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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第三章 カントウシティとヨミヤ原生林
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第一章19 女の子になっちゃった!? ヨミヤのぷにもんかくれ里

 ヨミヤ原生林でサタケは遭難していた。

 しとしとと雨が降ってきて、辺りは霧に包まれる。

 ピカリュウが不安げにサタケの肩へ寄り添った。



 斜面を滑り落ちたサタケは帰り道を知らない。

 ピカリュウとソルベルに案内してもらったが、2匹とも迷ってしまったらしい。

 ソルベルは申し訳なさそうに目を伏せる。



「気に病まないでよソルベル。キミがいてくれるだけで俺は心強いから」


「ソル」



 ソルベルは頭を上げる。

 何かを決心したようにサタケたちの前を歩き出した。

 彼女に追随してしばらく歩く。ソルベルは足を止めて一本の大木を指した。


 大きな岩があり、木の根がひさしのようになっている。

 霧が深くなってきた中で山中を歩くのは危険行為だ。

 真っ先に足を滑らせた人間が言うことでもないが。



「うん。あの下で雨宿りをしようか」



 ソルベルがまずピカリュウを先に誘導し、次にサタケを招き入れる。

 根の下は森の匂いが充満しており、なぜだか花の香りもした。

 最後にソルベルが入るのだが、ソルベルの肩が少しだけ外に出てしまう。



「ほら、濡れるだろ。こっちに寄れよ」



 ソルベルは恐縮した様子で近づいてこない。


 サタケは女の子を差し置いて自分だけが雨宿りしているのが我慢ならなかった。

 ソルベルの腰に手を回し、やや強引に自分の方へ寄せた。


 勢い余ってソルベルの顔が目の前にくる。

 白と黒のツートンカラーの髪はサラサラで、首筋に当たってくすぐったい。


 ソルベルは顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。

 なにも恥ずかしがるようなことはないんだけど……。



 サタケがソルベルの反応に困っていると、ピカリュウがつついてきた。



「ピピカ!」


「どうした? 奥に何か見つけたのか?」



 根の奥の方に向かってピカリュウが「ピーピカ!」と叫ぶ。

 声は反響しながら少しずつ小さくなっていった。


 どうやら根の奥に空洞があるようだ。



「ピカリュウ? どこへ行くんだ?」



 ピカリュウはおもむろに立ち上がり、根の奥の方へ向かう。

 サタケはピカリュウを引き留めようと手を伸ばした。


 その手は空を切り、一瞬だけ周囲が真っ白になったように見えた。



 気がつくと露が滴る草むらに転がっている。

 先程までのどんよりとした湿気はなく、カラッとした気持ち良い空気だ。

 花の香りが強く、サタケはいざなわれるように頭を上げた。



 視界いっぱいに青く透き通る池が広がっている。

 辺りは花々で満ち溢れ、見たことのないぷにもんが踊りや歌を楽しんでいる。

 特に目立つのが、池の真ん中に浮かんだ蓮の上で歌う真っ赤なぷにもんだ。



 赤い髪に赤い瞳、幼い顔立ちなのにあどけない感じはまったくしない。

 どこか現実離れした光景がサタケの前に広がっている。

 またリンネスの見せている夢だと思ったが、意識ははっきりしていた。


 頬をつねってみる。

 いつもより柔らかい頬だが、つねったら普通に痛かった。


 傍らにはピカリュウもソルベルもいる。

 立ち上がって彼女たちに並んでみたが、心なしか視点が低い。

 ピカリュウに話しかけようとしたら、声が出てこなかった。


 どういうことだろう。

 自分の両手を見てみると、なんだか子供みたいにぷにぷにしている。

 サタケは池に駆け寄って水面に映った自分の顔を覗き込んだ。



 俺はぷにもんになっていた。



 見た目は普段とそんなに変わらない。

 10歳の男子をかわいく着飾った程度の変化だ。



「サタケどこ?」



 ピカリュウが不安そうに……、えっ? ピカリュウが喋った!?



「主が見当たらぬ不安も分かるが、見知らぬ相手には主が主だとは分かるまい」



 ソルベルも喋ってるし……。

 ぷにもんは人間の言葉を喋れないんじゃなかったのか?



