アイス屋
く~るぅ~!きっと来るぅ~!木本が来る~~!!もしかして、ダサ子がテレビから出て来るより怖いんじゃない?!
とうとう…………今朝連絡があって、木本家がバイト先にやって来た。
しかも、女の子と。
はぁ?…………誰?とは思っていても、聞けなかった。サラサラショートヘアの、めちゃくちゃ可愛い女の子…………。誰なんだろう?
「持ち帰りってできますか?」
「えっと…………店長!お持ち帰りって可能ですか?」
「基本的にはカップしか無いから手持ちで持ち帰るしかないな~」
そっか……じゃあ、みんなの分は持ち帰れないよね……。
「ごめんなさい。手持ちでしか持ち帰る事しかできないみたいです。」
「そっか。じゃあ、姉さん達の分は自分達で来るように言うよ。」
「ごめんね~。」
そう言って、二人のアイスを作ろうとしたら、ふと、空の段ボールが置いてあるのに気がついて、店長に確認した。
「店長、この段ボールゴミですか?」
「うん。捨てようと思ってたやつだよ。知り合い?いいよ。使っても。」
私は二人にアイスを渡して訊いた。
「この後、すぐ帰るの?」
「そのつもりだけど?」
私は3つのカップに、アイスとスプーンをつけて、段ボールに入れて渡した。
「これ、お姉ちゃん達に。保冷剤とかないから急いで持って帰って!持てそう?」
「あ、じゃあお会計…………」
「私から差し入れ!それより早く!溶けたら勿体無い!」
そう言って木本君と女の子を返した。
「今の…………カッコいい子だったね~!もしかして彼氏?」
「彼氏じゃないです。あ、彼氏です。彼氏になりました。」
「付き合いたてか~!今一番楽しい時だね~いいね~青春だね~。」
そんな甘いものじゃないっすよ~!木本君とどこにロマンスがありました?え?どこに?
しかも…………さっきは知らない女の子と…………何だろうこの気持ち…………モヤモヤする。
「ああっ!モヤモヤする!」
「あれ~?今一緒にいた子にヤキモチかな~?隣に可愛い子連れてたね~!」
「店長止めてください!自分の感情が不安定な時に、的確な答えを言われると、そうだ!って勘違いしちゃいますから。」
ヤキモチ?ないない!そもそも嫉妬とか、私にそんな資格ある?お兄ちゃんが欲しいから付き合ってるだけなのに…………牛丼で例えるなら、私は紅生姜。カレーの福神漬け。全然メインじゃない……。
「あ、いらっしゃいませ~!」
そこへミナさんがやって来た。
「あれ?ミナさん!」
「聡、ハルと来なかった?」
ハル?あの女の子、ハルって言うんだ……。
「さっき、みんなの分のアイス持って帰ってもらいましたよ?」
ミナさん、スーツ姿でいつもと雰囲気が違う。
「なかなか手強いなぁ……。」
「え?」
「ミアを見てると、人生甘くないなって思い知るわ。」
「それ、どーゆー意味ですか!」
ミナさんは書類で扇ぎながら、ベンチに座った。
「いや、この暑いのに、大変だね~!」
確かに、屋外だと暑い。でも、お客さんの笑顔を見てるとやりがいを感じる。まあ、それは建前で、店長がご褒美にスペシャルアイスを作ってご馳走してくれる。おかげで、炎天下で働いていても全然痩せない。
「ナミさん何にします?ご馳走しますよ~?」
「いいの?じゃあ、バニラ!」
「かしこまりました!」
アイスを作っていると、店長がやって来て言った。
「あれがお姉さん?あ、彼氏のお姉さん?キレーだねぇ~」
「店長、ミナさん28歳彼氏ナシですよ。」
「アイス僕が渡して来ようか~?」
店長、ミナさんに一目惚れとか?
バニラアイスを手に、店長はミナさんの所へ行った。




