第一話『あれ?いきなりハッピーエンド!?』
お久しぶりです。零話やプロローグを書いて放置はいけませんね。
「すみませんでした!すみませんでした。」
俺は目の前の女性が何度も謝っている意味がよくわからなかった。
それどころか周囲にいた人たちまでもが何だ何だとがやがや集まってきたよ、どうするか…
「え…えっと、取りあえず謝るのはやめていただけませんか?それにここでは人目につきますので落ち着いたところでゆっくりと話してくれませんか?」
とりあえず、今のこの状況を何とかしないといけないということしか今の俺は思い、場所を変えることにした。
俺は女性の手を握って走った。
この時点で俺の中ではもう、クリアでいいんじゃね?とか思った。
んでも、まだモフモフしてもらってないな…
◆
とりあえず、人目につかない林の中まで来たのは良いけど俺の体力パラメータなさすぎ…RPGとかに出てくる最初のゴブリンの方がまだ体力はあるぞ。
「ハァハァ…よっし、ここまでくれば大丈夫だろう。なあ、あんたに色々と聞きたいことがあるけど大まかに分けて三つに絞る。
①、ここはどこであなたは誰なんだ?
②、どうして俺が異世界転生者だってわかったんですか?
③、そしてそれに対してどうしてあなたが謝ったんですか?」
俺は分かりやすく端的にその女性に問いた。
女性の方はまだ少しおどおどしていたが俺の方を見てしっかりと答えてくれた。
「ここは『グラリア』といい、猫耳の少女たちと奥にはダンジョンがあります。あ、自己紹介がまだでしたね。私の名前は『エリス』。この世界に滞在しているただの住人です。二つ目の質問の返答、あなたが異世界転生者だと分かった理由は『あなたから漂ってくる匂いの違いです。』基本的にこの世界は生まれたときに三つの種族に分かれます。冒険を主にダンジョンへともぐりこんでいる者を『団結族』。また、この世界を仕切っている貴族たちがいてその貴族たちを『権力者』。そして、私を含め、この世界を有意義に過ごしている者を『傍観勢』と言います。そしてそれぞれの種族には該当する匂いが存在していてあなたからはそのどれも感じ取れなかった。だからこの世界のものと違う、ということであなたが異世界転生者だということは分かったんです。そして三つ目の返答ですけど…」
あの…ところどころのルビ振り、絶対悪意あるよね?
エリスは俺の意志など気にせずに少し躊躇った。俺も唾をのみこみ、続きを待った。
そしてエリスは勇気を振り絞って言った。
「連れてきた人物:アリエルは私の実の妹なんです。」
な、何だと??このいかにも優しそうな人があのバカ天使のお姉さんだと?いやいや、そんなわけが…あるわ。確かに言われてみればどことなくあのバカ天使に似てる、そこが姉妹ということなんだろう。と考えたところで俺は、ん?ちょっと待てよ。と思った。
「ちょっと待てよ、あんたが…」
「エリスで結構です。」
「んじゃ、エリスがバカ天使のお姉さんだということは分かったけど、じゃあ、なんでこんなところにいるんだ?エリスの言っていることが全部正しければエリスも一応天使のはずだ。それが、なんでこの世界に滞在しているんだ?」
そう、これが俺が気になっていた違和感だ。血筋がつながっているのなら間違いなくこの人は天使だということ、それはつまり、こんなところでうろうろしている訳がないということだ。
エリスは少し考えるそぶりをした。いやいや、そこ考えるところなのかな?
「えっと、私とあの子は勢力が違うんです。」
「えっ、精力?」
「違います、勢力です。」
「うん、分かったよ。」
ボケをかまそうとしたらまじめに話を聞けやと顔で言われたので俺はおずおずと従うことにした。
「話を戻して、私とあの子は勢力が違くてあの子の方が圧倒的に補給できる魔力が違うんです。」
「と、言いますと?」
「補給できる魔力が大きいとそれだけ脅威な魔法を放つことができるということです。」
「ふーん、んでその魔力があいつの方が上だということか…」
「そういうことです。」
「んまあ、後は本人にでも聞くか…」
俺はそういうと上空に声を飛ばした。
これが、俺に与えられた一つ目の能力『声空飛力』
まあ、多分天界にいるバカ天使との会話の為に作られたのだろう…ま、そんなことはどうでもいいか。
『おーい、バカ天使!お前のお姉さんにこれからお世話になるからお前からもなんか言えよ。』
次の瞬間、物凄いスピードでバカ天使が空から降ってきた。
そして、第一声はというと…
『なんで私がバカ呼ばわりされるんですか?』
この言葉である。やっぱりバカ天使はバカだった。
◆
「とまあ、こういう訳でしばらくエリスのお世話になるということなんだよ。」
俺は今まであった事のすべてをこのバカ天使に話した。
「分かりました、しばらく姉さんのところに滞在することを認めます。ではこれにて私は…」
なんでお前の方が上から目線なんですかね?貴様がその態度を取るのなら俺にだって考えがある。
俺は帰ろうとして翼を広げたバカ天使の翼をつかんだ。
翼ってつかもうと思えば掴めるもんなんだな。
「おう、ちょっと待てや、バカ天使。お前、人が迷惑を被っているんだ。当然、お前もついてくるよな?」
俺の言葉にバカ天使は笑顔で答えた。
「何を言っているんですか?私はこの後仕事がたくさんあるので帰らなくていけないのですが…」
おおう、こいつ調子に乗ってやがるな。ならこっちにも策があるんだ。
『おーい、天界の者ども!このバカ天使連れて行くけど問題あるか~?』
俺は天界に向けて声を飛ばした。すると数秒で返答が返ってきた。
『どうぞ~ご自由に使ってくださ~い。』
この返答を聞く前に俺はエリスの手を、バカ天使の翼をつかみ林を抜けた。
「よし、分かった。ほら行くぞ!バカ天使、エリス。」
「この裏切り者~」
「分かりました、妹の面倒はお任せください。」
さすが、お姉さんだ。妹の事はよくわかっているな。
◆
林を抜けて街に戻ると群がっていた人だかりはもうなくなっており、平和な毎日が訪れようとしていた。
だが、こういう時に主人公というのは迷惑なことに巻き込まれるのである。
「おい、兄ちゃん、何、エリスに手を出しているんだ?こいつは我々のものなんだが?」
『エンカウント、いかつい男が俺の前に現れた。
俺はどうする?
