木本家
って明日休みじゃん!!
『さっきはごめんなさい。』
車の中でメッセージを送ったら、既読スルーされた。気持ち的には一刻も早く直接謝りたいんだけど…………
「あの、木本って木本菜々美の弟かな~?」
「え?雅兄、木本君のお姉さん知ってるの?」
「確か……小、中って同じ学校だった気がする~!」
そうだったんだ……。
「お前それ、好きな奴バラしたらキレられたって言ってた女子?」
「好きな人バラしたぁ!?」
やっぱり…………明日直接謝りに行こう。
次の日、愛理に相談したら、すぐに住所を教えてくれた。木本君の家は学校とは逆方向の、割りと近い所にあった。どうやら、同学年では有名らしい。家が有名って何?お金持ち?
教えてもらった住所は…………ごく普通の一軒家だった。何故に有名?
「いいなぁ~!一軒家~!犬が飼える~!」
「飼えるけど飼ってないから!」
インターホンを押す前に、中学生の女の子が窓を開けて言った。
「聡の追っかけ?まだいるの?多分いても出ないよ?」
木本君の妹さん……なのかな?
「山下です!山下が謝りに来た。とお伝え下さい!」
私がそう言うと、窓がビシャリ!と音を立てて閉まった。すると、
「きぃえぇぇぇ~!!」
奇声が聞こえた。そして、家の中が何だか騒がしくなった気がした。
「ナミさん落ち着いて!」
ナミさん落ち着いて?
「ミナさん、何?その格好は?」
「ホナ、ちゃんと服着て!」
そういえば、さっきの子下着姿だったような……。
しばらく待つと、木本君が玄関のドアを開けて出て来た。
木本君は辺りを見回すと、私を中に引っ張り入れた。何?何かに狙われてるの?マジ忍者か?
「あの…………木本君…………」
私が謝ろうとした時、廊下の向こうから、剣道の防具をつけた人がやって来た。
そっちに気をとられて、謝るタイミングを逃した。
「聡に何かご用ですか?」
「えと…………あの、初めまして。木本君のクラスメイトの山下心愛です。昨日、木本君に失礼な事を言ってしまったので、謝りに来ました。」
防具をつけてると…………男だか女だかわからない。多分……お姉さん?妹はさっき窓から見たし。
「聡、菜々美に女の方だから大丈夫だって伝えてあげて。」
「うん……。」
そう言って木本君は廊下から2階にあがって行った。女の方って?何か警戒されてる?忍者一家?
「さて、あなたはこっち。」
防具の姿のお姉さんに案内されて、リビングに入るとそこは、可愛い家具と、触ったら気持ちの良さそうなクッションのある素敵なリビングだった。
置いてある小物も可愛い!うちのシンプルな家具に、ボールとかダンベルとかあるリビングとは違う!!
「どうしたの?好きな所に座って。」
「あの…………これ、つまらない物なんですが…………木本君にお礼とお詫びを……。」
私は防具を外しているお姉さんにお菓子を手渡した。
「お礼?」
お姉さんはお菓子を受けとるとテーブルに置いて、袴姿のままお茶を入れていた。
私は、お姉さんに訳を話した。
「なるほどね~!お土産のメンチカツサンドがないってそうゆう事……。」
やっぱりお姉さんへのお土産だったんだ!
「ごめんなさい!お土産とは知らず、いただいてしまって、すみません!」
「まぁ、そうゆう事なら仕方ないよね。それより、彼氏持ちの女がこの家に来たのは初めてだわ……。」
「は?」
彼氏…………?あれは彼氏というのかな?
私は、ゆたか君にお弁当を捨てられた時の光景を思い出した。そっか……あれ、私の彼氏か……。彼氏なんだよね。そう思うと…………涙が出て来た。




