理想の相手
「ねぇ、愛理、別れ話ってどう切り出せばいいの?」
「何?もうゆるたかと別れるの?え…………マジ?」
愛理には応援してもらったけど……
「ゆるたかデパート、何が駄目だったの?清掃が行き届いてない?それとも接客が悪い?」
「うんん。入っていきなり迷子になって、素敵な物を見る前に、いきなりバックヤード見ちゃった感じ。」
「ああ…………そうなんだ……。」
付き合うって難しい……。自分1人じゃ成立しないのに、1人相撲でモヤモヤしてるようじゃダメだってわかってる。だけど相手があれじゃ……。
そもそも、どんな相手ならいいんだろう?
「ねぇ、理想の相手ってどんな?」
愛理はこう答えた。
「う~ん。何だろ?間が合うとか?あ、私は匂いかな?」
愛理は直感って事なのかな?
私は色々な人に聞いてみた。
ママはこう言っていた。
「とりあえず、働いてる人?ヒモは絶対駄目よ。」
ママ、周りはみんな学生だから。…………やっぱりママは現実的。でも現実を見て。祐兄は働いてないよ……?
祐兄と雅兄は……
「え?誰の?ミアの相手なら、最強の男だな!魔王が駄目ならK-1選手!」
祐兄が付き合いなよ。
「やっぱりミュージシャンかな~?一緒にセッションしたりしてさ~!絶対楽しいよ!」
それ、雅兄の遊び相手だよね?
木本君のお母さんにも訊いた。
「子供の理想の相手?うーん、35くらいまでにもらい手が見つかれば誰でもいいかな?無職でも、女が働けばいいし。」
凄いなぁ……潔い良いなぁ。働く美魔女は強いな……。
美波さんは、
「恋人にするなら顔面偏差値の高い人、結婚するなら収入の高い人。どっちもならなお良し!そんな人いないけどね~まぁ、どっちもほどほどで妥協かな~?」
確かにそうかも。わりと普通な意見で安心した。
菜々美さんは?
「まぁ、リアルな男は嫌だけど……強いて言うなら、趣味を理解してくれる人?」
まぁ、ヤオイお姉様はそこが重要だよね。
帆那美ちゃんにも聞いてみた。
「う~ん。私、別にお見合いとかでいいと思うんだよね?利にかなってるし。まぁ、あのお姉ちゃん達に耐えられる人なら合格。ミアちゃんは合格だよ。」
いや、私女だから。それより、お見合いって夢無さすぎるでしょ!?運命の相手!王子様とラブロマ夢見ようよ!若者よ!
1人だけ…………そんな話が聞けない人がいる。それは……隆兄。隆兄はヤバイ……。祐兄と雅兄がシスコンなら、隆兄は…………重度のシスコンだ。昔、木本君が王子様みたいだって話した時には…………
「結婚相手は俺が決める。いや、ミアは嫁にやらない。誰にもやらない。」
と、真顔で言ってて怖かった。顔が怖い!本当に怖いんだよ!でも…………家族で誰よりも優しい。
そんな事を考えて、帰ろうと支度をしていたら……鞄についていたもふもふウサギのキーホルダーがなくなっている事に気がついた。朝、裏門の柵を越えた時に落としたのかな?帰りに、裏門の所に探しに寄った。
私が木の影を探していると、誰かの話声が聞こえた。
「駄目だよ、ゆーたん。誰かに見られたどうするの?」
ゆーたん?
「こんな所に誰もいないよ。」
おいおい。こんな所でいちゃつくなよ。
「いいの?彼女いるんでしょ?あの、変な名前の子。」
「ああ、ミア?」
え…………?この学校で、自分と同じ名前の人はいない。
「ミアはいいんだよ。カムフラージュ。」
「カムフラージュ?何それ?」
「王子様には、黙って隣で笑っていられるお姫様が必要だろ?」
お姫様…………?誰が?
「ミアが彼女って事にしとけば、みんなの嫉妬はミアに向く。そうすれば、僕はみんなと仲良くできるでしょ?」
そうゆう事か…………そりゃそうだ。好きとか…………言われる訳がない。




