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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第一章 サタケとピカリュウ
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第一章06 彼女には向かない職業? ぷにもんスタイリスト・ミユ

「どうしてぷにもんディスクに入れなかったんですか!?」



 ぷにもんセンターにナースさんの声が響く。

 サタケがピカリュウをナースさんに見せるなりこの一声だ。


 ナースさんは語尾にさんを付けるとしっくりくるスラッとしたお姉さんだ。

 怒った顔になんだか迫力がある。本当にナースなのだろうか……。



「だってピカリュウがディスクに入りたくないって……」


「ぷにもんの気持ちを考えるのもいいですが」


「はい!」


「しっかりぷにもんの健康管理をするのがトレーナーの務めです!」


「はい……」



 ピシャリと怒られてしまった。

 ピカリュウをナースさんに預けてサタケは力の抜けた足取りでベンチに座る。

 その隣に座っていたミユが困ったように頬をかいた。



「コンペキ山のナースさんは特に厳しいからねぇ〜」


「ミユさん、それ何もフォローになってないよ……?」


「ん? そっか、ごめんごめん。でも、サタケの気持ちは分かるんだよ?」


「俺の気持ち?」


「うん。君はぷにもんを第一に考えてるでしょ?」


「え、あ〜、うん。言われてみればそうかも」


「そうだよ。だって最初からぷにもんと仲良しって珍しいんだよ?」



 ……そんなに珍しいとは思わなかった。



「えっ、えーと……、そうなんだ知らなかった」


「うん。ぷにもんとの絆の強さが、ぷにもんバトルの強さに繋がるんだから」



 ミユはそう言ってぷにもんセンターのテレビを指さした。

 そこではぷにもん同士がバトルする光景が映し出されている。



「ぷにもんリーグだ!」


「こんど開催される【ぷにもんエキスポ】のオープニングセレモニーだね」


「ぷにもんエキスポ?」


「ぷにもんリーグはぷにもんエキスポの一競技だよ?」


「し、知ってる知ってる」


「へ〜、それ知らないって顔だけどな〜?」



 ミユがじっとりした目でサタケを見つめると、頬を指でつついてくる。

 ミユはサタケが初心者だと分かってから、なんだか先輩風を吹かせていた。

 歳はミユの方が上だが、スレンダーな体型ゆえ大人の女という感じはしない。



「素直に言ったら教えてあげてもいいんだけどな〜?」



 サタケは目が泳いでしまったが、観念して頭を垂れた。



「ごめんなさい。知りません。だから教えて、ミユさん」


「よろしい。じゃあ、テレビを見て……、あ!」


「わ、急にどうしたの?」


「私の尊敬するメルドさんが出てる!」


「メルドさん……?」


「メルドさんは【ぷにもんスタイリスト】で【ぷにもんコンクール】の優勝者!」


「ぷにもんスタイリスト……? ぷにもんコンクール……?」



 知らない単語にちんぷんかんぷんのサタケは首を傾げてテレビを見た。


 メルドと呼ばれた女性は明るい桃色の髪で、派手な衣装を煌めかせて踊る。

 パン! という破裂音とともに紙吹雪が舞い上がった。


 すると、十歳ほどの女の子と十五歳ほどの少女が片膝立ちで現れる。

 頭から音符のような房が生えているから、おそらく彼女たちはぷにもんだろう。

 ドラムロールがだんだんと早打ちされ、突然訪れるつかの間の無音。


 メルドが笑みを浮かべ、始まる音楽と同時に二匹も可愛らしい笑顔になる。

 メルドが背中から指揮棒を取り出し、ぷにもんをステージ前へ誘導した。

 ぷにもん二匹の美しい歌声が交わると、七色のカーテンが空にかかる。


 カメラが徐々に引いていってカーテンの全容を映した。

 それと同時に会場が熱狂に包まれているのがよく伝わってくる。


 サタケは思わずテレビに見入っていた。



「どう? すごいでしょ、メルドさんのステージ!」


「はい、すごいです!」


「……私、あのステージに立つのが夢なんだ」



 ミユは照れているのか、頬を朱に染めながらつぶやいた。



「ミユさんがあのステージに……。うん、いいね!」


「……! ありがとう!」



 ミユは満面の笑みをサタケに見せた。

 自分の夢を肯定してもらえたのがよほど嬉しかったのだろう。



「そのために一番のぷにもんスタイリストにならなくっちゃ!」


「ミユさん、ぷにもんスタイリストっていうのは何なの?」


「えーと、ぷにもんに合ったスタイルを導く人、かな?」


「スタイル?」


「うん。例えばぷにもんセンターの【キュアロマ】を見て!」



 ミユが指さした先はぷにもんセンターの受付だ。

 先程サタケがナースさんに怒られていた場所でもある。



「あそこにキュアロマがいるでしょ?」


「ええ、どれ?」


「あっ、ぷにもんは意識しないと見えないからよく観察してみて」


「うーん……。あっ、もしかしてアレかな?」



 サタケの目線の先にはナースさん……、ではなくサイドテールの少女がいた。

 薄い桃色の髪を揺らして、せっせとナースさんの仕事をお手伝いしている。

 どうやら今は怪我をしたぷにもんを台車に乗せて運んでいるみたい。



「例えばキュアロマは人やぷにもんを癒やす香りを出せるの」


「へぇ。ああ、そういえば、ぷにもんセンターっていい香りがするよね」


「きっとあの子のアロマだよ。だからキュアロマはナースさんの助手が合ってる」



 キュアロマはピカリュウと近い背丈だが、顔つきは少し幼い感じだ。

 少しヨタヨタしたり足取りがおぼつかないところもある。


 ああ! 点滴バッグを落として、つまづいて転んでしまった!


