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punimon - 育成チートで異世界最強ハーレムを!  作者: 如何屋サイと
第二章 コンペキ山のジョーカー団
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第一章09 コンペキ山の開かずの門

 二人が坂を登った先には切り立った崖に囲まれた広い平地に出る。

 そこには多くの人とぷにもんが修行をしている。

 中には集団で来ている人もいた。その集団は先の怪しい団体ではなさそうだ。



 サタケは人が多くいるところに興味を持って近づく。

 ピカリュウはサタケの背中にさっと隠れた。

 相変わらず人に見られるのが苦手らしい。



 サタケが足を止め、空を仰ぐ。

 否、仰いだのは空ではない。

 切り立った崖にそびえる鉄製の門だ。


 集まった人々に対してガイドのお姉さんが門について説明している。

 サタケもその話を途中から聞いていたが、飽きて辺りを見回していた。

 聞いていたのは、この門は選ばれた者だけが入れるということくらい。


 人々は「ほう」とか「へえ」とかつぶやいて、各々自由に行動を始める。

 修行を始める者や崖のそばにある茶屋で休憩する者。

 門の前に残されたのはサタケとピカリュウだけだった。



「ピカリュウ、この門を開けてみないか?」


「ピ……。ピカピ!」



 ピカリュウはちょっぴり考えて、門に向かってグッと握りこぶしを作った。

 どうやらやる気になったらしい。


 ピカリュウは助走をつけて門に向かって体当りする。


 ドン! と重たい音を立てて、ピカリュウの足取りが止まった。

 息を漏らしながらピカリュウは門を押し続ける。


 血が上ってきたのか、どんどん顔が赤くなっていく。

 しまいには目を回してピカリュウはふらふら退き、尻もちをついた。



「ピピカァ……」


「大丈夫か、ピカリュウ!」


「ピーピカ」



 サタケがピカリュウを抱えて、デコルテの辺りをぽんぽんと優しく撫でる。

 彼女は撫でられて、ゆっくり深呼吸をした。


 呼吸が整った後、控えめに言って無理、という感じで門を指さす。

 あまつさえサタケに不満げだ。



「俺もやれって? よーし、いっちょやってみるか」



 サタケは袖をまくって、笠を背中に回した。

 扉に手を付けて足に力を込める。



「ふんぬ!」



 サタケの顔がみるみるうちに赤くなる。

 歯を食いしばるが、歯の間から息が漏れていた。


 最終的にサタケもギブアップして、肩で息をしながらその場に腰を下ろす。



「ピィピカリュ?」


「ん? ああ、大丈夫だよ。ありがとう、ピカリュウ」



 心配そうな顔をして寄ってきた彼女の頬に手を当て、親指で優しく撫でる。



「ピィカ〜」



 ピカリュウは気持ちよさそうに鳴く。

 好きな人に撫でられると幸せになれるのがぷにもんという生き物なのだろう。



「よし、ピカリュウ。今度は二人で押してみようぜ!」


「ピカ!」



 元気よく返事したピカリュウはサタケに手を伸ばす。

 サタケはピカリュウの手を借りて立ち上がった。


 二人が同じ方角を見る。そこには高い鉄の扉が立ちはだかっている。



「いくぞ、ピカリュ……」


「待ちなさ〜い!」



 サタケたちの前に先ほど説明していたお姉さんが出てくる。

 丸いハットをかぶり、白い手袋をしたガイドさんだ。

 大きな胸のリボンがかわいらしく、半袖からは健康的な白い肌を見せている。



「いきなり出てきてなんですかぁ? これから門に挑戦しようとしてたのに」


「だから! これは開かずの門なんです! 観光名所なんですよ」


「えっと、つまり?」


「開いちゃったら観光名所じゃなくなります!」


「そんなぁ……」


「ピピカァ……」



 サタケとピカリュウは同時に肩を落とした。



「私のガイドを聞いてましたよね? ちゃんと聞いてなかったんですか?」


「アハハ、長い話ってどうも苦手で……」


「はぁ。とにかく! 選ばれた者しか開けちゃダメなんです!」


「選ばれるって?」


「後ろを見てください。ここで修行しているのは選ばれるためなんですよ!」



 サタケとピカリュウは拓けた土地の方へ振り向く。

 いろんな人が思い思いの特訓をしている。

 ぷにもんの技で空に浮く人やぷにもんをきらびやかに飾る人など様々だ。


 サタケは彼らを眺めながら素朴な疑問を口にする。



「あの、選ばれるって、誰にですか?」


「それはですね……」



 ガイドさんが嬉嬉として口を開いた時、空から黒い影が落ちてくる。

 サタケの前に着地して、もくもくと土埃を上げた。

