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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第四章 決戦! カントウハイブ
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第一章31 アースブレイク炸裂! つちくれのアルケミコ

 マツシの後ろから巫女の衣装を着た少女がやってきた。

 彼女はカントウハイブでマツシの居場所を教えてくれた人だ。

 マツシはその少女に振り向き、土俵に上がれるように手を差し出した。


 彼女はマツシの手を借りて、民衆の前に顔を見せる。

 荘厳で近寄りがたい雰囲気だ。頭や体の全体に金の装飾品をしているからか。

 いや、装飾品ではない。肌から直に金塊が生えているのだ。


 ……そうか、キミはぷにもんだったのか。

 あの時は慌てていたので人かぷにもんか判断ができなかった。



「ゆけっ、アルケミコ!」



 巫女装束のぷにもんが前に出る。

 明鏡止水。その言葉がアルケミコの立ち居振る舞いを最も的確に表している。


 サタケは図鑑でアルケミコをスキャンした。

 地タイプと闘タイプの複合タイプだ。


 考えれば当然だが、マツシもソルベルに挑戦したトレーナーの一人なのだ。

 でなければカントウシティから離れたコンペキ山に何年も通えない。


 闘タイプの技は悪タイプのソルベルに効果抜群なのだ。

 逆に言えばタネネの超タイプの技は闘タイプのアルケミコに効果抜群である。



「タネネ、このままいくぞ!」


「タネ!」



 タネネは勝利の興奮が収まらないのか、先程より元気そうに返事した。


 土に潜る技に対し、タネネの【おおごえ】は有効だ。

 これが分かっている今、マツシはそうした技は出しづらい。

 だが、同時にこちらに草タイプの技がないこともバレてしまっている。


 バレているのならもはや隠す必要はない。



「タネネ! アルケミコに【ねんどうりき】!」



 やわらかな地面で転ばないように相手に近づき、胸のペンダントに力を込める。

 紫の光がアルケミコの体を包んだ。

 組んだ指に力を込めると光がどんどん強くなっていく。

 アルケミコを潰し、体にヒビを入れた。



 ……え?



 アルケミコの体は土人形にすり替わっている。

 ヒビが入ったところからサラサラと砂が漏れ出し、しまいには体が崩れた。


 観客は騒然としている。

 ぷにもんバトルでぷにもんが致命傷を負うなんてことはめったにない。

 甲高い女性の声が起こるが、近くの男性が宥めるように言う。



「あれは特性【つちくれ】だ。最初に受けたダメージを無効化する能力だよ」



 なるほど特性か。完全に見落としていた。


 ……ならば本物はどこにいる?

 考えられるのは土の中。



「下から来る! 気をつけろ!!」



 指示を言い終わるかどうかのタイミングでタネネの足元の砂が飛び散る。

 間一髪、地面から飛び出したアルケミコを躱した。

 アルケミコは勢い余って、タネネのはるか頭上まで飛び上がっている。


 これはチャンス! サタケはアルケミコに指をさし、固まる。


 アルケミコは表情一つ変えず、タネネだけを見つめていた。

 技を避けられて……、いや、彼女は何か技を出していたか?



「違う! これから技を出すつもりだ! 構えろ、タネ――」



 マツシが二本指を地面に向かって指す。



「アルケミコ、【アースブレイク】」



 タネネがアルケミコを仰ぎ、構える。

 アルケミコは凛とした表情のまま、右の手のひらを自分の顔の前にかざした。

 グーにしながら胸の前に下げる。拳に黄金に輝くオーラをまとった。


 拳をタネネに向けるかと思えば、タネネの足元に向けて振り下ろす。

 鈍い音を立てて地面を殴りつけた。


 会場に一瞬の静寂が訪れる。



「……タネ?」



 なぜ? といったとぼけた声をもらす。


 次の瞬間、タネネのいた地面に亀裂が走った。

 土俵を真っ二つに割る。ステージに散らばる岩が宙へ浮くほどの勢いだ。

 サタケは立っていられず、揺れる地面に手を付いた。


 ……タネネは!?


 サタケが顔を上げた先には割れた土俵と、地面に拳を当てたままのアルケミコ。


 ふたたび大地が揺れ、割れた地面がぱっくりと口を閉じる。

 砂の中から気を失ったタネネが浮上した。


 審判が手を上げる。



「タネネ戦闘不能! アルケミコの勝利!」


「う、嘘だろ。一撃で、そんな……」



 横たわるタネネに駆け寄る。

 頬についた砂を指で払ってやると、彼女が申し訳なさそうに微笑んだ。



「よくやった、タネネ。あとは休んでいてくれ」



 タネネをディスクにしまう。

 サタケはうつむいて、ディスクを丁寧にホルダーへ収納した。


 なぜ特性を見抜けなかったのか?

