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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第一章 サタケとピカリュウ
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第一章07★初バトル! 芽生えた絆と初勝利!

「いい? サタケ、1対1のぷにもんバトルだよ」


「もちろんさ。行くぞ、ピカリュウ!」



 サタケが立っているのはぷにもんバトル専用の土俵の前だ。

 土俵は円形で土を盛って少し高台にしている。

 勝負を見やすくするためだろう。


 ピカリュウの立つ土俵を俯瞰すると何か文字が書いてあった。

 サタケとミユの噂を聞きつけた人がちらほらと集まって言葉を交わす。

 どうやらこの土俵は【バトルステージ】と言う意味らしい。


 カタカナで言うのなら、ピカリュウが「バ」のあたりに立った。

 ややドキドキしているのか、何度も不安げにサタケへ振り向いている。

 本当は怖いのだろう。膝だって震えている。


 サタケが思わず声をかけようとすると、ピカリュウは、ぷい、と背中を見せた。



「ピカリュウ……」



 笠で顔を隠して覚悟を決める。


 ぐっ、と顔を上げ、笠を背中の方へ回し首に引っ掛けた。

 サタケは自信満々さをアピールするように強い眼差しをミユに向ける。

 紛れもない、今、サタケは挑戦者チャレンジャーだ。



「サタケ! 準備はオーケー?」


「いいよな、ピカリュウ?」


「……ピカ」


「がんばってるな。いいぞ、ピカリュウ。ミユさん、いつでもどうぞ!」


「うん。それじゃあ行くよ! 【タネネ】! 始まるよ、君のオンステージ!」



 ミユはポーチからディスクを取り出し、空高く放り投げた。

 放物線の頂点でディスクが光り輝いて中からぷにもんが現れる。


 みずみずしい緑の髪の女の子がゆっくりとくるくる回りながら降りてきた。



 外見は7歳ほどで小柄な彼女だ。

 重力を無視して落ちてくるほど軽いのか?


 よく確認するとバトルステージの「ジ」のあたりにツタが垂直に伸びている。

 そのツタは女の子の衣装の中に伸びる。

 彼女の身体を内側からしっかりと支えているようだ。


 やわらかに着地したタネネは、優雅な仕草で衣装の裾をつまんで一礼した。


 サタケとピカリュウは目を奪われてしまう。



 サタケはぷにもん図鑑をタネネに向けた。

 電子音と共に画面に情報が表示される。



「たねぷにもん、草と超タイプ。胸のペンダントには不思議な力が宿る?」



 たしかにタネネの胸元には大きなペンダントが提げられていた。

 何かの植物の種のようだが、綺麗に磨かれて宝石のように輝いている。



「見とれて技も出ない? それなら私たちから行くよ!」


「タネ!」


「タネネ、【あてっこ】!」



 タネネが片方の手のひらを空に向けてくいくいと上下させた。

 もう片方の手はペンダントをぎゅっと握りしめている。


 上下させた方の手の上に、スイカに似た緑色の球体が出現した。

 高速で回転している。


 タネネはサイドスローの要領で球体を打ち出した。


 強烈な横回転で横長の楕円に変形する球体がピカリュウに襲いかかる。



「ピッ!?」



 ただボールが当たった衝撃があるだけではない。

 高速スピンする球体の摩擦により、ピカリュウは投げ飛ばされる。

 土煙を上げながらバトルステージの端まで、身体の側面をこすりつけた。


 球体はサタケの脇へ転がってくる。

 どうやら球体の正体は大きな木の実だったらしい。



「大丈夫か、ピカリュウ!」


「……ピカゥ」



 彼女の目元に涙が滲んでいる。

 サタケは少し後悔してため息をつきかけたが、すぐさま口を一文字に結んだ。



「逃げちゃダメだ! そこはキミが、がんばって立ち上がった場所なんだ!」



 ピカリュウはサタケと目を合わせ、力を振り絞って立ち上がる。

 そしてまた背中を見せた。もう膝に震えはない。


 対峙するミユが二人の根性と絆の強さに惹かれたのか、笑みを浮かべる。



「サタケとピカリュウ、いいコンビだね。さあ君たちはどんな技を持ってるの?」


「技……! そうだ、ピカリュウの技は……」



 サタケはピカリュウにぷにもん図鑑を向ける。

 ピコポンと音がして、画面にピカリュウの覚えている技が表示された。



「【なきごと】と【びりびりぎゅー】の2つか。よし! ピカリュウ!」


「ピィカ!」


「タネネに向かって【びりびりぎゅー】だ!」


「ピカカ!」



 サタケの指示した通りにピカリュウはタネネに正面から迫る!



