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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第三章 カントウシティとヨミヤ原生林
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第一章26 秘密特訓! ピカリュウVS野生のスミクマ

「おーい! ピカリュウ!」


「そぅるるー!」



 もしもヨミヤ原生林で迷子になっていたらと思うと汗が止まらなかった。

 ピカリュウは生まれてからまだ1度もひとりきりになったことがない。

 そばにはサタケかソルベルがついていた。



「どこにいるんだー! ピカリュ、……あ!」



 ぷにもんセンターから少し歩いたところでピカリュウを見つけた。

 新ぷにもんだから他の個体の可能性はないと言っていい。

 それにサタケは直感的に彼女がピカリュウだと見抜いていた。


 ピカリュウは大木に向かってパンチを入れる。

 幹はびくともせず、ピカリュウが痛そうに拳を押さえてうずくまった。



「ピカリュウ!? 大丈夫か……、ってソルベル?」


「ソルル」



 ソルベルが飛び出さんとするサタケを制した。

 ピカリュウに視線をやり、コクリと頷く。

 タネネはソルベルの隣に座って、あらあらという風に頬に手を当てた。


 2匹に倣い、ピカリュウを見守る。

 ピカリュウは今度は木から距離を取って、走り出す構えを取った。


 ……なるほど。ピカリュウは今、強くなろうと努力しているのだ。



 ピカリュウは助走をつけて大木に体当たりを仕掛ける。

 今度は葉っぱがざわめく。

 ピカリュウは反動で地面に尻餅をついた。


 木の上からガサガサ! と何かが落ちてくる音がする。

 ピカリュウの前に黒い影が落っこちた。



「すみ〜……」



 スミクマだ。丸くて小さな耳が頭の上にちょこんと乗っている。

 乳児期のサタケの子守をしていた個体とは別のようだ。

 乳白色の髪の先は墨を付けた筆のように黒い。服装も墨汁で色が付いたよう。


 スミクマは背中をさすりながら、眠気眼をこすっている。

 サタケは図鑑を取り出してスミクマをチェックした。

 狭い所だとおとなしいが、広い場所だと気性が荒くなるらしい。


 葉っぱの密集した木の上でお昼寝でもしていたのだろう。

 ピカリュウの体当たりで木から落っこちて拓けた道の上に出てしまった。

 スミクマはピカリュウを見つけ、じっと見つめる。


 ピカリュウはスミクマと目を合わせてしまった。



「ピ!?」


「スミミッ!」



 スミクマはピカリュウに向かって技を仕掛けてくるようだ。

 手の先がぬめりと黒光り出す。ポタポタと地面に黒い雫が垂れた。

 ピカリュウが警戒してじりじりと退いたが、スミクマは一飛びで攻撃する。


 ピカリュウの顔が真っ黒になってしまった。

 おそらく墨を塗られただけだろうが、サタケは居ても立っても居られない。


 身を乗り出したサタケをソルベルが後ろからひっしと捕まえる。



「ソル!」


「でもソルベル……」



 ピカリュウを見守れということなのだろう。



「分かった。本当にまずい時は助けに行くからな」


「ソルル」



 サタケはソルベルの横に座る。

 ソルベルとピカリュウの間にも絆があるようだ。

 タネネはまだサタケたちの関係をよく知らないので固唾を呑んで眺めている。


 サタケは手にした図鑑をふたたび確認した。

 先程のスミクマの技は【らくがき】という命中率を下げる技のようだ。



「ピピカァ……、リュウッ」



 ピカリュウの身体がバチ! と光りだし、スミクマに向かって駆ける。

 走りながら彼女の身体を包む光の強さが増していく。

 最大まで帯電して攻撃するのが【びりびりぎゅー】という技だ。


 なるほど、帯電の状態を最大にした時に抱きつくという寸法らしい。

 そうすれば最大まで帯電するタイムロスをなくすことができる。

 トレーナーの絡むバトルとは違う生の戦いだ。肌で感じて体で覚えたのだ。


 ピカリュウのびりびりぎゅーがスミクマに当たるかと思ったその時。

 足元の石ころにピカリュウがつまづいた。



「ピ!?」



 びりびりぎゅーのデメリットはほぼ直進しかできないことだ。

 しかも帯電しながらだ。足元に石ころが転がっていたことに気づかなった。

 ピカリュウのまとった電気が弾け飛び、体勢を崩してスミクマを抱きしめる。


 2匹して地面に倒れ込んだ。

 特にスミクマは頭を思い切り地面に引きずる。


 人間だったら流血どころじゃ済まないだろうが。

