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24 勇者対暗殺者

「そして父さんは近衛隊に連れて行かれたんだ」


カインは両手と両膝を地面につけ頭を垂れた。


「僕は何度も王宮まで行った。でも、決して門が開かれることはなかった。誰も僕の話なんて聞いてくれなかった。そのまま、そのまま父と会話をすることも叶わず、父は処刑されてしまったんだ…」


誰に話すというわけでもなかった。

それは完全に独白だった。

しかしその場にいた者は、彼の話に耳を傾けていた。



「でも、それはお父上殿が呪いの魔剣を作ったせいではないのですか?」


その独白に口を挟んだのはサーナだった。


それを聞いたカインはサーナに鋭い視線を向ける。

その視線を受け、サーナはヒィッ!と声を上げイザベルの後ろに隠れた。


「ふざけるなっ!父さんがそんなことをするはずないんだ!なぜなら…なぜなら父さんは、()()()()()()()()()のだから」


!?


3人の女冒険者の顔には同時に疑問が浮かんだ。


「フォレスト家の人間は誰でも魔剣を作れるわけじゃないんだ。そもそも、もう何代も前からフォレスト家には魔剣を作れる人間はいなかったんだ」


カインは再び下を向いた。

その肩は微かに震えていた。


「僕が…僕が魔剣を作れるようになったのは偶々だったんだ…。いや…それこそ、父さんのおかげだったんだ。僕の、僕の王国を恨む気持ちが、フォレスト家の呪いの血を呼び覚ましてくれたんだ。そう、だから父さんのおかげなんだ!この力は、父さんが授けてくれた力なんだ!恨みを晴らしてくれと…」


カインは拳を握った。

指の形に地面が抉れている。


その様子を女冒険者3人は、互いの手を握り合いながら見つめている。

一方のエルムは目を細めたまま微動だにしていない。



「だから、だから父さんがテロリストの仲間なわけないんだ!それに、それに僕は聞いたんだ!キルヒナー卿が王国に恨みを持っていたということを!」


再び目を丸くする3人の女冒険者たち。


「キルヒナー卿は先代の王に使える貴族だったけど、今の王になって左遷されてしまったんだ。臣下のトップにいた人が、一瞬にしてその権力の座から転げ落とされてしまったんだ。

その落ちぶれようは凄まじかったらしい。今まで彼の圧力に屈していた者たちによって、徹底的に虐げられたということだった。だから、新たな王とその取り巻きたちに対して相当の恨みを持っていたらしいんだ」


カインはそこで顔を上げた。


「その…その復讐のために…父さんは、利用されたんだ!」


そして再び鋭い視線をエルムに向けた。


「だから、だからこんなところで躓くわけにはいかないんだ!!!あいつを倒せ!!勇者デイビス!!その魔剣の力で!!!」


エルムを見上げながら睨みつけ、カインはそう叫んだ。



その言葉が合図となり、デイビスはスッと宙に飛び上がり、エルムとカインの中間に着地した。


魔剣の力なのか、普段とは明らかに身のこなしが異なっていた。


対峙する二人の冒険者。

二人の視線が交わった時、デイビスの目に一瞬力が入ったようにエルムは感じた。


次の瞬間、淡い光を放つ魔剣がエルムを急襲した。


速いっ!


それはエルムの想像を超えたスピードだった。

先ほどのスケルトンの比ではなかった。


エルムは咄嗟に右手の短刀を振り上げ、その攻撃を防いだ。

思考より先に体が反応していた。


そのまま至近距離で対峙する二人を3人の女冒険者は固唾を飲んで見守っている。



交わる二つの剣は、互いの力が均衡しているからなのか、全く動かない。


エルムはデイビスの瞳を見る。

一方のデイビスは、焦点の合わない目でエルムの方を見ている。


今のデイビスからは何も読み取れないと感じたエルムは、体を回転させながらデイビスの剣を弾いた。


そしてそのまま後方へとジャンプし距離を取った。


着地したエルムの方へと視線を向け再び魔剣を構えるデイビスに対し、エルムは一言呟く。


「普段からそれくらいやれよ」


それと同時に、カインの笑い声が響いた。


「フアーッハッハッハ!どうですか、死線の裁鬼(デッドセットスレイヤ)!やっぱり勇者は最高ですね!さすがのあなたも苦戦してるじゃないですか!」


いつの間にか立ち上がっていたカインが笑みを浮かべながらエルムの方へと視線を向けている。


「さあ、死線の裁鬼!勇者デイビスの本当の力をその目でとくと見るがいいですよ!」


カインはそう言うと、デイビスへ「行け!」と指示を出した。



「ふっ。お前がデイビスの本当の力を目に焼き付けるがいいさ」


そう返したエルムは、短刀を逆手に持ち替え地面を蹴った。


デイビスへと続く地面の土が等間隔で跳ね上がる。


対するデイビスは、攻撃に備え長身の魔剣を体の前で両手で構える。


そして、後数歩で再び剣と剣がぶつかり合うというその瞬間、エルムの姿が消えた。


デイビスは前を見据えたまま体を右へ反転しつつ剣を振り抜く。

するとそこにエルムの姿があった。


「遅い」


そう呟いたエルムは、デイビスの腹へと蹴りを打ち込んだ。


まともに攻撃を食らったデイビスは、体をくの字に折りながら吹き飛ばされる。


しかし、飛んでいったその先には既にエルムが先回りをしていた。


エルムは飛んでくるデイビスの背中へと再び蹴りを放つ。


今度はデイビスの体は真上へと蹴り上げられた。


為すがままの状態で宙へと舞うデイビス。

その先に待っていたのは、やはりエルムだった。


「終わりだ」


その声と同時に、エルムはデイビスの右手に握られている魔剣を斬りつけた。


ピキッ!


魔剣にヒビが入る。

すかさずエルムは幾重にも斬撃を放つ。


エルムの腕の動きが止まると同時に、魔剣に無数のヒビ割れていく。


直後、魔剣は無残に散った。


そしてトドメとばかりにエルムはデイビスを思いっきり蹴りつけた。


「ほぇあらばら〜〜」


デイビスは()()()()()()()を上げ、地面へと落下していった。


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