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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第二章 コンペキ山のジョーカー団
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第一章13 風のお告げ 新しい仲間・解錠ぷにもんソルベル

 半ドーム状の空間が光で満ち始める。

 天井の穴から光が差し込むほど日が昇ったのだろう。


 日差しは容赦なくソルベルを照らす。

 サタケは自分の背中を壁代わりにして、日陰を作ってやった。


 リュックを下ろして中から【ぷにもん薬】を取り出す。

 ミユの助言のもと、コンペキ山のふもとで買った。



「ソルベル、我慢してくれ。痛いかもしれない」



 ダメージを負った箇所にスプレーを吹きかける。

 ビクッと身体を固くするだけで、ソルベルは弱音一つ吐かなかった。

 ピカリュウが心配そうにソルベルの手を握っている。


 そうしてひとまずの応急処置を終えた。

 ぷにもんは不思議な生き物で、ある程度のダメージなら人間より早く回復する。

 しかし、ソルベルのダメージは深く、今なお苦しそうに目を閉じていた。


 回復できない量のダメージはぷにもんセンターで直すしかない。

 ソルベルは16歳ほどの少女の姿をしている。背だってサタケより高い。

 彼女をぷにもんセンターまで担いで運ぶには難しそうだった。


 サタケはソルベルの頭に手を置く。



「ひどい熱。ピカリュウ、リュックから水筒を取って、湖の水を汲んでくれ」


「ピカ」



 リュックをひっくり返し、道具や携帯食料が地面に散乱した。

 その中から水筒を見つけてピカリュウは湖に向かう。

 散乱した中に今朝もらった鏡があった。


 普通なら映らない角度なのに、サタケの顔が鏡に映っているように見える。



「ソルベルを助けようって? 自分のぷにもんじゃないだろ。置いていけばいい」



 その考えは決して間違ってないだろう。

 もしもこれがゲームだったら、そうしていたかもしれない。

 でも、今サタケの前で起こっていることは、サタケにとっての現実だ。


 サタケは鏡の声を振り払うように頭を横に振った。

 が、すぐに止める。



「今なんて言った? 自分のぷにもんじゃないだろ?」



 地面に散らばる道具の中から、それに視線が留まった。

 コキド博士からもらった5つのぷにもんディスクだ。

 ディスクを1つ取り、ソルベルから見えるように提示する。



「ソルベル、今はこの中で休んでいてくれ。またここに戻すから」



 彼女はゆっくりと頷いた。

 額に優しくディスクを当てると、ソルベルの身体はディスクに吸い込まれる。

 軽い音を立てて地面にディスクが落ち、一度だけ揺れてゲットが完了した。


 ディスクを拾ってサタケは驚く。



「あ、熱い。ピカリュウ、水は汲んだか?」


「ピカピ」



 差し出された水筒からディスクに水をかける。

 サタケはピカリュウとともに下山しながら、何度もディスクを冷やした。


 開かずの門から出てくる時、人々がサタケに群がろうとする。

 サタケの真剣な様子に誰も彼もが近づかず、混み合う広場に道を作った。

 頭を下げるとかぶった笠で群衆から顔が見えなくなる。


 ふもとのぷにもんセンターに到着すると、ナースさんが急いで治療を開始した。

 受付から戻り、サタケたちはセンターのベンチに腰掛ける。


 がっくりとうつむいて、組んだ手を眉間に当てた。



「俺は力不足だ。もう1匹ぷにもんがいたらソルベルを守れたかもしれない」


「ピカ?」


「2回だ。キミが俺を守ってくれたのは」



 1度めはシグレのマリンコが暴走して攻撃を仕掛けた時。

 2度めはジョーカー団の団員がラーバーを繰り出した時。



「俺はキミを守るべき立場なのに……」


「ピィピ」



 ピカリュウがサタケの肩に身を寄せた。

 安心してるよって伝えるためなのか、彼女はしっかり寄りかかっている。

 優しい重みにサタケは少しだけ倒れかけたが、がんばってその場に静止した。



 そうこうしているうちに回復したソルベルが戻ってくる。