 ナースさんが駆けつけて頭を撫でている。

 泣きそうな顔をしていたが、元気よく立ち上がってお手伝いを再開した。



「へぇ〜。でも、はたらくのには向いてなさそう」


「同じぷにもんでも得意なことは違うよ。でも、あの子は頑張りやさんみたい」


「うん。俺もそう思う」



 サタケはキュアロマを見つめてエールを送るような視線を向けている。

 同じように待合室にいる他のトレーナーたちも固唾を呑んで見守っていた。

 中にはキュアロマの頑張る姿に胸を打たれる人もいるようだ。



「サタケ。身体の傷を治すだけが人やぷにもんを癒やすってことではないんだ」


「ぷにもんにはそのぷにもんに合ったスタイルを……、そういうことだね?」


「そうだよ。ぷにもんスタイリストのことが少しは分かったかな?」


「分かった。あ、なら、ミユさんから見て、俺のピカリュウはどう思う?」


「それはよく見てみないと分からないけど……。サタケはどう思ってるの?」


「どうだろう……。ピカリュウは何が向いてるのかな?」



 ちょうどナースさんがサタケを呼んだ。

 サタケが受付へ近づくとピカリュウが奥から出てきた。



「ピカ!」



 サタケを見つけるなり、とててと駆け寄る。


 サタケは手を広げかけて、やめた。


 抱きしめようとしたけどピカリュウの頭を撫でるだけにとどめておいた。



「ごめんなピカリュウ。俺のせいで怪我をさせてしまって」


「ピカ?」


「サタケ、次からは【ぷにもん薬】を持ち歩かなきゃだね?」


「うん。それなんだけど……、こいつに危ないことはさせられないって思うんだ」


「そっか。ピカリュウのことが大事なんだね」


「だから、ピカリュウに合ったスタイルを見つけてくれないか?」


「いいよ。それじゃあピカリュウちゃん、こっちにおいで」


「ピィカ?」



 ピカリュウはちょっぴり不安そうにサタケに確認を取る。

 やっぱりピカリュウは人見知りする性格なのだろう。



「ピカリュウ、ミユだぞ。怪我をしたキミを助けてくれたんだ」


「……ピカ!」


「わぁ、いい子いい子! ピカリュウちゃんはお利口だね〜」



 ピカリュウがミユのそばに駆け寄った。

 二人が並んでいるとなんだか姉妹みたいに見える。

 ピカリュウの頭の羽とミユのツインテールが似てるからかもしれない。


 と言ってもピカリュウは借りてきた猫のように緊張していた。

 研究所で震えていた頃よりは少し人に慣れたらしい。



「う〜ん、いい子だから私のお願い聞いてくれるかな?」


「ピカピ?」



 そうしてミユはピカリュウをナースさんに預けた。



「ミユさん、何を始めるんだ?」


「ナースのお仕事、かな?」


「へぇ。ピカリュウにキュアロマみたいなことできるかな?」


「ピカリュウってぷにもんは初めて見たからね、なんでもチャレンジだよ!」


「さては無計画なんじゃ……?」



 ペロ、と舌を出す。

 サタケはミユの肩を何度も揺すって咎め立てた。


 すると二人の方へキュアロマが泣きながら駆けてくる。



「キュアアア〜!」


「キュアロマ? どうしたんだ?」



 キュアロマはサタケに抱きついて、顔をぐりぐりとシャツに押し付ける。

 サタケはキュアロマの頭に手を乗せ、もう片方の手で背中をさすってやった。


 泣きじゃくっていたキュアロマが次第に落ち着いてくる。



「す、すごいねサタケ。本当は何年も修行したんじゃないの?」


