胃腸炎
その後、私は急性胃腸炎にかかった。
具合が悪くて、家に帰ると、急に嘔吐した。何度も何度も……。ちょうどその日は、隆兄が彼女と温泉に行っていなかった。誰もいないトイレで…………1人、泣きながら吐いた。
一晩嘔吐が続いて、次の日の朝、お母さんは学校に連絡してくれた後、仕事へ行った。雅兄もこれ以上休めない講義があって、大学へ行った。病院へは、暇な祐兄が連れて行ってくれた。意外にも、病院では祐兄はうろたえていた。それは…………
「妹は…………に、にん……妊娠なんて事は…………」
「無いですね。」
即答されてるし。それ、絶対にないし!!
「感染性かストレス性かはわかりませんが、胃腸炎ですね~。薬飲む時も、なるべく少しずつ水分をとって休ませてあげてください。」
そう言われて帰って来た。
「良かった~!妊娠じゃなくて本当良かった~!」
うるさい黙れ!全然良くないから!こっちはめちゃくちゃ気持ち悪いっつの!突っ込む元気もないのに……。
家に帰って布団に寝たけど…………気持ち悪い。
「やっぱり点滴してもらえば良かったか?」
「いい……注射やだもん……。」
「でも、脱水症状で死ぬ事はないし……。隆だったら……あ、隆に」
祐兄はスマホを取り出していた。
「待った!!ダメ!!隆兄には知らせちゃダメ!!」
「いや、後で俺がボコられるし……」
「隆兄、今プロポーズ旅行だよ!?私がそうしろって勧めたんだから!!」
急に起きたら余計気持ち悪い……。胃腸炎……ツラぁ……。
そこへ、雅兄が帰って来た。
「下に聡来てたけど?あがって行けって言ったんだけど、そのまま帰った。」
木本君…………来てくれたんだ。
「どうだった?やっぱり…………」
「妊娠してなかった!ミア、胃腸炎なんだってよ。つわりかと思ってマジビビった!」
「だからありえないって!堂々とお医者さんに訊かないでよ!恥ずかしい!」
猛烈な吐き気と腹痛……辛いけど、あんまり色々深く考えなくて済んだ。
「暇だろ~?本持って来た。」
「え……雅兄の本?エロ本?」
「バーカ!隆兄の部屋から持って来た!だからエロくないはず。」
いや、多少否定しよう?自分の部屋にも、エロ本意外の本あるわ!くらい言おう?
本のタイトルが…………『女の子の育て方』育児本?!『自分の子が不登校になったら』誰が不登校?隆兄、私学校行ってるけど…………。ちょっとズレてるけど……こうやって、勉強して、パパの代わりに、隆兄は私の事を育ててくれたんだ……。
やっぱり…………隆兄がいないと寂しい。
でも、結婚しろって言ったのは私だ……。旅行に行ってプロポーズしてこいって行かせたのは私だ。




