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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第三章 カントウシティとヨミヤ原生林
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第一章15★再会のシグレ! カントウシティの鬼仮面

「到着! カントウシティ!」



 サタケはカントウシティに到着すると両手を上げて叫んだ。

 ピカリュウも一緒になって手を上げている。


 そんな一行を冷ややかに眺める少女がいた。



「脳天気ね」



 ゴブハットにセーラー襟のブラウス。

 水兵さんのような格好をした女の子が腰に手を当てて待ち構えている。



「シグレ!?」


「久しぶり、サタケ。遅すぎてカントウリングをゲットしちゃったよ」



 シグレは右手の甲を見せつける。

 中指にキラリと光るリングがあった。



「これがカントウリング! ハイブヘッドに勝った証よ」



 シグレの背中から13歳ほどの緑髪の女の子が現れる。

 胸元から下腹部にかけて弦を爪弾き、心地よい音色を奏でた。

 丈の長い上衣がリズムに合わせて軽やかに揺れて彼女の優雅さを際立てる。



「この子はチェロン。ビオリンが進化したのよ」


「チェロ!」



 笑うとビオリンだった頃の面影が垣間見える。



「サタケ! 早くハイブヘッドに挑戦……、ってその手持ちじゃ無理そうね」


「どういうことだよ!」



 サタケは怒鳴る。

 ピカリュウとソルベルを馬鹿にされたように感じたのだ。



「やってみれば分かるわ」


「やってやろうじゃないか」



 サタケはノシノシとシグレの前を通り過ぎる。



「ハイブはあっちよ」


「……」



 シグレが街の外れの方を指さす。

 サタケは笠で顔を隠しながらその方へ歩み始めた。

 ピカリュウたちが追随する。



 サタケが進んだ先には社のような古風な建物があった。

 人ひとりが雨宿りできるか否かという小さなものだ。

 建物の前には土を盛った簡素なぷにもんバトルのステージがある。


 盛り土の向こうから若い女性が顔を出した。

 赤と白の服を着た巫女だ。ステージの整備をしているらしい。

 もしかしてこの人がハイブヘッドなのだろうか?



「ハナガサタウンのサタケです。ハイブに挑戦しに来ました!」



 女性は自分がハイブヘッドではないと言うように首を振った。



「そうですか……。ハイブヘッドはどこにいますか?」



 サタケの質問を受けて、巫女は無言で街の方を指さした。

 道の先に縞模様の灯台が見える。

 きっとあの灯台にハイブリッドがいるのだろう。


 はやる気持ちを抑えきれず、サタケは早々に出発した。

 先程の道に戻るとシグレはどこかへ行ったようだ。

 道案内の看板があって、どうやら灯台は【マレビトのみさき】にあると分かる。



挿絵(By みてみん)



