英雄の名は伊達じゃない
ちょっと短いです。
あと、本文で巧 雄鹿と名乗っているのはこの世界の名前の表しかたと合わせているからです。
英語でタロウ ヤマダって言ってるのと同じ感じです。
コンコンっとノックを2回。
「入れ」と中から女性の声で応答があった。
これかなり緊張するな…。
扉を開け「失礼します」と一礼。そして入室する。中にいたのは銀髪のショートヘアの若い女性。このヴィランドルフ士官学校の総帥エヴァ=クローヴィス准将だ。
この国の軍隊の階級は、上が元帥から下は二等士兵までと自衛隊とだいたい同じような感じだ。ということはこのクローヴィス准将は若くして上から5番目の階級というものすごいお方なのだ。
「明日よりこの学校に入学致します。巧雄鹿です。本日はこれからお世話になる総帥様にご挨拶に伺いました。」
「ふむ。結構。わざわざ挨拶にくるとは律儀だな。礼を重んじるものは好感が持てる。これから苦しいこともあるだろうが、精進せよ。」
「はい、ありがたいお言葉です。日進月歩、努力する次第であります。」
「よい。下がれ。」
「失礼しました」
来た時同様一礼してから退室する。
総帥室からしばらく歩き、周りに誰もいないのを確認する。それから…
「ぶっはぁ!怖かったぁ!!」溜め込んでいたものを吐き出す。
「お前、敬語とか使えたんだな」
いつの間にかピピンが現れていた。
「いや、もう会話の内容とか全然覚えてない。敬語使えてたのか…よかった…。」
「戦姫相手に毅然としてたぜ。ちょっと見直したぞ。」
「そうか…」
戦姫 エヴァ=クローヴィス。異種族の敵を60体以上討伐した者に贈られる野戦敢闘賞保持者。さらに龍族の単独討伐、彼女の指揮した大隊が難攻不落と言われたヴァンダル戦線の獣人族を蹴散らした、など功績は数しれず。
なんて話を来る途中ピピンから聞いていたので僕はもうかなりビビっていた。
そして実物を目の当たりにしてチビった。
…いや、ほんのちょっとだから。
刺すような威圧感。一挙手一投足を見られているような眼。戦姫の名は伊達じゃなかった。ああいう人が戦争の英雄になるんだなぁとしみじみ思ったね。けど…。
「これから、お前があれになるんだよ。そんであれを超すんだ。」
「…まぁね。その為にわざわざ召喚されてやったんだから。」
僕にも一応英雄になる資格はあるんだぜ?