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しっぽの勇者  作者: 羽西ミル
【第1章】始祖龍編
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【第3話】黒龍と断罪の騎士

6000文字書いて一晩しか経過しませんでした。ごめんなさい。

罪調べの儀の日程が決められた後、族長宅からは解散となった。


帰り道、またリジェおばさんに引っかかり、ママンがおかしい事になったのは言うまでも無い。


その日の夜、細やかながらジノの誕生パーティーが家族のみで開かれた。


孵化からまだ半日程しか経ってないが、メキメキと自分の体が成長しているのを感じる。


帰った頃には掴まり立ちが出来るようになり、そこから1時間程でよたよたとではあるが、歩く事が出来るようになった。


両親共に特に不思議には感じていなかったので、龍人族はかなり初期の成長が早いみたいだ。


色々と出来るようになる毎にやんややんやと騒がれるのは、悪い気はしなかった。


夕食はほぼ地球と変わらなかった。パンと思わしきものは緑色だったりしたが。


日本食文化は無いようだ。まぁ、わかってた。


デザートに謎の紫色果物を食べたが、ブドウ味の桃のような感触で、美味しかった。ツックの実というらしい。


お風呂は無かった。桶に入れた水を火の魔法を使ってお湯にした後、布を浸し、体を拭くといったものだった。うーん。文化ハザードを起こせそうだ。


寝る前には、少し言葉も話せるようになり、両親との意思疎通も出来るようになった。


その夜はベビーベッドは使わず、家族水入らず簡素なベッドで川の字になって寝た。


「「おやすみ。ジノ。」」


「ぱぱん、ままん、おやしゅみ!」



ーーーーー




《はッ、こりゃァ驚いたぜ。俺様を退けて精神乗っ取りやがっからどんな神かと思ったら人間かよ!!見た事ねェかっこしてんなァ。こんな事初めてだぜ。オイ、坊主!》


「・・・んぁ?」


ふと、目を開けると、そこには巨大な黒龍が居た。

全長は200メートルくらいあるだろうか。自分が小さくなってしまったように錯覚する。


「夢・・?」


《まぁ、そんなもんだ。坊主、オメェ自分の身に何が起こってるかわかってんのか?》


首を横に降る。


また、白い世界だ。ナナシさんと会った場所に似ている。あの時は声だけだったけど。


《そうか。で、どうすんだ?オメェの中にヴァルゲルムである俺様が居るんだがよ。》


「・・・・ええーーーーーーーーーーーーーーーー、!!!!!!?!!!!!のぁ!?体、が、?!」


自分の体が楠川アキトだった頃の状態に戻っていた。


《その様子だと知らなかったぇみてぇだな。チッ面倒くせぇ。》


やたらイカツイ喋り方の龍だ。


「お前、が、ヴァルゲルム、なのか?なんで俺の体が元に戻ってる?」


《俺らァ今精神体ってヤツだからな。魂に馴染んだ姿になるってモンだ。》


「俺は、ヴァルゲルムなのか?どうなってるんだ?」


《半分正解だァ。だが、違ェ。俺様は2人もいらねェ。俺様は暇潰しに顕現したら俺様の体に何故かオメェも入ってきやがったんだよ。しかも体は完全にお前に取られちまってる。これじゃ力も出せねぇしよ。どうなってんのかコッチが知りてぇよ。》


「ヴァルゲルム・・の体?」


《そうだ。フザけんじゃねーよ。なんでこんなニンゲンのガキに乗っ取られなきゃなんねーんだ。アァ、最初から話なんて聞かなくて良かったんだよォ、カカ、聞く必要ァ無ェんだよな。殺しャいいんだ。精神体の今ならできらァ。ここで会えて良かったぜ。悪りィが坊主。死んでくれや。》


