ブルグンドの英雄
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そこかしこで詠唱が聞こえ、その詠唱と術者に応じた魔法が顕現する。発動された術式は暴力の雨となって死喰族に降り注ぐ。が、しかしさすがアンデッドだけあってなかなかにしぶとい。みんなの魔法がまだ拙いってのもあるんだろうけどな。
爆炎と死喰族の咆哮渦巻く戦場を赤髪の侍が疾駆する。そう、武士系女子アリサ=アンティオキアだ。性格が武士と思っていたらまさかの攻撃手段まで武士だった。
刀持ってる。刀持って死喰族を切り刻んでいってる。いい画だ。
恐らく魔法で作り出したか召喚したかした刀だろう。刀で攻撃する際に出来た死角を魔法でカバーする戦法のようだ。なんとアリサは術式を3個同時に展開出来るらしく、防護魔法と攻撃魔法、さらに刀の発動の三段構えだ。やはり高い能力を有していた。
僕ほどではないけど。
え、あ、なんか嫌な奴みたいだった?
いや、でも事実だし…。
本気を出せば10秒かからずに蹂躙出来てしまうので、僕は先程から最低限の攻撃魔法を発動して後は傍観の構えだった。だってみんなの訓練にならないじゃん。
みんなの為を思って自分は無能に甘んじる献身の姿勢は、だがしかし赤髪と教官には怠けているようにしか見えないらしく(そらそうか)、
「何をしている雄鹿!!私にデカイ口を叩いておいてなんだその体たらくは?!」
「雄鹿!!貴様やる気があるのか?!戦意なしと総帥に報告して退学にしてやってもいいんだぞ?!」
教官の言葉が効いた。
気付いたら僕は全力の7重展開で最大火力の魔法を展開していた。
空間が歪み、紋章が7つ浮かび上がる。その紋章から光球が現れ、閃光がそこから死喰族に照射されていく。それに当たったものは一瞬で消し飛び、消え去った。
結構な数が残っていたが、僕が詠唱を唱えた数秒後には教官の死喰族は跡形もなく消えていた。
「こ、これは…」
「なんと…信じられん…」
お二方も満足してくれたようだし、これで総帥に報告されることも…
「雄鹿!!」
「ひぃっ!」
教官が吼えたかと思うと俺の肩を掴んできた。
「総帥に報告だ!!」
「え、なぜですか?!」
ま、まさか出し惜しみしていたのが駄目だったのか?!あんなすぐに制圧出来るならもっと早くしろ、とそういう事なのか?!仕方ない、ここは味方に誤射しないように戦域を見計らっていたと言い訳して…。
「これ程までの逸材を俺は見たことがない!今すぐにでも実戦で戦えるレベルだ!」
「は?」
「ブルグンドで英雄になれるぞ!さぁ着いてこい!」
「え、ちょ、」
色々展開が凄すぎて理解が追いつかなかった。