すごくいいやつ
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僕とアドルフは2人で建物の中をあちこち探し回った。教官達に見つかるとまずいのでコソコソ歩き回って、ピピンの力も借りてようやく僕らのクラスを見つけこっそり合流した時には、僕らの中に妙な絆が出来ていた。
幸い、まだクラスメイトの顔と名前が一致していないようで、誰も僕らがはぐれた事には気づかなかったようだ。
…幸いなのかはちょっと怪しいか。
初日なのにかなりの疲労感を覚え僕は寮の部屋に向かった。アドルフも同じ寮らしい。
僕の部屋は6階にある。アドルフの部屋も同じ階なのかずっと付いて来る。
まだ付いてくる。
部屋の前に着いた。
まだいる。
え、まさかなんだけど…。
「アドルフ、部屋どこ?」
「え?ここだけど?」
なんと!ルームメイトだったのか!
何たる偶然。嬉しい驚きだ。
はぐれた時にたまたまはぐれていたヤツがはぐれずに部屋の前まで来たと思ったらまさかのルームメイトだったというはぐれメタルもビックリの偶然だ。
しょうもないことを言うのは後にして僕らは部屋に入った。中は狭いが割と綺麗で玄関から入ってすぐ左手にトイレとシャワー、その奥には二段ベッドが設置されていた。
「明日も早いし、もう寝ようか。」
アドルフの提案に首肯して、僕は二段ベッド
の下に潜り込んだ。
「あれ?下でいいのかい?」
「下の段の方が慣れ親しんだ高さだからね。寝やすいんだ。あと緊急時でも下の方が即座に対応できる。」
「合理的なんだね。」
「まぁね。じゃ、おやすみ。」
「あぁ、明日から頑張ろう。」
そう言葉を交わしたあと、アドルフは部屋の電気を消し、ベッドの上に上がったようだ。
悪いな、勝手に下取っちゃって。
アドルフ、お前すごいいい奴だな。
泣けるわ。
草木も眠る丑三つ時、巧が寝ているのを確認し、アドルフは声を潜めその名を呼ぶ。
「ピピンさん。これからも予定通り行動していけばいいんですね?」
その言葉に呼応するようにアドルフの目の前から光が溢れ、ピピンが現れる。
「あぁ、これからもよろしく頼むぜ。より効率的な雄鹿 巧の強化、それにはお前の力がいる。お前がこれからもあいつのサポートをしてくれ」
「わかっていますよ。人族の繁栄のためですからね。」
「…やっぱお前はいい奴だな。」
そう呟き、ピピンは姿を消した。