
「どう告白したの?教えて教えて!」
「え……聞きたいですか?」
「聞きたいよ~!」
なんか…………そんなに期待されると…………言いづらい……。
「なんて?」
「いぇ、あの、その…………木本君のお姉さんが欲しいので、木本君と結婚したい。……と。」
「は…………?」
みんなは固まった。
「逆に、木本君からも、私の兄をお兄さんにしたいから結婚したいって言われました。まだ高校生なので、まずはお付き合いという形から…………みんな、聞いてます?」
みんなはそれぞれ、アイスを食べたり、漫画を読んだりして、興味なさそうに散っていった。




