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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第三章 カントウシティとヨミヤ原生林
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夜会話03 ピカリュウとソルベルとサタケのタネネ

 蒼い月のきれいな夜。

 渓流沿いに簡易テントを立て、サタケは中で眠っていた。



 ……………………。

 …………。

 ……。



 ソルベルはコンロのそばでうとうとするピカリュウの頬を撫でる。

 ピカリュウは手で顔を押さえて、ぎゅっと体が縮こまった。



「今日は良い頑張りであったと思うぞ」



 ソルベルが人の言葉を発している。


 どうやら俺は夢を見ているらしいな。

 前にもこんなことがあったような気がする。

 まあ、今日はめちゃくちゃ疲れたし、こういう夢を見るのも悪くない。



 視線をソルベルから外すと、タネネを見つけた。


 タネネが川べりに座って月を眺めている。

 どこか幻想的で現実離れしていた。


 ソルベルが近づく。



「何か見えるのか?」


「残念だけど月しか見えないわ」



 ソルベルはタネネのそばに立ち、夜空を見上げる。

 タネネの言うとおり、空には丸い大きな月があるだけだ。



「……残念だけど?」


「わたしは星が好きなの」



 星は見えない。

 満月が明るすぎるからだ。



「星はいいわ。がんばって輝いてる。なんだか放っておけないの」


「あんなに遠いのに?」


「あら。貴方には冗談が通じないのね」


「す、すまん……」



 申し訳なさそうに頭を垂れる。



「ふふっ、いいわ。星はサタケのこと。貴方、どうして仲間になったの?」


「主は我が師の認めた運命の子。私は運命の子を護り、見届ける義務がある」



 事情を知らないタネネはキョトンと首を傾げた。

 2匹の間にピカリュウが割り込む。



「そうなの? ピカリュウが聞いたのは、サタケが好きだからじゃなかった?」


「ピ、ピカリュウ!? 起きていたのか?」



 ソルベルが驚いてピカリュウを抱きとめる。

 答えに困窮しているらしく、口をぱくぱくさせていた。


 畳み掛けるようにピカリュウが目をうるませる。



「ソルベル、サタケ好きじゃないの?」


「だっだからそれは一種の忠誠心であって……」



 タネネが頬に手を当てて微笑む。



「あら。わたしはサタケが好きよ?」


「ピカリュウもサタケだいすき!」


「……むむ」



 ソルベルは川に映る月を眺める。


 タネネがふっと笑みをこぼした。



「分かってるのよ。ソルベルがサタケを好きなことくらい」



 ソルベルが振り向いてタネネを確かめる。



「だってあんな熱い戦いを見せられたら、ね?」


「うむ。主は私ですら知らない力を引き出してくれた」



 ソルベルは、旅をする前の話だが、と前置きを入れる。



「門番としてたくさんの挑戦者を見てきたが、なぜぷにもんが人と共に旅をするのか疑問だった。今なら少し分かるかもしれないな」



 ソルベルの顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。

 自信と安心に満ちた表情だ。



 あまり話を理解できなかったらしいピカリュウがタネネに尋ねる。



「そういえばママってなに?」


「ぷにもんはたまごから生まれるものね。んー、ママってこういうことよ」



 タネネがピカリュウを背中から抱きしめる。

 ピカリュウの方が大きな体だが、タネネは両手でぎゅっと包むように抱いた。

 2匹の頬と頬が擦り合わさる。


 ソルベルが恥ずかしそうに頬を染めた。



「どうかしら?」


「へー、これがママかー! ちっちゃくてふわふわしてるから好き!」


「ちっちゃくて……」



 タネネは思いもよらない角度からダメージを受けたように表情が一瞬凍る。

 しかし、すぐに笑みを取り戻した。



「ピカリュウは正直ね。わたし正直な子は好きよ」



 よしよしとピカリュウを撫でる。

 ピカリュウはいつの間にかスヤスヤと寝息を立て始めた。



「あらあら」



 どうやらタネネには相手を安心させる才能があるらしい。

 ソルベルはタネネを少しうらやましそうに眺めていた。

 タネネはピカリュウの頭を膝に置いて、優しく髪を撫で付けている。


 タネネはソルベルの視線に気づいて、自分の横に来るよう誘う。

 大きな岩にはソルベルが座れるほど余裕がある。



「いや! わ、私はピカリュウの姉としてだな……」


「貴方はわたしのお姉様でもあるのよ?」


「そ、そうか……。なら仕方ない。私はお姉様だからな!」



 ソルベルはタネネの隣に座った。

 ピカリュウの寝顔を見て優しげに目を細める。



 ……思えば、ソルベルもだいぶ成長したと思う。

 最初の頃はピカリュウにも俺にも過保護だったのに。

 今ではピカリュウが強くなろうとする意志を汲んで俺を制止した。


 でも根本的にはソルベルはピカリュウが可愛くて仕方ないのだろう。



 タネネがソルベルに寄り添った。

 ソルベルは少し緊張して体を硬直させる。

 しかし、少しずつ気を緩めたようで、タネネはソルベルに身を預けた。



「お姉様……」



 ソルベルは頬を赤くしながらも幸せそうに頬を緩ませている。



 姉扱いされるのが弱いみたいだ。

 普段のソルベルからは想像できないほど、女の子らしい一面が見れた。


 こんな夢を見たなら疲れも取れるに違いない。



 ……。

 …………。

 ……………………。



 サタケは目覚めた。

 腰にホルダーを提げて、テントから出る。


 ピカリュウたちはどうやら外で眠っているらしい。

 川べりに行くとソルベルの両手にピカリュウとタネネが抱きついて寝ている。


 ソルベルはサタケに気づいて振り向いた。

 なぜか顔が赤い。



「そ……、そるぅ」


「おはようソルベル。どうした?」



 眠れていない様子だった。



「ちゃんと寝ないとダメだぞ。ディスクに入ってでも休めよ。今日はハイブ戦だ」



 サタケはディスクを石の上に置き、渓流に映る自分の顔を見つめる。

 そう、今日はカントウシティに戻って鬼仮面にリベンジするのだ。


 サタケはキンキンに冷えた渓流の水で顔を洗った。

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