 あれだけのダメージだったが、傷一つなく彼女は帰還した。


 ソルベルがサタケに近寄ると、ピカリュウにビクッとされる。

 軽く落ち込んでいる様子を見るにすっかり元気そうだ。


 ナースさんに呼ばれ、ソルベルを入れていたディスクを受け取る。

 その時、リュックの中から何か声が聴こえた。



「ゲットしたままにしておこうぜ」


「ソルベルはリンネスを守ってるんだ。だから逃さなきゃいけない」



 ナースさんがキョトンとした顔でサタケを見ている。

 どうやら鏡の声はサタケにしか聞こえないらしい。



「なんでもないです。それじゃ」


「あ、待って。トレーナーさん、あなたにこれをあげるわ」



 サタケはナースさんから【ディスクホルダー】をもらった。

 ベルトに取り付けて、いつでもぷにもんを出し入れできるようになっている。



「ぷにもんが増えれば持ち歩きが大変でしょ。トレーナーは皆それを使うわ」


「そうなんですか……、あっ、でもどうして俺に?」


「開かずの門を開けた勇者、なんでしょ? サービスよ。受け取ってね」



 ナースさんが微笑む。初対面は厳しそうな彼女だったが、笑うと可愛らしい。

 サタケはディスクホルダーを腰に取り付ける。

 ソルベルの入っていたディスクをしまおうとして、手を止めた。



「ソルベル。俺は約束通り、キミをコンペキ山に戻すよ」


「ソル?」



 サタケはぷにもんセンターを後にして、開かずの門と呼ばれた場所に来た。


 選ばれし者の登場に広場がざわざわし始める。

 その上、サタケはソルベルを従えているのだ。彼らは歓喜の声を上げた。


 収まらないと思われたお祭り騒ぎの中、サタケはディスクを掲げる。



「ソルベルを逃がす!」



 たった一言で広場は静まり返った。

 選ばれし者をやめると受け取られたのか、どういうことだと悲鳴が上がる。


 ソルベルが心配そうにサタケをうかがう。



「気にするな。キミはコンペキ山でこれからも守り続けるんだろ?」



 彼女が守っていたのはリンネスという神のぷにもんだ。

 リンネスは声こそお姉さんっぽいが、放っておけない感じがする。

 凛々しいソルベルのことだ。リンネスを守ってやりたいに違いない。



「ソル!」



 サタケの質問に少し考えた後、ソルベルは首肯した。


 群衆のざわつきが最高潮に達した時、門の向こうから突風が吹き込む。

 その場にいた全員が尋常な風ではないと察し、身構えた。



「リリーーーーッ!」



 甲高いぷにもんの鳴き声。

 サタケとソルベルだけが門の方を刮目かつもくして見る。


 間違いない。リンネスの声だ。


 サタケにはなんて言ったのか分からない。

 一方、ソルベルは静かに頷いた。


 突風が止み、人々は落ち着きを取り戻す。

 そんな中、ソルベルがサタケのすぐ目の前に歩み出た。



「どうしたんだ? キミは風の来た方へ戻ればいい」


「ソゥルル」



 首を振った。拳を作って、ディスクのスイッチを押す。

 ディスクが光ってソルベルが一瞬のうちに吸い込まれた。



「どうして? リンネスがキミに何か言ったのか?」



 サタケはディスクに話しかける。

 するとふたたびディスクが光って、中からソルベルが飛び出した。


 出てきたソルベルは、まるで忠誠を誓う騎士のようにひざまづく。



「ソルッ!」



 こういう時、サタケはどうしていいのか分からなかった。

 だからいつもピカリュウにしているように、サタケはソルベルの頭を撫でる。



「……ソルル!」


「うわ! いきなり顔を上げて何!?」


「ソル! ソル!」


「あ、肩に手を置けってことだったの? ……ゴメン」


「……ソル」



 アニメか漫画で騎士が王から剣を肩に添えられている光景を思い出した。

 つまりそういうことなのだろう。


 ソルベルは頬を真っ赤にして、ぷいとそっぽを向いてしまった。



「ピィピカ?」



 ピカリュウがソルベルを見ながらサタケに尋ねる。



「ああ、ピカリュウ。この子はソルベル。俺たちの新しい仲間だ」



 この日、サタケは2匹めのぷにもん・ソルベルをゲットした!

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