答えは決まってる、『逃げる』
残念、男に回り込まれた。』
う~わ、どういうことだよ。なぜかド〇クエだし…
俺はそんなことを考えながらエリスを改めてまじまじとみると…なるほど、はだしだし、洋服もボロいものだ。うむ…これは…奴隷ということか。
俺はそいつをなるべく怒らせないようにしてエリスをそいつに向けた。
「おう、悪かったな。そんなこと知らなかった。何せ訪問者だからな。この街の常識とかそういうものが分からなくて、ほら、行けよ。エリス。」
俺はエリスを突き飛ばすようにしてそいつに渡した。
「悪いな、兄ちゃん。ここの常識は俺たちが決めているんだ。」
男…めんどくさいから名前は無しな、エリスを抱えると俺たちから反対方向を向いて歩き始めた。そして別れ際に見た悲しげなエリスの表情を俺は忘れなかった。
◆
「どういうことですか!姉さんが奴隷だったなんて…」
「おまっ、声、声大きいよ。」
別れた後、俺たちは近くの喫茶店に入った。正直な感想この街にも喫茶店というものがあって良かったと思っている。そして入るや否やバカ天使が大声を出した。
俺はどうどうとバカ天使を落ちつけさせ、注文しておいたコーヒーを飲んだ。
「とりあえず落ち着けって、俺だってこの世界に来たばっかだったから奴らに対してどうすることもできない。だから俺は目標を作った。」
「目標?」
バカ天使が首を傾げながら俺を見た。いいだろう、気になるのなら教えてやろう。
「ズバリ、『エリスを救ってモフモフしてもらおう作戦』だ。」
ふっふっふ、驚きすぎて声も出ないか…まあ、無理もない。俺だってこの作戦を立てたのは今さっきだからな。
「バ…」
「バ?」
「バカ言ってんじゃないわよーー」
バカ天使に大声でバカって言われた…俺、一生の不覚。
「おまっ、だから場所を考えろってここは公共の場だ。万が一連中の手下にでも遭遇したらどうする気だ。」
このバカタレがとも付けそうになったが今はこの興奮気味のバカ天使を何とかして落ち着けさせないと… しょうがない。あれをやるか…
「おい、お前、『お姉ちゃんと仲良くないんだろ?』」
俺がそういった瞬間、バカ天使は目をギョッとさせた。
「な、なんでそれを…」
やっぱりな、俺だって伊達にヒキニートやってるわけじゃない。それにヒキニートをやってると嫌でもわかるんだよ。相手が思っていることがな。確か…そんなことをするゲスな奴がどっかのゲームに存在していたような…
確か『第三の眼』だったかな?
まあ、とにかくだ。こいつがエリスと仲良くないのは一目瞭然だ。
「あのな、あんなの見せられたら誰だってわかるわ、いいか、お前がエリスと話している時どうにも互いに引きつった笑顔を浮かべていたんだ。まるで、逢いたくなかった相手に出会ってしまっかのようにな。そして、エリスが最初、この世界に来た時に連中はなぜか明らかに魔力が高いお前ではなくエリスを奴隷とした。つまりだ、大まかにはこういう事だろう。『昔、エリスを囮にしてお前だけ助かった事がある、だから逢いたくなかった。』と、違うか?」
おおー我ながら名推理だな、これはもうあの小学生探偵も目がないんじゃね?
俺がそんなことをのんきに思っているとバカ天使が息を吸い込んで俺に言った。
「分かりました、貴方の言っていることはすべて正しいです。だからそれを踏まえて言います。『私と一緒に姉さんを助けてくれませんか?』」
そういうアリエルの目からは涙が流れてきた。
こいつ、こんな表情もするんだな。しょうがないな、ここは今までのアリエルの功績とその涙に免除して答えてやろう。
『は?いやいや、無理だから。』
次の瞬間、アリエルの強烈なビンタが店内に響き渡ったのは言うまでもない。
後書きとはいえど何を書いたらいいのか分かってないです…そういえば、この作品は完結した瞬間にオーバーラップWEB小説大賞に応募する作品になりました。それまでに完結できればいいなぁ…
では、次回の『俺が異世界転生したらケモ耳とモフモフの世界だった件』第二話でお会いしましょう。