狂気の混じった言葉を吐いた龍は10メートルはあろうかという爪をアキトに振りかぶる。


「なっ・・!」


回避できるわけもなく、只々迫る恐怖を見つめる事しかできないアキト。

爪が届く寸前、目を瞑る。


「・・っ!!!!・・・・・・・・・・・・ん?」


何も感じない。呆気なく死んだものだ、と目を開く。



《っ・・!!ンでお前がここに出てくるんだッァ!!!?断罪の騎士!!!》


すると、アキトの目の前に、黄金の全身西洋甲冑に包まれた騎士が悠然と立っていた。驚くべき事にレイピアと思われる剣の切っ先で音も無く龍の爪を止めていたのだ。


黒龍は酷く狼狽している。


(断罪の騎士・・?)


騎士はしばらくの沈黙のあと、よく通る声でこう言った。


「我が名はイグナック。断罪の騎士。我が主はこのニンゲンと貴様が手を組む事を望まれている。これは命令だ。拒否権は無い。」


男性の声だ。圧倒的な風格を感じる。


《なっ!??ふっ!!フざけんじゃねェ!!この坊主は一体ナニモンなんだよ!!》


「私の知る所では無い。全ては我が主の望み。少しデカいだけのトカゲの分際で大口を叩くな。その口、塞いでやろうか?」


イグナックがレイピアを真っ直ぐ振り上げると龍の頭上に無数の光の剣が現れた。


《わ、分かった。分かった。この坊主と手ェ組みゃ良いんだろ?!やめてくれ!精神体を殺されちまったらァマジで死んじまう!こんな所で死にたかねぇ!!》


アキトは目の前の光景に呆然としている。災禍の始祖龍ヴァルゲルが萎縮している。まるで赤子だ。


「フン、分かれば良い。それではさらばだ・・。ハァ。全く、主様も何を考えているのやら・・。」


イグナックは消え去る直前に、小声でぼやいていた。


(騎士って大変なんだろうな。頑張れイグナックさん!)


《・・・行ったか。・・オイ、坊主。えれェ事してくれたじゃねェか。オメェ一体なんなんだよ。》


「こっちが聞きたいよ。さっきのイグナックさんは一体何なんだ。」


《ありゃア断罪の騎士っつッてなァ。この世で禁忌を犯すと、罰を与えに来る神の使徒って言われてらァ。この世で一番敵に回しちゃァならねェ存在だな。俺様ぐらいになると、断罪の騎士とも面識あるけどよォ、似てッけどあいつァこの世界の断罪の騎士じゃねェな。それに、断罪の騎士を人間一人を守る為にこんなちっぽけな精神世界に割り込んで来るッつーのは異常すぎるッてもんだ。》


「ま、まぁ転生してから普通だった事の方が少ないからなぁ。」


《ッチィ。オメェに自覚がねーッてのがまたタチが悪ぃ話だぜ。あーァ。500年ぶりに顕現してみたらこのザマかよ。仕方ねェから手ェ貸すけどよォ。実際どうすんだオメェ。言っとくがあの族長とかいうジジイが言ってた勇者ジーンの聖剣ってのはホンモノだぜ。聖剣オーガストってんだ。この状態で斬られりゃア俺様もオメェもお陀仏だ。》


「お前がジジイって言うなよ。聖剣オーガストねぇ。。ん??オーガスト?・・なぁヴァル。聖剣って全部で12本だったりするか?」


《あ・・?いんゃ、聖剣は一本だけだぜ。十二名剣っつー12本の剣があってな。人間の伝説の鍛治職人とかって奴が作った8本目が聖剣だったって聞いてるぜ。よく12本だって分かったなァ。まぁその殆どが見つかってねぇみてぇだけどな。ってオメェ何勝手に略して呼んでんだよ。》