「サタケはサタケだよ!」



 ピカリュウが言い返す。

 言葉を使っているのを見ると彼女は人と大差ないように見える。

 頭に竜の羽があるけれど、元いた世界じゃコスプレみたいなものだ。



 ピカリュウがイライラし始めたからか、真っ赤なぷにもんの歌が止まった。

 歌を止めて、蓮の葉の上から水面に足を移す。


 驚いたことに水の上を歩いているではないか。



「妾はグレンゲ。ここはかくれ里。人はおらぬ。妾たちは皆、姉妹はらから


「サタケは人間だよ? サタケの場所しらない?」


「ここには人間はおらぬ」



 ピカリュウは寂しそうにうつむいた。

 俺のことを必死になって探しているのだ。


 山の斜面から滑り落ちた時もこんな寂しい顔をさせてしまったんだろうな。

 ピカリュウが悲しそうにしているのを見るのはすごく胸が痛んだ。



 一方、ソルベルは神妙な顔をしてグレンゲを眺めている。



「リンネスが話していた。運命を司るぷにもん・グレンゲ」


「その通り。お主はリンネスが託した運命の子、その観察者じゃな?」


「私はソルベル。今は主、サタケ様の下にいる。確かに観察者でもあるが……」



 観察者?

 話から察するにリンネスが眠っている間に付けた保護者みたいなものだろうか。


 ソルベルは役目のために仲間になったのか?



「ならば訊こう、観察者よ。どう見ている?」



 ソルベルはしばし考える。


 俺は自分が彼女を疑っていることに嫌悪しながら、でも同時に祈ってもいた。

 自分のぷにもんからどう思われているのか、どうしても知りたかったのだ。



「主は、そうだな……。一言で言えば未熟だ。運命を託されたとは思えない」



 そんな……。


 俺は愕然として、その場に膝を落としそうになった。



「ならば人の子の運命を断ち切ってやろう。それもまた妾の務めじゃ」



 世界を変える運命のことだろう。

 たぶん俺が生まれた意味なんだけど、正直なところ実感が湧かない。

 それでも少し信じている。世界を変えるとは何か、考えたこともあった。



 ソルベルがグレンゲに向かって一歩踏み出す。

 池に足が浸かった。



「待ってくれ! 確かに主は未熟だが、運命に向き合う心を持っている」


「主は観察者じゃろう。決めるのは妾。裁定者じゃ」



 蓮の葉が池の中心へ戻り始める。


 ソルベルはまた池に足を踏み入れた。

 膝の上まで水に浸かりながら、蓮の葉を掴む。


 グレンゲがソルベルに振り向いた。



「私はまだ主と旅を続けたい」



 ソルベルの顔はよく見えなかったが、その言葉は堂々としていた。



「ピカリュウもサタケと一緒じゃなきゃイヤ!」



 ピカリュウが割り込んでくる。

 ソルベルが驚いて振り返った。


 言い返そうと口をパクパクする。



「私の気持ちは一種の忠誠心であって……」


「もしかしてソルベル、サタケきらい?」


「なっ!? すっ好きに決まっておろうが! ……あ」



 ソルベルは顔を真っ赤にしていた。


 そんな2匹を眺めてグレンゲが笑みを見せる。



 次第に世界に霧が立ち込めてきた。

 俺はいつの間にか樹の根の下で目覚める。



「夢……、にしてはハッキリと覚えている……」



 両脇にはピカリュウとソルベルがサタケに肩を預けて眠っていた。



「2匹とも俺は大好きだよ」



 それぞれ頭を撫でてやった。

 ピカリュウは眠ったまま頭をこすりつけてくる。

 ソルベルは頬を赤く染めて、サタケの服の裾をきゅっと握ってきた。



 サタケは自分がちゃんと人間に戻れたのか気になったのか鏡を取り出す。

 コンペキ山でソルベルから手渡されたものだ。

 いつもなら不敵な顔が映っているはずなのに今映っているのは今の顔。



 樹の根の外には木漏れ日が差し込み、雨が上がったことを知らせていた。

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