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スタート

スタートの前は、必ず両足を揃えて立つ。


それは、私が片足立ちがクセだったから。私の片足立ちに、お母さんは毎日口癖のように言った。


『スタートは必ず、両足で立ちなさい!姿勢を正して、両足揃えて!』


私は両足を揃えて、この春から高校生活をスタートした。


シャボン玉に映る世界は…………綺麗だなぁ……。キラキラしてる。春の陽気に、新しい出会いへのワクワク感、シャボン玉の中に映り込んでいる教室は、キラキラしていた。


「あ~!彼氏欲しいよ~!」

私は休み時間に、窓際の席からシャボン玉を飛ばして、思わずそう呟いていた。

「あーもう、それ中学から聞き続けて聞き飽きたわ!いい加減早く彼氏作れ!」

「うん!作る!って、それでできたら苦労しないよ!」

「高校生になったんだからさ、気になる人の一人や二人……」

中学からの友達、愛理が、私からシャボン液を取り上げて言った。

「ミア、休み時間にしゃぼん玉吹いてたら絶対彼氏できない。

「えー返してよ、愛理~!」

「じゃ、一緒にしゃぼん玉やりませんか?って話かけて来な。」

そんな!なんて無茶振り!

「いや、無理っす。」

「そうだな……あの、一番地味な男子。行け!」

いや、無理って言ったじゃん……。


ドSの愛理様からは……どうしても許しが降りなかった。ずっとシャボン玉液を返してくれず、首を横に振っていたから…………私は仕方なく、話しかけに行った。


一番前の一番窓際の席、私の前の席の…………地味で暗い男子。髪は長くていつもボサボサで、眼鏡をかけて、いかにも漫画やアニメが好きそうな感じだった。

「あ、あの……私……山下心愛です。一緒に……しゃ……しゃ……」

「…………しゃ?」


シャボン玉やりませんか?なんて言えない。絶対断られるし。

「しゃ……しゃ~しゃ~しゃ~…………」

ヤバい……私、人前でしゃーしゃー言ってる変態になってる!

「山下さんどうしたの?」

その声…………聞き覚えがあるような…………ボサボサの長い髪の間からちゃんと顔を見ると、知り合いだった。小学校からの知り合い。

「?…………木本君?全然気がつかなかったよ!何で?なんで気配消してるの?忍者?」

「いや……その……。」

木本君は何だか迷惑そうな顔をしていた。話しかけられたくないというか……


「ごめん、迷惑だったよね。話しかけごめんね。」

木本君は小学生の時にスポーツ万能で、女子にモテていた。中学の時にはその人気は爆発して、いつも女子に追われていた。木本君の姿を見て思った。きっと、高校では追われたくないんだ。こうゆう高校デビューもあるんだ……。

「いや、迷惑というか……」

「そっか、わかった。モテ防止だね。じゃあ静かにしとくね。」

私は人差し指を口につけて言った。


「ミア~!どうだった?」

「玉砕~!断られた~!」

そっとしとこう。木本君が女子に迷惑そうな姿を、中学の時に何度も見かけた。モテるのに勿体無い気もするけど…………木本君の静かな生活をぶち壊す権利は…………当然だけど、私にはないと思う。


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