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5 事件発生

「逃げてきたじゃと!?」


長老は目を丸くして驚いた。

エルムの背後では、デイビスの顔が真っ青になっている。

そして3人の女冒険者は、素知らぬ顔。


「ええ、ちょっと理由がありまして」


エルムは説明を始めた。


「北の祠に住み着いているスケルトンですが、3体とも武器を持っていますよね」


エルムは長老の反応を見ながら話をする。

否定する様子はないため、どうやら長老の認識でも3体で間違いないようだ。


「実はその武器が人間が作ったものに思えたんです」


「なぬ!?人間が作ったものじゃと!」


長老は本心から驚いているようだった。

つまり、スケルトンが人間の作った武器を装備していることは知らないようだ。


エルムは、今の反応を見て、これ以上の観察は無意味と判断した。

そこで、デイビスの体面を保つための適当な理由を作り、続きを一気に話した。


「そうなんです。それで、もしかしたら無傷で取り返した方がいいものなんじゃないかって、デイビスが気付いたんです。だったら一度、長老様に確認した方がいいだろうということで、何もせずに一旦逃げてきたんです」


デイビスはその言葉を聞き、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに安堵の表情へと変わった。

3人の女冒険者は、相変わらずどうでもいいような顔をしている。


「う〜む、そうか…。魔獣たちが人間の作った武器を…か」


長老は何やら考え込む素振りを見せた。

その様子を見て、エルムは質問をした。


「長老様、何か心当たりでもあるのですか?」


「ん?おお、まあ心当たりというほどでもないのじゃが…」


長老の返事は歯切れが悪い。

仕方なく、エルムは別方向から話を聞くことにした。



「そういえば、祠にアンデッドが現れたことに心当たりはないんですか?」


「おお、よくぞ聞いてくれた。実は一つあってな」


「おいっ、長老さん!心当たりがあんのかよ!」


長老の言葉を聞くや否や、デイビスが口を挟んだ。


「あのさ、長老さん。こっちも命張ってんだからよ、そういうのは最初に言ってくんねえとな」


突然上から話し始めたデイビスだったが、


「すまんのう。キマイラを一人で倒したと聞いたもんで、安心しきっておりましたわ」


長老にそう言われて、再び小さくなった。



「で、長老様。心当たりっていうのは?」


エルムが仕切り直す。


「おお、それなんじゃがの。もともとこの村の周りの森には結界が張られておったのじゃ」


「結界、ですか?」


「そうじゃ。王国の魔術師に作ってもらった呪符を辺りに張り巡らせておるのじゃが、あの一角だけ呪符を剥がされてしまったのじゃ」


「え?呪符をですか?いったい誰が?」


「分からん。旅の者が間違って剥がしてしまったのかもしれんし、動物が剥がしてしまったのかもしれん」


「だったらよ、新しい呪符を張ったらいいんじゃねえか?」


そこにすかさずデイビスが口を挟んだ。

どうやら戦わなくて済む方法を探しているようだ。しかし、


「勇者様、それはそうなのですが、新たな呪符を張ったとしても、また同じように呪符が剥がされてしまうかもしれんじゃろ。そうなると、結局魔獣が来てしまう。だから、まずは魔獣を倒してもらおうと思ったのじゃ」


「あ、ああ。まあ、確かにそうだけどよ」


長老の話はもっともだったので、デイビスは反論できず黙ってしまった。

そこで再びエルムが質問をした。


「ということは、あの祠が何か特別だというわけではないんですね?」


「そうじゃな。村の神を祀る普通の祠じゃからの」


そう答えた長老の目を、エルムはじっと見つめていた。





「おい、エルム!結局何の手がかりも掴めなかったじゃねえかよ!」


長老の屋敷を後にした一行は、村の中を歩きながら話をしている。


「いや、いろんな話が聞けてよかったじゃん」


「はあ、てめえ口答えすんのかよー!」


デイビスのいつもの言い掛かりが始まったのだが、



「でさぁ、これからどうするのぉ?」


イザベルが疲れた顔で聞いて来た。


「そうですよ、早いとこアンデッドを倒してこの村を出発しましょうよ」


「そうなのです!早く次へ行くのです!」


女冒険者3人から言葉が発せられた。

こうなるとデイビスの次の行動は決まったも同然だ。


「おお、そうだな!で、どうすんだ!エルム!」


そう、予想通りエルムは問題を丸投げされた。


「じゃあさ、とりあえず武器を見に行ってみないか?もしかしたら、スケルトンを倒すのに役に立つ武器があるかもしれないし」


遅かれ早かれ鍛治職人であるカインの店を訪れるべきだと思っていたエルムは、このタイミングで切り出した。


「おいおい、こんな村に役立つ武器なんてあるわけないだろうが!ったく、何言ってやがんだよ、ほんと。」


デイビスが頭ごなしに否定してきたのだが、イザベルが面倒くさそうに口を開いた。


「まぁ、いいんじゃなぁい。どうせ他にやることないんだしぃ」


「え…」


「そうですね。掘り出し物とかあるかもしれないですし」


「え…」


「そうなのです!行ってみるのです!」


「え…」


というわけで、一行は鍛治職人カインの店へと向かったのだが。




突然二人組がデイビス達に向かって走って来た。


そしてそのさらに後ろから大声が聞こえて来た。


「泥棒!!!!!」


声が出された建物を見ると、そこはカインの店だった。


とっさにエルムは叫んだ。


「デイビス!」


するとデイビスは自信たっぷりな顔で言った。


「任せとけ!」



二人組の進路上に立ちはだかったデイビスは、首をストレッチしながら手首を回した。


「お前らも運のない奴らだな。このデイビス様が村にいる時を狙うなんてよ」


彼がそう言った時だった。



二人組は二手に分かれ、それぞれ左右の路地へと入って行ってしまった。


「お、おい…」


デイビスは立ったまま慌てふためいている。


チッと舌打ちをしてエルムは叫んだ。


「デイビス、右!」


「お、おう」


そう言われたデイビスは、右の路地に入った方を追いかけた。


そして、エルムは左に行った方を追いかけて行った。


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