「ヴァルゲルムって呼ぶと長いし面倒だし。手出せないみたいだし。でも、やっぱり、か。」


オーガストは英語で8月だ。どうやら俺以外にもこの世界に飛ばされたやつはいるらしい。

転移門番ナタークさんを倒せたら十二名剣発掘の旅でも良いかもな。


《人の弱みにつけ込みやがッてよォ。クソッタレが。》


「ヴァルは龍だからいーんだよ。でも、さっきの話が本当だとすると、つまり俺の体はヴァルゲルムで、聖剣に斬られれば死ぬ、と。」


《あァ。》


「なぁヴァル、ちょっと情報不足なんだ。色々教えてくれないか?まず、この世界の事だ。」


俺は様々な事をヴァルに聞いた。

ヴァルゲルムに聞いたこの世界の情報を纏めると、


まず、この世界の知的生命体は人間、亜人、魔人、龍人と極々一部のその他。それぞれ特徴はあるが、人を象った存在が殆どであるという事。

人口は左から多い順だ。


V世界必須スキルの数値化(パラメーター)言語理解(ワールド・ワーヅ)は、この世界の全ての生物に適応されている。一般的にHPは生命力。MPは魔力と呼ばれている。


人間:特徴は特にない。ただ、どの種族よりも平均的な知能が高い。そして数が圧倒的に多い。

稀に魔術師や、勇者など、圧倒的な力を持った者が生まれる。

種族固有(トライブ)スキルは無いが、固有(ユニーク)スキルが生まれやすい。寿命は平均70年ほど。


亜人:様々な動植物の特徴を持って生まれてくる。エルフもこの中に入る。

亜人族の種族固有(トライブ)スキルは、その動植物の特徴が現れる事が多い。

得手不得手が特徴によりかなり変わるが、その分尖った性能になりやすい。

寿命は長寿の者だと1000年以上生きる者も。


魔人:魔物がある程度成長し、知能を持つと魔人になると言われている。

一部の魔人は、魔王の部下として生み出される事で、圧倒的な魔力を保有している個体が稀に出現する。

その個体は魔王族と呼ばれ、倒すと勇者の称号を得られる。

種族固有(トライブ)スキルは、魔物の特徴に偏るが、デバフスキルが多い。

寿命は魔力が無くなった時。ジノが魔族だった場合はもう10回以上死んでいる事になる。

今代の魔王は争いをあまり好まず、降りかかる火の粉を払う程度の抗争しか起こしていない。

稀に魔王族の一部が暴走して戦争になる事も。


龍人:何百年も前から一つの島に篭りきりの種族。現代ではほぼ忘れ去られている。

起源は龍と人間との子だと言われている。

他の種族とは違い、統一された特徴が存在する。

まず、角。見た目に個性が一番出る場所。親族で似たような形になることが多い。

次に目尻に生える鱗、眼鱗。

成長すると、自身の魔力を貯めておく事ができる。

そして、尾。ここに身分が現れる。

まず、出生する75%の龍人が二又尾と呼ばれる尻尾で生まれてくる。

見た目は羊羹などを食べる時に使う先が二つに分かれた菓子楊枝と言えば伝わるだろうか。

そして、残りの25%の内、15%が三又尾、5%が四又尾で生まれてくる。見た目はフォークだ。

この又は5本までが限度。4又は地面を支えることができ、5又は拳のように殴る、握る、掴むといった事が出来る。

そして残りの5%から、様々な尾が生まれるが、本数、又が多ければ多いほど実力も、地位も高くなる。


そして、天文学的な確率でウン百年に一度生まれてくるのが一本尾。忌み子の一本尾だ。


原因は、災厄を齎した龍人の子が一本尾だったからだそうだ。

生まれて一週間で5つの村を壊滅させたそうだ。

正体は1200年前に龍人として顕現したヴァルゲルムだった。破壊するのに飽きた頃、断罪の騎士がやってきて倒されたらしい。聞けば断罪の騎士と戦う為だけに村を壊滅させたとか。

