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 -12『瞬間超電磁魔法というらしいです』

 ボクの力は、解放してしまえば無差別に他人を巻き込む。

 魔獣だけでなく、足元に倒れる獣人たち、それにすぐ近くにいるリリオまで巻き込んでしまうかもしれない。


 ボクの力はとても強い。

 けれど同時に、非常に不便なものだった。


 そのままだと無差別無遠慮に所構わず影響を与えてしまう。


 かといってエイミによって力を抑えれば、ボクはただのひ弱な子供になってしまう。魔法すら使えない。


 こんな人の多い町中ではとても使いづらいのだ。


 それに魔獣とリリオの距離が近すぎるのも問題だ。

 怒った魔獣が衝動的に目の前の彼女に襲いかかりかねない。


 どうにかして彼女を離さないと。


 そう思っていた矢先に、その謎の声は訪れたのだった。


「俺はアイを知った男。アイ、哀しみの哀。情熱は裏切られ、永遠の誓いとはひどく儚いものだと学んだ男。そう、俺こそは――ユークラストバルト様、だ・ぜ!」


 きらりと白い歯を輝かせ、その男は格好つけて気取った風にそう言った。


 エイミから思わず呆れた溜め息が漏れる。


 宿屋で出会った恋人の片割れである。

 だが今回は男だけのようだ。あれだけラブラブだった彼女の姿はない。


 彼は突然現れたかと思いきや、急にエイミの前に出て膝をつきはじめた。そしてどこからか一輪の花を取り出すと、そっとエイミに掲げる。


「哀。そう、それは罪悪感。貴女という最高の女性を前にしておきながら、あんな尻軽女に入れ込んでいた俺を罰して、心が病んだのさ。ああ、俺はなんと愚かだったのか。罪深きこの俺をどうか、許して欲しい」


「なんなの、貴方」

「俺様は気付いたのだ。真実の愛というものに。貴女に心を気付けられ、びりりと電撃が走ったかのような夢心地を抱いたのだ」


 この男はいったい何を言っているのか。


「俺が真に愛を雪ぐべき女性はここにいた。俺様を律し、正しく導く女性。そう、貴女だ!」


 突然の告白。


 目を輝かせ、周囲の視線すら気にせず、ユークラストバルトという男は言う。


 エイミはあからさまに怪訝な顔を浮かべていた。


 あきらかに今はそれどころではない。


 彼の真後ろでは、今まさに、魔獣がリリオへ襲いかかろうとしているのだ。


「ちょっと、どきなさい」


 そう言うエイミに、しかしユークラストバルトという男は毅然に首を振る。


「いいや、ここは俺が行く。乙女に傷一つなどつけさせれば、愛を知るこのユークラストバルト様の名折れだぜ。見ていてくれお嬢さん。俺の勇姿を」


 そう言って身体を大袈裟に翻すと、不敵に笑んみを浮かべ、なにやら呪文を口ずさみ始める。


 そして、


「我が一族に伝わる伝説の奥義を見せてやるぜ。出でよ、いま必殺の、瞬間超電磁魔法ぉぉぉぉ!」


 そうユークラストバルトが叫んだ瞬間、腰を僅かに落とした彼が両手を胸の前に伸ばして組む。そして人差し指を伸ばすと、その先端からまるで閃光のような眩しい光が放たれた。


 それは筒状になり、魔獣へと一直線へ飛んでいく。


 攻撃魔法。

 おそらく中位以上のものだ。


 魔法を使うにはそれなりの素質が必要とされる。

 中位魔法となれば、それだけでごく限られた存在となる。


 まさかこのちゃらい男がその一人だとは。少し見直してしまいそうだ。


 ――格好はまるで浣腸のポーズみたいで格好悪いけど。


 真横に飛んだ雷のようなその魔法は魔獣の横腹に直撃する。


 穿つような鋭い当たりだったが、魔獣の体毛を焦がす程度にしかダメージは与えられていなかった。だが魔獣の注意は完全に彼へと向けられている。


「ぐああああああああっ!」


 相当に怒っているようだ。目の前のリリオからはすっかり意識を逸らし、少し離れたユークラストバルトへと駆け出す。


「うわああああ!」


 凄みのある形相で迫ってくる魔獣を前に、ユークラストバルトが素っ頓狂に悲鳴を上げる。


「何故俺様の魔法をくらっても死なないのだああああ!」


 驚愕した顔で全力疾走して逃げるユークラストバルト。


 余程自信満々に魔法を撃ったくせにみっともない。けれどボクたちからすれば好都合だった。


「いいわね。その調子で町の外まで逃げ続けなさい」

「は、はぃ……」


 リリオから離れさすことができ、魔獣の注意まで引けている。


 ボクの力の影響も町の外まで連れて行けば被害が少なくなるだろう。


 ユークラストバルトは涙と鼻水をたらしながらなかなかの逃げ足を見せている。


 そのまま悲鳴を上げつつ走り去っていく彼と魔獣を追って、ボクたちも大急ぎで移動した。


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