「タネネ! 君がかわいいだけじゃないってこと、見せてあげて!」



 タネネは小柄な身体を大きく見せるように、どっしりと構える。

 その気迫にピカリュウの足取りが重たくなったように見えた。



「そのまま行け! キミの【びりびりぎゅー】はいちばん俺が知ってる!」


「ッピカ!」



 ピカリュウは身体を帯電させたままタネネに抱きつく。

 帯電した電流がタネネに移り、タネネの身体を痺れさせたまま引きつけた。

 しかしタネネは渾身の力を振り絞って引き剥がす。バチ! と火花が弾けた。


 タネネは膝をカクリとさせたが、その細足でしっかりと地面に立っている。



「どう! タネネをヤワな育て方してないんだから!」


「すごい……! これがトレーナーとぷにもんの力なんだ!」


「さあ、今度はこっちの番だよ。タネネ、【あてっこ】!」


「くっ! また! ピカリュウ、避けるんだ!」



 タネネがふたたび手のひらを皿のようにして、空を持ち上げるように掲げる。

 また緑色の球体が出現した。正体は堅い殻で覆われた木の実だ。


 実体があるのなら避けられるはず。

 しかし、その企みはピカリュウに伝わっていないらしい。


 ピカリュウは球体から目を離せず、及び腰のまま動けなくなっていた。


 サタケは大きく息を吸い込んで、



「ピカリュウ!!」



 彼女の名前を呼んだ。



「ピッ!?」



 ピカリュウが我に返ると同時に、タネネが球体をサイドスローで放つ。

 ほとんど直線のような放物線を描いて飛んでくる。


 サタケの指示通り、横っ飛びして球を避けた。

 地面をえぐり、球体は回転を止める。



「いいぞピカリュウ!」


「素早さは中々だね。それじゃあ、これはどうかな? タネネ、【えだわかれ】!」


「タネェネ!」



 ミユの指示を受けたタネネは胸のペンダントを握り込んで目を瞑る。

 衣装の中から蔦が生えて彼女の身体を包み込んだ。



「何か仕掛けてくるぞ! その前に【びりびりぎゅー】だ!」


「ピカッ」



 サタケはピカリュウの素早さを活かして先立って攻撃を仕掛ける。


 タネネの身を隠す蔦の楕円体に向かって、


 ピカリュウは痺れる抱きつき攻撃!



 電流が蔦に含まれる水分を伝って、茎の中から楕円体を真っ二つに破壊した。



「……中に誰もいない!」



 繭のようだったそれは空っぽだった。

 では、タネネはいったいどこへ?



「ピカ!?」



 ピカリュウは背後から近づく影に気がつけず、羽交い締めにされた。


 不覚ながらサタケも気づけなかった。

 いったいどこから現れたのか?

 その答えは二つに破れた蔦の破片だった。



 そこから、もう1匹のタネネが現れる。



「タネネが2匹!?」


「かわいさ2倍だよ! えだわかれは体力を半分にして、身体を2つにする!」


「くっ、2対1なんて! ピカリュウ、なんとか抜け出してくれ!」


「そうはさせないよ。ホールドしたピカリュウに【あてっこ】!」



 ミユは後から現れたタネネに目配せをした。



「タ、タネ!」



 驚いたように返事をして、ふたたび球体を生み出す準備を始める。

 ピカリュウの後ろにいるタネネはピカリュウを押さえるのでいっぱいのようだ。

 まるでミユの声が聞こえていないような……。



 この勝負、勝利の鍵はここにある、という直感が働いた。


 拳を顔の前に置いて思考を巡らす。

 傍から見れば祈りを捧げているようにも見えるかもしれない。



 ピカリュウはどうすることもできない恐怖に表情を凍らせている。



「大丈夫だよ、ピカリュウ。後ろのタネネに向かって【なきごと】だ!」



 ピカリュウはサタケを信じられない、と言った顔で眺める。

 目の前で球体を生成するタネネを放っておいていいのか?

