人生甘くない
木本家の前に行くと、何人かの女子が家の前にいた。
ミナさんは家の前に来ていた女子に言った。
「節度ある女子の基本、守りなさいよね!イカのおすし。(家に)行かない、(車に)乗せない、押さない、好きにならない、静かにする!」
あぁ、やっぱりこれ、ミナさんのイカのおすしか。私、人づてに聞いてこれ覚えてたんだ。これだけ覚えてるなんて可笑しい。
木本君のおかげ?で、ゆたか君と私は、腹を割って話ができた。
ラスボス倒しちゃったけど、スキルも経験値もない私達は、1からストーリーをやり直す事になった。その事を話したくて、お礼も兼ねて木本家にやってきた。
「木本君のおかげで、ゆたか君とちゃんと、彼氏と彼女になれたんです!」
「あーそう。そうなの……。」
「聡のやつ何やってんだか……。」
「で、お兄さんに彼女がいる事がわかって、お姉さんできそうなのに、何故ここに?」
この前判明した隆兄の彼女についても報告に来た。
「まだ祐也と雅也が残ってます!それに、それとこれとは別です!」
「あのさ、別じゃないと思うよ?ミアちゃん、私達は妹みたいに思ってるし、別にここに遊びに来るのは大歓迎なんだけど…………はっきり言わせてもらうけど、聡と結婚するって言っておいて、別の人と上手く行きました。って話、気持ちがいいと思う?」
…………あ、それもそっか……。
「…………ごめんなさい。」
「まぁ、別れたら負けって言ったのはこっちだし……こっちも矛盾してるのはわかってるんだけど……。聡のおかげで、上手くいった……とか言われると思ってなかったから…………」
確かに…………それは大きな矛盾だ。木本君を弄んでるように聞こえる。いや、実際そうだ……。
私、木本君に結婚してとか言っておいて、何やってるんだろう……。私、ここに来る資格ないんだ…………。
「私は別にいいと思う。ミアちゃんが誰と付き合おうと、ミアちゃんが幸せなら。」
「ホナちゃん……。」
「だって…………聡と付き合って苦しむより、その方がよっぽどマシじゃない?」
聡と付き合って苦しむって?
木本家の皆さんから話を聞くと、どうやら木本君を刺しそうになったのは……元カノらしい。
「もう、熱烈な子がいてさ~!聡が根負けして付き合ってもいいって言ったら、その子、いじめの対象になっちゃって…………」
そりゃそうだ。話しかけた私でさえトイレに呼ばれる始末だ。付き合ったらどうなるか……。想像つかないし…………想像したくもない。
「どうして木本君、突然髪切ったんだろう?」
「…………。」
「あははははは!どうしてかな~?…………人生甘くないって事だよね……。」
そうだね…………人生は甘くない。木本君の彼女は命懸け。
ただお互い好きなだけなのに…………木本君も……その元彼女も可哀想……。




