新年度
春休みはあっという間に終わり……新学期が始まった。
私は玄関のクラス分けの掲示板を見ていた。
聡と愛理とは別のクラスになってしまった。田中と吉岡さんとはまた同じクラスだった。田中に声をかけられた。
「山下~!今年はリング作ろうな~!」
「作ってどーすんだよ!」
いつの間にか吉岡さんもいた。
「リングあったら…………技、かけ放題だね。」
吉岡さん、かけ放題って!携帯プランじゃないんだから!!
そこに愛理も来た。
「ミア~!私あんまり知り合いいないクラスだよ~!あ、木本がいるか!あれ?木本は?」
「愛理~!聡は新歓の手伝い。」
いつも聡が手伝っている運動部の、新入生の勧誘を手伝うみたい。この季節はどこも部員確保に大変そうだ。
「じゃ頑張って友達作らなきゃね!私も、頑張って彼氏作る!」
「デジャブ…………?去年の今頃もそう言ってたよね?」
そういえば…………去年の今頃は、片方の靴下を見つけるみたいな、幸せな恋がしたいと思っていた。それなのに………
「じゃあ、新学年、新学期って事で、みんなでミアのおまじないやっとく?」
「え?何それ?」
「田中覚えてないの?遠足の時の!」
まぁ、田中が覚えてないのも無理はないか。私も忘れてた。
「あー!あれか!」
「あれって?」
私は吉岡さんに説明した。
「私の小さい頃からのおまじないなの。スタートの時は姿勢を正して両足を揃えると、上手くいくってやつ。」
「じゃあ、みんな1列に並ぶ?1列はスペース的に無理か。」
みんなでそこへ聡が小走りでやってきた。
「みんな!僕抜きでやろうとするなんて酷いよ!」
「あ、聡…………!ごめん忘れてた。」
「酷いよ~!」
ホナちゃんとハルちゃんも一緒だった。
「ミア~!会いたかった~!」
あぁっ!天使!!
私にハルちゃんが抱きつこうとすると、私の目の前に吉岡さんが大の字になって立ち塞がった。
「くそっ!ガードされたか……。」
「ミアちゃ~ん!ハルと同じクラスだった~!最悪~!」
ホナちゃんそんなにテンション下がる?気持ちわかるけど!
「じゃ、やろっか。姿勢を正して、両足揃えて。」
みんなが姿勢を正して両足を揃えて立つ。
「今年も学校生活が上手く行きますように。」
「よし、スタート!」
こうして、新年度が始まった。
今年は…………そう思って聡の方を見た自分がいた。
愛理に諦められるのか訊かれて、あれから少し考えたけど……ダメだった。全然わからない。全然考えがまとまらない。今でも聡が近くにいるのが当たり前で…………
だったら離れよう。今年はクラスも別々で関わる事もない。自然に消滅して行こう。




