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怖い

次の日、愛理にその話をしたら、愛理はその子の事を噂に聞いた事があるらしい。


「あ~!確かその子、その後引きこもりだって。可哀想に……。」

木本君はまるで、インディージョーンズのクリスタルスカルのような存在になっていた。


「木本と付き合うって生半可な覚悟じゃダメって事だよね……。」

「木本とじゃなくてもダメじゃない?」

愛理が意外な事を言い出した。

「は……?」

「人を好きになるって、その人の事をもっと知りたい!もっと側にいたい!そう思う訳でしょ?」

私は好きになった事がないからわからないけど……そうゆうものなんだ……。

「別の人間同士なんだから、相手を受け入れる覚悟も無くて、付き合うべきじゃないんじゃない?」

え?えぇええええ!!だって、だって…………


「最初…………愛理が言ったんじゃん!付き合ってみたら好きになるかもって!」

「そうだよ?でも、ならなかった。ミアはゆるたかデパートで1つ見つけた事があるでしょ?」


そう…………ゆたか君と付き合ってみて1つ、確実な事がわかった。それは……


ゆるたかデパートには、私が望む物は何も無い。私はゆたか君を求めてない。


ちゃんと謝って、今度こそちゃんとお別れしよう。


私はゆたか君を探して学校の裏側まで来た。そこで、ゆたか君は誰かと電話をしていた。

「別に?ミアが本当に好きな訳ないだろ?え?何でって?」

え……?今、何て?

「木本が好きだからだよ。」

木本君が……好き?誰を?

「あの王子様が好きなお姫様だからだよ。木本の女って事に意味があるんだよ。」

嘘だ…………木本君は私の事なんか何とも思ってない。ゆたか君、どうしてそんな勘違いしてるの?


でも、どっちにしても、結局ゆたか君は私の事は好きじゃない。やっぱり…………1人相撲だったんだ……。ゆたか君とは、少し、わかり合えた気がしてた。


それなのに、こっちが求めていないのと同時に、むこうからも求められてはいない。それがわかった。


…………もう、別に負けでいい。負けでいいから、ちゃんと別れよう。このままじゃ、前を向けない。隆兄にも顔向けできない。


「ゆたか君、ちょっといいかな?」

「ミア?……またかけ直す。」

ゆたか君は私に気がつくと、慌てて電話を切った。


「ミア……もしかして……さっきの聞いてた?」

「うん……。ごめんね。聞こえちゃった。」

「違うんだ!ちゃんと説明させて」

嫌。…………もう…………何も聞きたくない。

「もういいよ。もう別れようよ。もう、私を見てもらえない人とは付き合えない。」

「何言ってんだよミア!そんなに木本がいいかよ?」

ゆたか君はそう言うと、私の腕を強く掴んだ。


「違う!違うよ!…………痛い!離して!」

「どっちが見てないんだよ!中学の時、手当たり次第に誉めてその気にさせて、人の事バカにして……!俺の何を見てた!?え?言ってみろよ!」

わかんない!そんなの覚えてない!

「…………覚えてない!」

ゆたか君は私の頬を叩いた。バシン!と大きな音がした。

「痛っ……!」

ゆたか君はやってしまったという顔をした。


「…………覚えてない。覚えてないけど…………昔のゆたか君の事、全然覚えてないけど…………今よりは好きだった!ゆたか君は優しかった!誰かにいじられてもバカにされても、絶対……人の事を悪く言わなかった。決して人を傷つけるような人じゃなかった!それしか……覚えてないよ……!」

「…………。」

私はゆたか君の手を振りほどいて、その場から走って逃げた。


怖い…………怖かった…………!誰か……誰か助けて!!


こんな時、ふと思い付いたのは…………木本君…………のお姉さんだった。


私はこの前の事があって、インターホンが押せず、また、木本家の前にただ……立っていた。

「ミアちゃん?」

窓から私を見つけてホナちゃんが声をかけてくれた。

「どうしたの?その顔……。」


え?顔……?痛いと思っていたら、叩かれた頬が腫れていた。

「あ~口の所も切れてる。救急箱持ってくるね!」

ホナちゃんに手当てをしてもらったら…………涙が出た。

「あ……ありがとう。こんな顔じゃ帰れなかった……。ありがとぉ……。」

そのまま、泣きつかれてソファーでうとうとしていると、玄関の方で声が聞こえた。


「聡!遅い!何やってたの?」

「運動部の助っ人頼まれて……ミア、来てるの?」

「来てるよ!顔腫らして、誰かに殴られたんだよ!……今泣き疲れて…………」

木本君が慌ててリビングに入って来た。そして、私の顔を見て、悲しそうな顔をして言った。

「ミア……大丈夫?」


木本君がそっと頬に、その手を触れようとした。近い…………。その時、ゆたか君の言葉を思い出した。

『木本が好きだからだよ。』


怖い…………!!私は思わず、手を顔の前に出して防御してしまった。私の、その腕に…………木本君の手が、かかりそうになった瞬間…………私はソファーから立ち上がって、逃げるように木本家を出た。


怖い…………怖い!!怖いよ…………。ゆたか君も怖いけど…………木本君に近づかれるのも怖い……。


叩かれただけで、こんなに痛い。こんなに怖い…………命なんか……懸けられる訳ないよ!


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