冗談
「あ!ごめん!勝手に触って。」
「…………ん?ありがとう!木本君、結構世話好きなんだね。お兄ちゃんみたいだわ!」
びっくりしたけど……変な空気になるよりマシ!誤魔化そう。
「お兄さん……山下さんのお兄さん、随分過保護なんだね。」
「ああ、私がついて行かないか心配だからね。」
「え…………?」
離婚が成立してから余計過保護になった。
「いや~!私的には冗談だったんだけどね?親が離婚した時に、お父さんが1人じゃ可哀想だから、私が働いてお父さん養うって言ったら、お兄ちゃん達が猛反対して、私がお父さんに連れて行かれるかもって心配しちゃって……」
「…………。」
私の話を聞いて、木本君は黙ってしまった。
「あ、いや、だから冗談だって!お父さんが遠足まで来るわけないし!」
「そうゆう話は冗談にならない。冗談にするのはよくないよ。」
「え……ごめん……。なんか、別に私は気にしてなかったから、つい……。」
何で?何でそんな空気になるの?私、何か悪い事した?
「気にしてない?気にしてるから忍法とか言って、都合のいい方法探して逃げようとしてるんじゃないの?」
「別に……それとこれとは関係ないよ!……木本君こそ、人と関わりたくないクセに何で助けてくれるの?人と関わらずにいるなんて無理だよね?木本君の方が……忍法使って逃げてるだけじゃん!」
「…………。」
こんな事……言うはずじゃなかったのに……何なの?悪いのは私?
「ごちそうさま。先戻る。」
私は木本君を置いて1人で山を降りた。
途中の売店で休憩した。休憩していると、売店の裏側でゆたか君の姿をみかけた。まだ帰ってなかったんだ。
私がゆたか君に話かけようとした瞬間、その光景は…………見たくない光景を見てしまった。
ゆたか君は…………お弁当をごみ箱に捨てていた。
「何人分食わすつもりだよ!昔みたいに太ったらどうするんだよ!そうやって……またバカにするんだろ?」
それ…………私のお弁当…………。
ゆたか君は、私のお弁当まで捨てていた。
ああ、だから売店が売り切れだったんだ……。みんな、ゆたか君にお弁当渡して、自分の分は売店で買ったから…………。最悪…………木本君と喧嘩して……ゆたか君の闇を見て……何だか最悪の遠足だ……。
下山すると、先生に報告して、私はお兄ちゃんが借りてきたおじいちゃんの車で帰った。
「ミア~!今日の遠足は楽しかったな~!」
「…………。」
楽しい訳がないだろ……?
「ミア、先に降りて来ちゃってごめんな~」
「…………。」
いいよ。結局、木本君にパンもらえたし…………あ、お礼…………何かしよう。木本君には……言い過ぎた。かも…………。
「あー!名物のメンチカツサンド買うの忘れてた!」
「雅也、帰りに買おうと思ったら売り切れだったんだよな~普通売り切れるか?」
え…………?
「祐兄!その名物ってキャベツたっぷりメンチカツサンド?」
「そうだけど……。」
あれは…………もしかして、残り物なんかじゃなかった……?せっかく買った物を……木本君は、私にくれた……?
「買えなかったって言ったら隆也に怒られるな~」
だとしたら私は最低……いや、どっちにしろ最低だ。木本君にあんな事言っちゃった。せっかく助けてくれたのに…………。
「え……ミア?泣いてんのか?ご、ごめん。そんなにメンチカツサンド食べたかったか?」
「雅也のせいだからな!女とばっかり話してて……」
「いや、それ絶対違うでしょ。」
ごめんね……ごめんなさい。明日…………ちゃんと謝ろう。




