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19 無言の暗殺者

「こちらの勇者は、僕の支配下に入ったんですよ」


女冒険者3人は、見開いた目でカインを見返す。

一方、エルムは目を細めている。


「メイ、一体どういうことなのですか?」


何かしら気付いた様子のメイに、サーナが問いかける。

しかしメイは、カインの言葉に気を取られているようでサーナの声が耳に入っていないようだった。


「メイ?」


「!?」


再度呼びかけられ、メイはようやく我に返った。


「あ、すみませんなのです」


謝るメイをそっちのけに、サーナはもう一度同じ質問をする。



「デイビスは一体どうしたのですか?」


「ああ、それはアレなのです。恐らく手に持っているあの剣が、呪いの魔剣なのです」


「呪いの、魔剣…ですか?」


メイは動揺をしているためなのか説明が淡白すぎるため、サーナの理解が追かないようだ。


「それってあれでしょぉ。昼間話してたぁ、装備したら気が狂っちゃうっていぅ」


サーナに代わりイザベルが聞く。


「そうなのです、それなのです。でも、あくまで昔話として聞いただけのものなので、実際に存在するかどうかは定かではないのですが…」


サーナもイザベルも、どんな言葉を口にしたらいいか分からないといった様子だ。


「それに。呪いの鍛冶職人の血筋は途絶えたと聞いてますし…」


「フッフッフッフ。ふあーっハッハッハッハ!」



そこでメイの話を遮るように突然カインが笑い出した。

その不気味な笑い声に全員が視線を移動する。


「その呪いの鍛治職人、それがフォレスト一族なんですよ!」


「それじゃあ、やっぱり…」

「その剣がぁ…」

「呪いの…」


3人の女冒険者が立て続けに呟く。


「その通り!その剣こそ、僕が作った呪いの魔剣なんですよ!」


不敵な笑みに目を細めながらカインは言い放つ。



「ああ、一つだけ訂正しておきます。この魔剣はですね、人を狂わすんじゃありませんよ」


え?という顔で女3人はカインを見つめる。


「この魔剣は、人を思い通りに操る剣なんですよ!」


「ひ、人を操る…」

サーナは顔を引きつらせながら呟く。


「そうです。ですので、この勇者デイビスさんには、これから王国を破滅に追い込むという大仕事をやっていただきます」


勇者デイビスが魔剣の力で王国を破滅させる…

その言葉は3人の顔を青ざめさせるのに十分すぎるものだった。


「あと一つだけ言っておくと、こちらの3体のアンデッドが持っている武器も同じものですから。勇者が持っているものよりかは性能は落ちますがね」

「勇者と3体のアンデッド。この布陣による攻撃を、王国は防ぎきれますかね?エルムさん?」


目を細めながら聞いていたエルムに向かってカインは言葉を投げかけた。

女3人もその言葉と同時にエルムの方へと顔を向ける。


その場にいる全員から視線を向けられているエルムはとういうと、依然として細めた目でカインの顔を見つめている。



「エルムさん、あなたは色々と僕の周りを嗅ぎ回ってくれましたよね」


「嗅ぎ回る、なのですか…」


一向に表情を変えないエルムの顔を見つめ、メイが呟く。


「フッフッフッ。どうせ僕は気付いていないと思っていたのでしょう?でもね、最初から気付いていましたよ」


薄ら笑いをしながらカインは話を続ける。

女3人は無言でカインの言葉に耳を傾ける。


「一番最初、そうあれはエマが僕の店に来た時でしたね。エルムさん、あなた僕の店の窓から中を覗いていましたよね」


「……」


相変わらずエルムは無言を貫く。

その様子にサーナは「エルム?」と声をかけるも、一切反応しない。



「また反体制派か魔王側の使いが接触しに来たのかと思ったんですが、まさか勇者の仲間だったとはね。後で知った時はビックリしましたよ。でも、ようやく待ちに待った時が来たと嬉しくも思いましたがね」


そこまで言ったカインは、クックックと肩を上下させながら笑った。

女3人はまばたきもせずエルムを見つめている。


「勇者が来るのはもう少し先かなと思っていたんですよ。魔獣騒ぎを起こして、そんなに日も経っていなかったですからね」


魔獣騒ぎという言葉に反応した女3人は、カインの方を見る。


「ん?ああ、そうですよ。魔獣騒ぎは、勇者を誘き寄せるために僕が仕組んだんですよ。わざわざ僕はアンデッドが出る森まで3本の魔剣を持って行ってですよ、そこで奴らに魔剣を手にさせたんです。それもこれも、勇者に僕の魔剣を装備させるために」


女3人は信じられないといった表情だ。



「ただね、僕は最初の夜、正直焦りましたよ。一瞬、あなたに魔剣を見られてしまったと思いましたから」


饒舌に喋るカインに、無言のエルム。


「だからね、僕はすぐに魔剣を隠したんですよ。まあどうせあなたは、僕がエマに何か言われたか泥棒騒ぎがあったために剣を隠したと考えたんでしょうが」


全てお見通しだと言わんばかりに、カインはせせら笑う。


「エルムさん、あなたは今回の魔獣騒ぎを、どうせ大したことじゃないって思っていたんでしょう?でもどうですか?これでも大したことじゃないと言えますか?」


今度はハッハッハと声を大にして笑う。

女3人はその様子に完全に圧倒されてしまっている。



「勇者デイビスと3体のアンデッド、それに4本の魔剣。もうあなた方は完全に詰んでいるんですよ」


未だ無言で目を細めているエルムに対し、カインは最後の言葉を投げかける。


「もうお喋りは終わりにしましょう。まずはあなた方から死んでもらいましょう!さあ、勇者デイビスと新たな仲間たち!最初の仕事ですよ!」


カインはデイビスたちの方を振り返り言い放った。


その時だった。



「は〜はっはっは!」


エルムが笑い出したのだった。


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