呆れ果てた。

そう考えると一本の尾ってだけで殺す理由には十分だろう。放っておけば皆殺しにされる可能性があるのだから。


只、長い年月が経ち、ヴァルゲルムはお伽話の存在に。一本尾は只の不吉の象徴として扱われるようになったとか。ここ1000年の間に、3人だけ一本尾は産まれた。最初の2人は殺されたが、最後の1人は20年ほど生きていたそうだ。ただ、島の迫害に堪えかねて、移転門番ナタークに挑み、殺されたそうだ。


紆余曲折あったものの、結局ジノとしての不幸は大体コイツのせいだった。ちくせう。


閑話休題。


種族固有(トライブ)スキルは

飛行:その名の通り飛べる。MPを消費して飛ぶ。羽は3~5年で生えてくる事が多い。


変体(ヴァリアント):体の一部分の出し入れができる。MPの消費をして、角、眼鱗、羽、尻尾をしまえる。変装用スキルだ。一度変えると、戻す時にまたMPを消費する。しまっている状態ではMPを消費しない。

ヴァルゲルムはこのスキルを使うと、MPを常に消費する変わりに体を様々な形に変えられたという。


龍人格闘(ドラゴニック・アーツ):龍人族固有の格闘術。MPを消費しながら身体能力を上げる。また、発動中は何をどうすれば相手に最適なダメージを与えられるか、何となくわかるらしい。


龍人魔法ドラゴニック・マジック:MPを全て消費してブレスを放つ。消費MP量によって威力が変わる。ヴァルゲルムが1200年前に放ったときは3つの村を一瞬で焼き払ったそうだ。


寿命は平均100年程。個体によっては600年生きた者もいる。


そして、その他。


動植物:地球の世界とほぼ変わらない。違う点は固有進化。様々な条件で本来の種には無い特徴や、性質を持つ。例を挙げると、本来の寿命の何倍も生きるものや、知能を持ち喋るもの。ただしかなり希少らしい。


魔物:完全に知能を持たない種。生物を感知すると、見境なく襲いかかる。体のどこかに必ず核があり、修復不可能なダメージを負うか、核を砕かれたり、取られたりすると死ぬ。起源は分かっていない。ヴァルゲルムが生まれた頃からいるそうだ。


龍:龍はこの世の人間達よりも一つ上の存在。

肉体が朽ちても魂の質が違う為、

記憶も保有したまま生まれ変われるらしい。

生まれ変わり先も自分で選べる。

只、殆どが龍に転生しているようだ。龍が現界に姿を現わす事は殆ど無いらしい。

今までに現界で姿を現した龍は、ヴァルゲルムとアハドだけだという。始祖龍と呼ばれるわけだ。

ヴァルゲルムは数百年に一度、龍以外の生物に現界していたらしい。

龍が元のせいか龍人が一番馴染みやすいとの事。龍人に転生するのはこれが5回目だそうだ。


断罪の騎士:龍よりも上の存在。世界の禁忌が破られた時に現れる。神の使者と言われているが、真意は定かではない。イグナックさんはこの世界の断罪の騎士では無いらしい。


女神:いるらしい。人間の勇者の選定等を行っているのではと噂されてはいるがヴァルゲルムも存在を感知した事すらない。



こんな所だ。うーむ。産まれて一晩の内に仕入れる量の情報ではないな・・・。


《いやァ、久々に長話したッけどよォ。何か解決策は見つかりそうかァ?》


「むーん。糧にはなったが役には立たなそうだよ。」


《俺様の貴重な話をよォ・・。あと2日しかねェッけど大丈夫なのかよォ。ん、そろそろ時間ッぽいぜェ。》


「そうだな。じゃあ今日の夜また呼び出してくれ。色々と日中考えてみるよ。」


《カッ、俺様も寝るわけじゃァねーよ。考えてみらァ。》


「ありがとう。あ、そういえば、アハドってどんな奴なんだ?」


《あァ、あいつァ・・・》


そこで、意識は途切れた。

不自然な点、誤字脱字等御座いましたらご指摘の程、宜しくお願い致します。

コメント、お待ちしております。

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