 ピカリュウがびっくりしてサタケの背中に逃げ隠れる。



「まだ話の途中ですよ! ……って」



 ガイドさんがぷんすか怒った相手は、鋭い目つきをした女の子だ。

 見た目は16歳ほど。白黒ツートーンの短い髪で、赤色の瞳がサタケを穿つ。

 古い鍵の形をした装飾が顔の脇からぶら下がっている。



「選ばれるのはこのソルベルにですよ!」



 ガイドさんが大声でソルベルという女の子に指をさした。



「ソルルッ」



 空に向かって勇ましい声を上げる。

 美少年にも見えるソルベルだったが、胸の膨らみは明らかに女を主張している。

 今まで見たどのぷにもんよりも大きなおっぱいをしていた。



 修行をしていたトレーナーたちがガイドさんの声を聞きつけてやってくる。

 誰も彼もがソルベルに戦いを挑もうと躍起になっていた。


 ピカリュウは彼らの気迫に驚いてサタケの背中で小さくなる。


 ソルベルの前に何人もトレーナーが飛び出した。

 その誰もをソルベルは無視して、サタケの前に歩み寄る。

 足取りはとても軽やかで、無視されたことに感動するトレーナーもいた。



「ソル」


「え……? もしかして俺と戦いたいのか」


「ソル!」



 ソルベルは射抜くようにサタケの後ろに隠れたピカリュウを見た。



「ピィィ〜……」



 ピカリュウは情けない鳴き声を漏らしながらサタケの背中に顔を押し付けた。



「戦おうぜ、ピカリュウ! 俺たちは選ばれし者になれるかもしれない!」


「ピィピィ」



 嫌そうに首を振る。

 サタケは思わず落胆してしまった。

 するとピカリュウはハッとしてソルベルの前に飛び出す。



「戦ってくれるのか、ピカリュウ!?」


「ピィ……」



 いつもなら元気の良い返事が来るはずなのに、返ってきたのは力のない返答。

 群衆がピカリュウに向かって一斉に図鑑を向けたからである。

 なんだかちょっとした撮影会場みたいになっていた。



「そうか、ピカリュウは珍しいぷにもんだから、いっぱい見られるんだ……」


「ソゥルル!」



 緊張して動けないピカリュウなど無視して、ソルベルが力を貯める。

 何か技を出すらしい。

 ソルベルの技を見られるからか、観衆たちがヒートアップする。



「危ないピカリュウ! 相手に集中しろ!」



 今のピカリュウの状態ではサタケの言葉は届かない。


 ソルベルが目をつぶり、力を貯めている。

 何らかの技のようだ。



「……くっ!」



 とっさにサタケは走り出す。頭の笠が勢いで後ろに回った。

 サタケは怯える彼女の肩を掴んで、横方向に突き飛ばす。

 その光景にマリンコと戦った時を思い出した。



「ソルッ!?」



 ソルベルが驚いた声を上げた。

 まさか人間がぷにもんを守るとは思わなかったのだろう。

 ソルベルの深紅の瞳から発せられた眼力をサタケは間近で浴びてしまった。


 横に飛ばされたピカリュウは目の前でサタケがやられるのを見る。

 ショックに言葉を失ったのか、小さな手で口を覆った。


 盛り上がっていた観衆にも沈黙が流れる。



「ソル……!」



 ソルベルは目に宿る力を消した。


 全身の力が抜けてサタケはその場に膝をつく。

 バランスを失い、頭から地面にぶつかりそうになった時、ピカリュウが跳んだ。

 サタケは彼女に支えられ、なんとか地面との衝突を免れる。


 群衆の中から壮年の男が出てきた。



「うむ。これはソルベルの【かぎあけ】であろう。心を奪われたのだな」



 男は何度も頷きながら、蓄えた白い髭を撫で付けている。



「ピィカ! ピィカ!」



 サタケは放心したまま、ピカリュウの声を聞いていた。


 ソルベルはぶつぶつとつぶやいて、人々の群れを掻き分けて出ていく。

 崖の出っ張った石を三角跳びで伝い、ひどく急な崖を登り切る。



 残された人々の視線はふたたびピカリュウに戻った。

 その時、ピカリュウの身体がビリビリと輝きを帯び始める。


 瞬きはサタケの身体も包み込み、



「ピィカ……、リューー‼」



 まばゆい電撃に変換された。



「あばばばばばばばば‼ ピカリュウ! ストップ、ストップ‼」



 サタケが叫んで、ピカリュウの長いびりびりぎゅーが終わった。



「ピィカピ?」


「ありがとな、ピカリュウ。おかげで目が覚めたぜ」


「ピッカァ!」



 サタケにピカリュウが抱きつく。

 まだビリビリしているのか、サタケは痙攣しながらもピカリュウを撫でた。



 先程の男が頷きながら、拍手をする。

 群衆たちも拍手を追随し、その場は拍手喝采、賞賛の嵐に包まれた。

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