 さすがヨミヤ原生林のぷにもんと言ったところか。

 大自然にさらされて強く育っているに違いない。


 ピカリュウはスミクマの顔が目の前にあり、あわてて立ち上がる。


 スミクマはその場にペタンとお尻を付けて座った。

 じわじわと目に涙が溢れてきて、しまいにはグズグズと泣き出してしまう。


 ……いや、強くなっても心は年相応なのかもしれない。


 12歳ほどの外見のピカリュウが14歳ほどのスミクマを泣かせたわけだ。

 ピカリュウとしてはどうしていいか分からないみたいで慌てている。


 もう出ていってもいいかな、と思った矢先、ピカリュウの前に何者かが現れた。



「ノッ! クマァ!!」



 雄叫びを上げたのはぷにもんらしい。身長がソルベルよりも高いぷにもんだ。

 黒い熊耳のフードを被り、マントのように羽織ったそれをはためかせる。

 スミクマがその大きなぷにもんにすがりつくと、少し乱暴に頭を撫でた。


 2匹は姉妹のようだ。

 野生のぷにもんは同じ進化系同士で姉妹を形成するという。

 体格に差はあれど、彼女たちもそうなのだろう。


 図鑑でチェックすると大きなぷにもんは【ノックマ】というらしい。

 スミクマの進化系で、巨体から繰り出されるパンチは海を割れるそうだ。

 時々図鑑の説明は大げさだが、あながち間違いじゃないとも思わせる。



 サタケは飛び出し、ノックマとピカリュウの間に割り込んだ。



「ノックマ! ごめん! スミクマもごめん!」


「ノク……、ノック!」



 突然でてきた人間に驚いた様子だ。

 しかし、すぐにノックマはサタケを睨みつけた。

 あまつさえ腕に力を込めて、指の先に鋭い爪を出現させる。


 ……そうか、あれで海を割ったわけか。


 いや、そんなことを考えている場合ではない。

 ピカリュウだけでも守ってやらねばと心に誓い、目をつむる。



「タァネネ!」



 タネネの声がこだまする。

 エコーがかかった声はノックマを苦しめ、爪を消滅させた。


 サタケはまぶたを開き、茂みから出てきたタネネを見る。

 ニコリと微笑んで非常に頼もしい。

 ソルベルはその隙にピカリュウを匿った。


 サタケはリュックから【ぷにもん薬】を取り出す。



「ノックマ! これでスミクマの傷を治す! だから矛を収めてくれないか?」


「……ノ」



 ノックマはまだ信じられない様子だ。

 すがりついたスミクマが「スミミ」と話しかけると、上げた手を下ろす。



「ありがとう。さあ、スミクマ。こっちにおいで」



 サタケはスミクマに【ぷにもん薬】を使った。

 治療を終えたスミクマはサタケの頬に頭をすりすりとこすりつける。

 ノックマが寂しいような悔しいような表情をしていた。


 ピカリュウがスミクマに近づいて「ピィピ」と手を差し出す。

 スミクマがピカリュウの手を握ると、「スミミ」と首を横に振った。

 たぶんピカリュウが謝って、スミクマがそれを許したのだろう。


 サタケはスミクマ姉妹と別れた。

 去り際にノックマの手をスミクマが握り、ノックマが頬を赤らめる。


 ……2匹は仲良しなんだなあ。



 2匹が去った後、サタケはピカリュウに向き直る。

 手を軽く広げてハグの姿勢で待った。



「ピカリュウ、おいで」


「ピピ」



 ピカリュウが、ぷい、とそっぽを向く。


 そうなのだ。

 ピカリュウが勝手に一人で行動したのには理由がある。


 さっきまでピカリュウは戦いたくなったからどこかへ行ったんだと思っていた。

 しかし、大木に体当たりしたり、技に工夫を入れたりしていた。

 考えてみれば簡単なことだ。



「悪かったよ、ピカリュウ。一緒に強くなろうって約束したのに」



 ピカリュウはそっぽを向くのをやめて、サタケの目をじっと見る。

 黄色の瞳は何一つ汚れなく、まっすぐに見つめてきた。


 そう、ピカリュウはソルベルの戦いを見て焦ったのだ。

 もっと強くならなきゃならない、と。

 サタケは彼女の気持ちを汲んでやれず、タネネを新しい戦力として迎えた。


 ピカリュウはそれを戦力外通告だと受け取ったのだろう。



「ピカリュウ。また、俺と一緒に強くなろうぜ」



 サタケは手を差し出した。

 スミクマとやっていたような仲直りの印に。


 しかし、ピカリュウはその手にタッチした。



「ピカ!」



 タネネに指を向けて目には力が溢れている。



「タネネに勝負を挑むんだな? わかった。タネネ、キミもいいよな?」


「タネ!」



 そうしてピカリュウとタネネの特訓が始まった。

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