別れたら負け?
結局、家に帰れない私は……木本家の家の前でうろうろしていた。完全に変質者だ。
「どうしたの?入らないの?」
そこにちょうどミナさんが帰って来て、こう言ってくれた。
「お帰り。」
「ミナさん!」
私はミナさんに抱きついた。
ミナさんとお家中に入ると、ナミさんがお茶を入れてくれて、ホナちゃんがお菓子を出してくれた。私はお茶を眺めながら、思わずため息をついた。
「お、どうした?ホームシック?」
「違うんです。……ここが、夢の国すぎて全然帰りたいと思わないんです!家には鉄仮面いるし!」
隆兄が怖くて帰れない。
「鉄仮面ってあのセコムのこと?」
「セコム?」
「こら!ナミちゃん!」
いっその事ここの子になりたい。
「ミナさん、うちの兄と結婚してください!」
「山下君とはちょっと無理かなぁ……。」
あっさり拒否!!でも、このまま簡単に引き下がれない!
「隆兄が駄目なら祐也と雅也もいます!誰でもいいんです!」
「そんな…………数打ちゃ当たる的な……。」
「ミナさんが駄目ならナミさん!ホナちゃんは年齢的にまだ先だから無理だし……」
祐兄と雅兄は自立してないから結婚は無理かな……じゃ、隆兄とナミさんなら…………
「それって、本当の姉妹になりたいって事だよね?じゃあ、ミアちゃんが聡と結婚すれば済む事じゃない?」
え…………?あ!そっか……!その手があったか!!
「ちょっとナミ!」
「わかりました!じゃあ私、木本君と結婚します!!」
「…………あぁ……うん。」
みんな、微妙な反応をしていた。
「でも…………聡自身は無理でしょ?女と付き合うなんて。」
そういえば、木本君昔はあんな感じじゃなかったような……
「木本君、何があってああなったんですか?昔はリアルに王子様みたいでしたよね?」
木本君は絵に描いたような王子様だった。
「聡はね、私達の英才教育の賜物で、本当に王子様みたいに成長した。だけど…………」
お姉さん達仕込みの王子様だったんだ……。
「殺されかかったの。知らない女に刺されそうになったの。」
ひぃいいいいいい!!普通に事件!殺人未遂!!
「それは…………王子様辞めたくなりますね……。人を避けるのも納得です。」
王子様…………今はゆたか君が王子様だけど…………
私は今日あった事を二人に話した。
「はぁ?何それ?」
「それってさ、女として見てないって事だよね?」
「別れます!すぐに別れます!」
予想外な事に、三人の意見は真逆だった。
「いや、それは別れたら負けだ!女として負けだよ!」
別れたら、負け…………?
「そうね。ここは、その黒王子を落として、振る方がいい。」
木本家で、女のプライドに…………火がついた。
やっぱりお姉さんはいいな……。愛理のデート中にこんな事で水指したくないし、うちでこの話をしたら、別れろ。ぶん殴る。で終わりそうだし……。




