胸がバクバク
もうすぐ夏休みに入るという頃……
「ミア、もっと近づいて!」
「無理です!これ以上は怖いです!ごめんね……。木本君も怖いよね。お互い……怖いのに……近づくって変……だよねぇ……」
「…………。」
木本君はもっと近づいてきた。その距離は、少しでも身動きしたら触れてしまう距離だ。えぇえええ~!!
「ちょ、ちょっと待って!ギブ!ギブ!!ギブ!!ギブ~!!」
一旦、ソファーに戻ってインターバルを置いた。
し、死ぬ…………。頭が熱くてクラクラする…………胸がバクバク言ってて苦しい…………。何これ?何なのこれ~!!
どうして木本家で、こんな練習をしているのかと言うと…………事の発端は、いつものように木本家でお茶をしていた時の事……
「ミアちゃんの好みってどんな人なの?」
「うーん……。スタンド使い?」
「うわぁ~!漠然を通り越して非現実的!!」
好みのタイプって……兄以外、漫画に出て来るキャラしかよく知らないし……。
「具現化系の念能力の……」
「あーもういいから。好みのタイプはいないのね。」
「あ!ゆるキャラみたいな人がいい~!」
それを聞いたミナさんがたまたまキッチンにいた木本君に言った。
「聡、軽く20キロ増量しようか?」
そうか!木本君が太れば……
「木本君、20キロ太って!」
「いや……無理だよ……。」
アッサリ断られた。
「デブ専か~!」
「デブ専というか、ぽっちゃりしてる男の人なら怖くないかな~って……」
「…………怖い?」
そう、最近気がついた。
「なんか…………この前、日直で一緒になった男子と近づいた時、何だか怖いなって……」
「家にあんなに男いるのに?」
確かに、家に何人もいるのにおかしい……。
「兄は男じゃないです。私の中ではもはやオカマです。」
「身内は平気なのね。」
すると、ナミさんが提案こんな事をしてきた。
「じゃあ、どこまでがダメなのか聡で試してみよう!」
で、現在に至る。んだけど……。
「なんか、ミアの反応が面白くて、何だか僕、楽しくなってきた。」
「楽しまないでよ~!木本君のドS~!」
いやいやいや!木本君だって震えてるじゃん!
「あははははは!」
木本家……めちゃくちゃ笑ってる。珍しい……。そんなに楽しいんだ……。よし、木本君のためにも頑張ろう!
私と木本君はまたギリギリまで近づいた。
「これ、どこまでが勝ちですか?」
「勝ち?」
「いえ、どこまでが正解ですか?」
近い……。
「0距離?じゃあ、ハグまでできたら一旦終わりにしようか?」
「は!ハグぅ~!?」
「いや、ハグくらい挨拶でしょ?」
あ、まぁ、サッカー選手とかゴールしたらよくやってるか!
「じゃ、木本君、私のパスでゴール決めた感じで!」
そう思えば大丈夫…………!
「え?何?それ?」
…………大丈夫?
私と木本君は震えながらハグをした。
うわぁ~!うわぁあ~!心臓破裂しそう!!木本君の心臓の音……凄く早い…………私の音も木本君に伝わりそうで恥ずかしい!!頭の中、心臓の爆音だよ~!
でも…………しばらくすると、落ち着いて来て、何だか…………温かい。木本君の胸、なんだか…………安心する。これって、何だろう?…………幸せ?
「いつまでやってんの?」
ミナさんの声で我にかえって、慌てて木本君を離した。
「あ!ご、ごめん!!怖かったよね?大丈夫?」
ダメだ…………恥ずかしくてマトモに木本君の方、見られない。
「…………。」
木本君は無言で2階へ行ってしまった。なんか…………ごめんね……。
「何凹んでるの?」
「いえ…………なんか、木本君に悪い事しちゃったかなって…………。」
元にいた所、ソファーに座っても落ち着かない……。
「なんか、なんかおかしいんです!木本君に近づくと、胸がバクバクバクバクいうし……」
私の様子に、ホナちゃんが一言突っ込んだ。
「それ、フツー胸がドキドキって言わない?」
そっか…………ドキドキしてるのか!…………ドキドキ!?
「ハグも……挨拶みたいなものだと思って、軽~くハグしただけなのに、少し…………幸せだなぁって思っちゃって…………私だけ…………木本君は苦しいのに、私だけ安心しちゃって…………」
私は頭を抱えた。
「いや、聡も怖くはなかったんじゃないかな~?」
「だって、すぐ2階に行っちゃったし……。」
「それは、その…………。」
なんか、罪悪感で…………へこむ……。




