第五話『これが…死か…ふむ、なかなかに滑稽だな。』
学校が始まりましたー。
今回の話は結構短めです。
「ハルト、ハルト!」
どこからか俺を呼ぶ声が聞こえる。でも、もういい、俺は戻れる自信がない。戻ってもローレンに迷惑を…あれ?ローレンってだれだ?そして、戻るって何にだ?俺は今まで何をしていた?
「ふふふ、やっぱり、記憶をなくしているね。」
誰だ?お前はどうして俺の事を知っている。
「僕の名前は『バルハザード』、ローレンの事を思い出せないのは、君に与えられた代償だよ。」
代償だと?それはどういうことだ?
「君に与えられた代償は『死んだときにこれまであった事を忘れてしまう』という能力さ。まあ、今回は運よく死ぬ直前で止まったからいいけど。」
死んでないのかよ。まあ、意味は分かった。用は死ななければいいんだな。
「そういうこと、今回は死んでないから記憶は返すけど何回も僕のところに来ると世界がこんがらがるかから気を付けて。」
次の瞬間、バルハザードは手を振りかざした。
気が付いたらバルハザードの姿はなく、俺はもといたダンジョンの奥深く『深部区』のボス部屋にいた。もちろん、記憶は元に戻っている。
「ハルト!よかった。気が付いたんだね。」
ローレンが俺の方へと近づいてきた。
「ああ、全く、あいつめ。俺が倒れている時に声をかけやがって…」
「ん?どういうこと?」
やべっ、こいつにはバルハザードの声が聞こえないんだった。
「い、いや、何でもないよ。それより、ボスは倒したけど…特にこれといった変化はないね。」
ローレンは自分のステータスの経験点の欄を見せ、俺に言ってきた。
「ほら、今回のボス戦で経験点が、二千も獲得している。これは、とても、大きい。むー、でもラストアタックは持っていかれた。」
ローレンに言われるまで気が付かなかったがボス攻略は経験点の稼ぎ場と運が良ければとどめの一撃というものがもらえるんだっけ。たしか、昔のオンラインゲームで同じシステムのゲームがあったな…ゲームのタイトルは何だったかは忘れたけど…
「それじゃ、俺の方にラストアタックボーナスが入ってるわけだ。ちょっと確認してみるからあっちに行っててくれ。」
「なんで?私がハルトの、ステータスの確認をするのは、当然の事。」
そういってローレンは俺のそばから離れようとはしなかった。
どうしてこうなった。俺はしぶしぶ、ローレンの前でステータスを確認した。
「えっと…レベル上昇が二で合計レベルがこれで三十五、経験点が二千五百、多分、ローレンより五百多いのはラストアタック分だろうな。んでラストアタックボーナスがこの旗『下剋上の旗印』か…多分、あのゴブリンキングの後ろにあった旗ってことだろうな。全く気が付かなかったけど…えっと、能力は『この旗を部屋に置いているとその周辺の人物は物理体制五十%引き上げすることができる。又は魔法体制五十%のどちらかを引き上げできるが、選ばれなかった方は九十%減少する』だって、道理であいつらあんなに体制が偏っている訳だ。だけど…うーん、なぁ、ローレン、この旗を使うかどうかはゲットしたその人次第ってことでいいよな?」
俺は旗を見つめながらどうするかを考えていた。
するとそんな俺を見ていたローレンが考えて口を開いた。
「もちろん、このダンジョンはそういうルールだからね。でも…もしよかったらその旗を私にくれないかな?もちろんお金は払うけど、その旗を欲しい人が、もしかしたら、いるかもしれないから、いなかったら私が使えばいいし、どうかな?」
うーん、まあ、お金が手に入るのなら別に構わないけど…でもなぁ…
俺がローレンの言葉に悩んでいるとローレンが再び口を開いた。
「今すぐにとは言わない。とりあえず、ハルトが持っていればいい。でも、これだけは答えて、どうしてハルトが『二刀流スキル』を使えるの?」
あ、やっぱり覚えていましたか、うーん、どうしよ。ここが一番の悩みだ。露骨に変な回答をしてしまえば、ローレンは二度と俺とはパーティを組まないだろう。かといって想像したものを具現化できるという事を話してしまえば記者や職人などが俺の家に押し寄せて『あれ、作って』とか『これも頼むよ。』とか言われてしまうと埒がない。つまりはどっちによっても俺に逃げ場はないという訳だ。だから俺は意を呈して口を開いた。
「『オプティカルコマンドスキル:二刀流』だよ。」
「どうやって出したの?」
おおう、この人が食いつくということは相当なことなんだろうな。俺はしょうがなく答えた。
「いつから使えるようになったのかは全く知らないけど、たまたまステータスを見ていたらこの文字があったんだ。でも、こんなものがあるなんてあんまり言い出しにくいだろ?」
「まあね、私は大丈夫だけど、『団結族』の中にも妬みや恨みを持つような人物は、少なからずと存在するからね。」
「だろ?だから言いたくなかったんだ。」
はい、すみません嘘です。思いっきり嘘です。だってだって…どんなものでも具現化できる自分だけのスキルとか言えるわけないじゃないですか。
というか俺の口調ぶりがどっかの某二刀流使いとほとんど一緒なのに突っ込みを入れたいんだけど…
「分かった、ハルトの二刀流については黙っておく、だから、心配しないで。」
なんだ、こいつは…天使なのか?いいや、天使だ。間違いなくそうだ。
あんなバカ天使とは違う。こいつこそが本当の天使だ。
「わかった、ありがとう。」
俺はローレンのやさしさに歓喜するしかなかった。
◆
そのころ、自宅のバカ天使はというと…
「ヴェックショーン。うう、風邪でも引いたかな?」
自宅でとても大きなくしゃみをして、帰りの遅い大翔を今か今かと待っていた。
ゴールデンウィーク明け初めての投稿ですね。少し時間を空けていましたが下書きが完成しましたので今日と明日の分は大丈夫かなと思う今日この頃の作者です。
そういえば、この作品を友人に見せたらこんなことを言われました。
「なぁ…この作品って3人称視点なの?それとも主人公視点なの?どっちなの?」
はい、よく言われます。なぜだか私の作品って視点がぐちゃぐちゃすることがあるんですよね。ホントになんでだろ。という、愚痴は置いておいてえー、答えの方はですね、『基本的には主人公視点、だけどたまに3人称視点になる。』ということになりました。
では、次回の『俺が異世界転生したらケモ耳とモフモフとダンジョンの世界だった件』第六話でお会いしましょう。