「えっ? 修行して今日でまだ一日目だよ?」



 ミユがサタケの返事に苦笑いしていると、ナースの嬉しそうな悲鳴が聞こえた。

 ナースが受付に走ってくるなり、サタケに声をかける。



「あなた、あの子のトレーナーよね? どれくらい修行したの!?」


「えっ? 今日でまだ一日目ですけど……」



 サタケは目を泳がせてヒヤヒヤしていた。

 ナースは先程の厳しい表情から打って変わって嬉しそうにサタケの手を取った。



「きっとあの子、優秀な助手に、いや。ぷにもん初のナースになれるかも!」


「キュアァ……」



 サタケに抱きついていたキュアロマが悲しそうな声を上げる。

 ナースさんがそれに気づいて慌ててそばに駆け寄った。

 キリリとした顔つきの彼女でも、キュアロマには優しげな眼差しをしている。



「仕事を取られちゃったのね。でも大丈夫。あなたはずっと私の助手よ?」


「キュア?」


「だから安心してね」


「キュア!」



 キュアロマがナースさんに抱きつく。

 ナースさんは細身の体型なので、並んでいると学校の先生みたいだ。


 受付の奥から満足げなピカリュウが出てきた。

 胸を張ったピカリュウだったが、サタケを見つけると嬉しそうにやってくる。



「サタケのピカリュウちゃん! 他にも才能があるかも! まだまだ行くよ!」



 ミユの掛け声とともにピカリュウは更なるチャレンジへ向かう。

 伝統工芸品を作る仕事とか、工事現場で人やぷにもんを誘導する仕事とか。

 そのどれも効率よくこなして早々に仕事を片付けたのだった。


 唯一ダメそうそうなのが、今ミユと挑戦している疑似ステージだ。



「ピカリュウちゃん、出ておいで!」


「ピィカ〜……」


「うーん、やっぱりかぁ」



 ミユはステージを降りて、腕を組んだままサタケに声をかける。

 ピカリュウはステージの反対側に残されたままだ。



「サタケ、ピカリュウは素晴らしいポテンシャルを秘めてるよ」


「だよな! 見ていて俺も嬉しくなった」


「だけど人前に出るのが苦手なのかも」


「うん、薄々それは感じてるかな……」


「ぷにもんエキスポは皆が見てる。もちろんぷにもんリーグもそうだよ」



 ミユは暗にぷにもんリーグへの出場は難しいと言っていた。

 サタケは顔を伏せて、しばらく考える。



「うん、やっぱり俺。ぷにもんが嫌だと思うことはさせたくない」


「キミはそれでいいの?」


「俺の夢はぷにもんリーグで優勝することだけど、ピカリュウが嫌なら……」



 きっとその言葉の後には「それでいい」という言葉が紡がれるはずだった。

 だけれどどうしてもサタケは「それでいい」なんてフレーズを言えなかった。



「ピィピカ、リュウッ!」



 掛け声とともに電気の柱が空に走った。

 サタケは声のした方を見る。


 ぷにもんバトル専用の土俵に、ピカリュウが立っていた。

 ビリリと足元に小さな雷が跳ねている。



「ピカリュウ? もしかして……」


「サタケよりも分かってるんだよ。夢のこと、次にやるべきことを」



 ミユがぷにもんディスクをサタケに向かってかざした。

 サタケはハッと驚きの声を漏らし、コクリと頷く。



「バトルだ、ミユさん!」


「受けて立つよ、サタケ! 二人のスタイル、私に見せてちょうだい!」

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