 アルケミコに技を指示していなかったことも見落としていた……。

 あれは隙の大きい【ねんどうりき】よりも【あてっこ】だったんじゃないのか?



 後ろを振り向くと、ピカリュウとソルベルが身構えながら待っていた。

 サタケはハッとする。


 彼女たちはサタケに期待を寄せているのだ。


 今、考えることはなぜ負けたかではない。

 元いた場所に歩きながら、サタケはどうやったら勝てるかを考える。



 ピカリュウとソルベルを見比べる。

 どちらもアルケミコに対して不利なタイプだ。



「おいで、ピカリュウ」


「ピカ!」



 ピカリュウがサタケに飛びつく。


 ピリッとした感触が走る。



「いてっ。びりびりぎゅーは使わないでくれよ」


「ピィカ?」



 なんのこと? という風に首を傾げる。

 ピカリュウは無自覚で帯電しているから言っても直らなかった。


 抱きかかえたピカリュウは少し硬くなっている。

 観衆がサタケが次にどんなぷにもんを出すのかと見守っているからだ。


 ピカリュウを抱きしめるのをやめて、肩に手を添える。

 彼女の金に輝く瞳を見る。



「ピカリュウ。約束、覚えてるか?」


「ピ」


「うん。だったら、一緒に強くなったこと、見せてやろうぜ」


「……ピ」



 ピカリュウはゆっくりとサタケから身を引いて、土俵の端で周囲を眺める。

 ためらっているのかと思ったが、違うようだ。


 ピカリュウは覚悟を決めて、ステージと外を分けるラインを踏み越えた。



 観客からすれば見たことのないぷにもんだ。

 誰もが図鑑やカメラを取り出し、ピカリュウにレンズを向ける。

 ピカリュウはその場を動かない。今までならスグに逃げ出していたのに。


 審判が両者の準備が整ったと判断して、挙げた手を振り下ろす。



「……ピカリュウ! いくぞ。【なきごと】!」


「アルケミコ、【ストイック】」



 同時に技を指示した。


 先に動いたのは素早さで勝るピカリュウだ。

 ピカリュウはアルケミコにピーピカと愚痴を言って相手のやる気を削ぐ。


 アルケミコは顔を少ししかめた。

 しかし、すぐに目をつむってその場に座る。精神を研ぎ澄ましているのだ。


 図鑑を確かめる。

 【ストイック】は防御力を下げて攻撃力をぐーんと上げる変化技らしい。

 せっかく【なきごと】で攻撃力を低下させたのに巻き返された。


 おそらく、攻撃力が下がっているとアースブレイクで大地を割れない。


 マツシがお決まりの仕草で地面を指さす。



「アルケミコ、【アースブレイク】」



 アルケミコは立ち上がり、手のひらを顔の前にやる。



「ピカリュウ! 割れた岩に乗れ!」



 テコップが割った岩の破片がゴロゴロとステージ上に転がっている。

 ピカリュウはやわらかい砂に足を取られながら跳んだ。


 アルケミコが拳を胸の前で作り、地面を殴りつける。



 観客は息を呑んだ。重々しい沈黙が訪れる。

 誰もが終わったと思ったのだろう。


 地面が割れた。

 サタケは大地に手を付きながら、ピカリュウの姿を捉える。


 ピカリュウは岩にしがみついた状態で、宙に浮いていた。



 今まで表情ひとつ変えなかったアルケミコが、目を見開いている。


 なぜならピカリュウが笑顔だから。

 サタケが笑顔になっているから、きっとつられて笑ったのだ。


 ……楽しい。ピカリュウと一緒に戦えて、俺は!



 岩の上が安全だという確証はなかった。

 だが、試してみる価値を感じていた。


 ヒントはこうだ。

 先のアースブレイクで岩が宙に浮いていたこと。

 ピカリュウがアルケミコの無タイプ技よりも先に技を出せるほど素早いこと。


 発想はただひとつ。

 こうさく状態で地タイプ技が先制できるなら、こちらは受けの姿勢を取る。



 サタケはアースブレイクを攻略したのだった。

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