 そういう不安が彼女の脳裏に渦巻いているのだろう。



「さっきははぐれちゃったけど、お願いだ、今度は俺を信じてくれ!」


「……ピ」



 短い返事でピカリュウは頷いた。



 そうして後ろのタネネに聞こえる音量で、何やらピカピカと話しかける。

 タネネがピカリュウの身体を絞める力が少しずつ緩んできた。



「なきごとは愚痴を言ってやる気を削ぐ技! 耳を貸しちゃダメだよタネネ!」


「もう遅いぜ! ピカリュウ、後ろのタネネに抱きつけ!」


「ピカ!」



 ピカリュウは身体をひねって羽交い締めから抜け出す。

 抜け出した勢いのまま振り向いて、タネネの小さな体躯たいくに抱きついた。


 ピカリュウの後ろではもう一体のタネネがあてっこの準備を完了している。



「タネネ、【あてっこ】で、あなたの片割れを助けて!」



 タネネが球体を振り上げる。サイドスローをする予備動作に入った。

 このままではピカリュウの背中に堅い木の実がぶつかってしまう。


 直撃を喰らうわけにはいかなかった。

 今度こそピカリュウの闘志は折られてしまうかもしれない。


 球体を構えたタネネが狙いを定める。


 嫌な心配さえよぎるこの状況で、サタケは思わず笑みを浮かべてしまった。



「そこだ、ピカリュウ! 抱きついたまま振り返れ!」


「「タネ!?」」



 2匹のタネネが同時に驚いた声を上げる。

 1匹はピカリュウに抱きつかれた方のタネネ。

 もう1匹は木の実をちょうど放り投げる瞬間のタネネ。



挿絵(By みてみん)

Illust by saketo



 放り投げられた木の実は回転がやや斜めになっている。

 投げきる前に指先に力を込めて、射線をズラしたのだろう。

 木の実は背中を向けたタネネの肩に勢い良くぶつかった。



「ネェッ……!」



 タネネが痛そうに悲鳴を上げる。

 自分で放った技が自分に当たるという虚しさも少し感じられた。



「ピカリュウ! タネネを抱えたまま【びりびりぎゅー】だ!」


「タネネ! 早くピカリュウから離れ……」


「ピッ、カァ、リュッ‼」



 身じろぎをしていたタネネの身体に電撃が走る。

 バチバチ! と激しい音とともに火花を散らした。

 タネネに抱きついたまま、もう1匹のタネネにびりびりぎゅーでタックルする。


 バ、パン! まるで花火のように細かい火が四散した!


 真っ白な煙が立ち込める。

 サタケは拳を握りしめたまま、その光景をじっと見つめる。

 ミユは指を組んでお祈りをするように「タネネ……」とつぶやいた。



 煙が晴れて、中からピカリュウが顔を出した。

 その傍らには2匹のタネネが倒れている。

 次にまばたきをした時には片方が、ポン、と煙を上げて消えてしまった。



「くっ……。私の負けだね。おめでとう、二人とも!」



 いつの間にかバトルステージを囲んでいた観衆が歓声を上げる。

 ピカリュウは大勢の人に見られているためか、両の拳を胸の前にして縮こまる。

 緊張して固くなったピカリュウにサタケは抱きついた。



「ありがとう、ピカリュウ! 俺のこと、信じてくれて」


「ピカ!」



 ピカリュウがサタケの頬に頭をすりつける。

 旅に出てから最初の「大好き」のアクションだった。



 二人の傍らに、ミユが駆け寄る。

 タネネを優しく抱きかかえると、タネネは気を取り戻した。



「君はがんばったよ、タネネ。ゆっくり休んで」


「……タネ」



 力なく微笑んで、ミユのかざしたぷにもんディスクに入った。

 ミユはサタケに振り向く。



「旅を始めて3年の私に勝つなんて、やっぱり君たちってすごいね」


「そうかな? なあ、ピカリュウ?」


「ピッカァ!」



 ピカリュウはサタケに向かって帯電しながら抱きついた。



「あばばばばばばばば!!」



 サタケはいつもみたいにびりびりする。


 ミユが「あはは、ほんとにすごいね」と苦笑いした。

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