 マレビトのみさきにサタケがたどり着く。

 白と黒の縞模様の灯台の他は広い野原が広がっている。

 そこに海を眺め佇む男がひとりいた。


 サタケが男に近づくと男が振り返る。



「ピ!」



 ピカリュウが驚くのも無理はない。

 男は恐ろしい形相をした鬼の仮面をかぶっていた。



「お前がハイブヘッドか?」



 鬼の仮面は一言も発せず重々しく頷く。



「俺はハナガサタウンのサタケ! ハイブヘッドに挑戦する!」



 ピカリュウが状況をつかめずに右往左往する。

 サタケの宣言が唐突過ぎたのだろう。


 鬼仮面がぷにもんディスクを前に出す。

 挑戦を受けるということらしい。


 二人が対峙する間にシグレが割り込んできた。



「シグレ!? どこに行ってたんだよ」


「それはこっちのセリフよ」



 やれば分かると言った手前、勝負を見届けようとしたのだろう。



「私が審判を務めるわ。勝負は1対1のぷにもんバトル」



 鬼仮面が頷く。サタケも「いいぜ」と返した。



「それじゃあ――バトル開始スタート!」



 まず鬼仮面がディスクを投げる。

 繰り出したのは【テコップ】だ。


 両手の服の裾が柄杓のような形になっている。

 黄土色を基調としてアクセントに銀色が入った格好だ。

 オレンジ色の髪色にマッチしていた。



「最初のハイブ戦だ。だったら……」



 サタケはピカリュウとソルベルを交互に見る。

 2匹とも心の準備ができていないという感じだ。

 サタケは2匹の様子に憤りを覚える。


 今までの旅はハイブに挑戦するための道のりだったのだ。

 それがここにきて尻込みしているようではいけない。


 シグレに視線をやると、思わず視線がかち合う。

 審判として何も言わないのだろうか。

 あるいは、実戦経験のないサタケにあきれて声を掛けるのも面倒なのか。


 サタケは鬼仮面に振り返る。



「行くぞ、ピカリュウ!」


「ピッ!? ピカ!」



 小さく驚いた声を上げた後、ピカリュウはサタケの前に出た。

 準備万端というわけではないだろう。

 それでもピカリュウと戦って勝ったという自信が背中を押した。



「見せてやれピカリュウ! 【びりびりぎゅー】だ!」


「ピカ!」



 いつも通りのサタケを見て安心したのかピカリュウは元気よく返事する。

 身体に力を溜め込んで、ビリビリと表面を閃光がまたたく。

 帯電したままテコップめがけて抱きつこうとするが、足元がおぼつかない。


 いつの間にか地面がやわらかい砂に変わっていた。

 加速というのは地面を蹴って得た反動によるエネルギーを用いる。

 地面を蹴る力が砂に吸収されてしまい、ピカリュウ本来のスピードが出せない。


 それでもピカリュウは懸命にテコップめがけて走る。

 勢いこそなかったものの、ピカリュウは抱きつくことに成功した。


 バチッ‼ 2匹の間に火花が散って白煙が上がる。



 海からの風が吹いて煙が消し飛んだ。

 佇んでいたのは無傷のテコップだけで、ピカリュウは地面に尻を付けていた。



「……無傷!?」



 テコップは表情ひとつ変えず、ピカリュウを見下している。

 鬼仮面が片手を閉じたチョキの形にして顔の前にかざす。

 少し嗄れた声で、



「【ドリルダイブ】」



 テコップは両手を伸ばし、手の甲と手の甲を合わせる。

 すると腕全体をつつむように回転する発光体が現れた。

 その発光体を地面に押し当てると勢い良く砂が巻き上がる。


 地面に穴が空いてテコップの姿が消えた。

 おそらく地面の中に潜ったのだろう。



 サタケはここでやっと自分が大きな失敗をしていたことに気がつく。

 相手のぷにもんのタイプを確認していなかったのだ。

 前世の記憶が地面に潜る技から相手のタイプを推測して警鐘を鳴らした。



「ピカリュウ! 下だ! 避け……」



 サタケとピカリュウの間にテコップが出てくる。

 ピカリュウへの指示が遮られ、ピカリュウが振り向いた。

 そこには巨大なドリルを構えたテコップがいるというのに。



「ピッ!?」



 ピカリュウは身構える暇もなくドリルを腹部に受けた。

 砂煙が立ち込め、中から表情をひとつ変えずにテコップが出てくる。

 サタケに背中を見せたままテコップは立っていた。


 海風が吹いて力尽きたピカリュウが現れる。


 シグレがため息をついて、



「ピカリュウ、戦闘不能! よって勝者はハイブヘッドの」


「そんなっ、ピカリュウ!」



 シグレの言葉を遮ってサタケはピカリュウに駆け寄り、抱き上げる。

 ピカリュウはゆっくりとまぶたを開け、サトシに力なく微笑んだ。

 まるで勝てなくてごめんと言っているようにも見える。



「悪いのはピカリュウじゃない……」


「はぁ。サタケ、自分のことしか考えてなかったでしょ」


「シグレ……。俺、頭を冷やしてくる。ピカリュウを頼むよ」


「ぷにもんセンターにいるわ。……ちゃんとこの子を迎えに来るのよ」



 サタケはピカリュウをディスクにしまい、シグレに預けた。

 鬼仮面はうなだれるサタケの横に立ち、無言で視線を送ってくる。


 ソルベルが警戒して2人の間に割って入った。

 彼女は鬼仮面の目と合わせ、ハッと何かに気づく。

 警戒を解くと鬼仮面はサタケの前から去った。



 みさきに残されたサタケにソルベルが寄り添う。

 サタケはソルベルから距離を取った。



「……ソル」



 ソルベルはしゅんとうつむく。

 悲しそうにも申し訳なさそうにも見えた。



 サタケのリュックから声が聞こえる。



「ぷにもんトレーナー失格か? 別にいいだろ、人は誰だって失敗するんだ」


「……」


「ぷにもんは人が飼ってるんだ。言うことを聞くのが当たり前だろ?」


「……違う。俺たちはそういう関係じゃない!」



 サタケが怒鳴り声を張り上げるとソルベルが驚く。

 ずっと背中を見せていたが、スッと立ち上がって彼女のいる方を向いた。


 ソルベルが心配そうに見てくるので、サタケは、



「ピカリュウのところへ行くぞ、ソルベル」


「……ソ」



 ソルベルは笑みをこぼした。

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