第九話『この世界を変えるキーそれが『クリミア・コード』だ!(と奴はキメ顔でそういった。)』
今回の話から物語は急展開を迎えます。(フラグ)
完結まではまだまだありますが頑張っていけたらなと思っています。
「ハルト、その少年は誰なの?もしかして、そういう趣味がおありとか?」
家に入るな否やローレンが俺の方にずいと近づいてきた。
「この人はえっと…ほら…第一層にミノタウロスが出たじゃん?その時に襲われていた少年だよ。なんか助けたからお礼がしたいって今日、来てもらったんだ。それと俺はそういう趣味は一切ない。」
「ふうん、で、その少年君がお礼がしたいからここに入れた…と」
ローレンがそう言って俺から少年の方へと視線をずらした。
「は、はい。そうです。ハルトさんには前に助けてもらった恩がありますので今日、伺った次第です。」
おおー、なんかホントに社会人って感じのキャラクターだな。
っていうか今まで周囲に目を向けていなかったけど男性にもケモ耳は生えているんだな。なんか気色悪いな。
「事情は把握した、少年君。こちらに来たまえ。」
いつの間にいたのかアリエルが少年を居間に呼び出した。
「はい、では、失礼します。」
少年はそう言うと居間に入った。続けて俺も入ろうとしたけれどなぜかローレンに止められ、アリエルに締め出られで入れなかった。
「ハルト、状況説明の時間。」
「は、はいいっ」
『ローレンが怖い顔でこちらを睨んでいる。
ハルトはどうする?
コマンド選択『逃げる』『言いくるめる』『謝る』
ハルトは『逃げるを使った』しかし、ローレンに回り込まれた。』
「って、ド〇クエかよ。せめてポ〇モンにしてもらいたかったぜ。」
俺はローレンに分からないような言葉を発した。誰に向けてとは言ってない。
「?まあいい、そんなことより、あの人は多分危ない。気を付けて。」
ローレンはそう言うと玄関のドアを開けた。
「どっか行くのか?それと、危ないってどういう意味だよ。」
俺はそう聞いたがローレンは返答することもなくドアを閉めた。
しかし、俺は一瞬だったが見逃さなかった。
『ローレンのあんな表情は初めて見た。』ということに…
なんだか嫌な予感がして俺は飛び出したローレンの後を追いかけた。
◆
ハルトの家を飛び出したローレンは自分の愚かさを快感していた。
「ごめんね、ハルト、本当にごめんね。」
ローレンはその時に、一人の男性にぶつかった。
「あ、すみませ…ん?」
「いえ、こちら…こそ?」
その人はローレンにとって見覚えのある人間だった。
また、その人もローレンの事を覚えていた。
「ローレン…どうしてここに?」
「あ…父上…?」
その人物こそローレン=グレネビィアの父、ユウキ=グレネビィアだった。
「ローレン、お前がどうしてここにいるのかは私は興味がない。前にも言っただろう。私はお前に興味は湧かない。では、私はこの後会議があるので…失礼させてもらうよ。」
「ちち…うえ…」
ローレンはかすれる声で自分の父親の名前を呼んだ。
しかし、その言葉にユウキ=グレネビィアは返答することはなかった。
◆
俺はローレンを追いかけた先に待っていたのはローレンではなく複数の男たちだった。
「こいつらは…?」
俺が聞く前に男たちの中でも一番前に出ていたやつが剣を抜き、俺に向けた。
「お前はローレン=グレネビィアに手を出した、その罪、抗ってもらう。」
ローレン…まさかあいつがこいつらを呼んだのか…
俺が考える間も与えることなかった。
「キシシ、ボス、こいつ殺してもいいですか?」
一番破天荒な奴が俺に剣を向けたやつに聞く。
どうやら俺はこいつらに殺される運命なようだ。まあ、仕方ない。こいつらがローレンと関わっているのならそれはそれでいいのかもしれない。
俺は天を仰いだ。自分の死を直面したかのように…そいつらは全員で俺を殴ったり、持ち前の剣で俺を殺そうとした。
「ぐふっ…はぁはぁ…ガッ…」
ところが俺はいつまでたっても死なない。これがRPGならとっくに俺のHPは切れているはずだ。
なぜ、死なない…。俺はそのことしか考えていなかった。
その時、ずっと様子を見ていたボスらしき人物が急に出てきて、俺の胸倉をつかみ、問うた。
「お前、まさかここの世界の住人じゃないのか?」
俺はその問いにすぐに答えることができなかった。
「答えろ!どうなんだ。」
俺は黙ったままだった。でも、このままされるのもどうかと思い仕方なく答えた。
「…さあな…俺がこの世界の住人かどうかは勝手にしてくれ。だがな、もしも俺の逆鱗に触れたとき…その時は…誰であろうと俺の道は邪魔させない。」
その言葉にカッとなったのかボスらしき人物は俺を蹴り飛ばした。
「ぐっ…」
蹴り飛ばされた俺は衝撃で意識が朦朧としている中、ボスの奴が仲間に妙なことを言っているのを確かに聞いた。
『行くぞ…このまま、世界が変わってしまう前にすべてを片づけないといけない。奴らには絶対に渡すわけには行かない。わが国に伝わる最古の電子『クリミア・コード』を…』
「クリミア…コード…」
そう呟いて俺の意識は完全に消滅した。
◆
「ト…ハルト!」
俺が目を覚ました時、そこは見覚えのある場所だった。
そして俺をずっと呼びかけていたのはローレンではなくバカ天使ことアリエルだった。
「ハルト!気が付いたの?」
バカ天使が笑顔で俺を迎えた。
「ここは?…っ、頭が痛てぇ…」
俺は頭を抱え、ローレンを迎えるために立ち上がろうとしていた。
しかし、バカ天使に止められた。
「だめだよ、安静にしていないと…」
「いや…確かめたいことがあるから行かなくてはいけないんだ。」
俺はバカ天使の手を振りほどいた。
「ハルトは無茶をし過ぎてる。ローレンちゃんの事もあるけれど今は自分の傷を治すことが最優先だよ。」
ああ…こういう時だけこいつは役に立つのかもしれない。
俺はバカ天使の言う通り、立ち上がった体を下ろした。
「なあ、アリエル、答えてくれ、俺が意識を失ってから何日が経過している?」
俺の問いにアリエルは驚き、少し考え、俺の方を向いて答えた。
「えっと…ハルトが意識を失ってから代替、三日くらいたっているかな?」
三日…結構長く眠っていたんだな。
「それじゃ、次の質問、あの連中の攻撃で俺の体力は間違いなくゼロになった。そして死んでもおかしくない傷を負った。でも、俺は死ななかった。それはなぜだ?」
その質問をしたときに、アリエルは目を見開いた。
「はぁ…黙っていようと思っていたんだけど…最初、ハルトには能力を付けたって言ったでしょ?」
「ああ…でもそれは天界にいるお前との会話の為に付けたんじゃないのか?」
俺の言葉にアリエルは首を横に振り、俺の方をまじまじと見た。
「違う、そんな能力は私は付けてない。私が付けた能力は『どんなに体力がゼロになっても回復できる自動回復』の能力を付けたの。簡単に死んでもらっちゃ困るから…」
俺は驚きのあまり、最初、声が出なかった。
俺は何とか、かすれた声を出し、バカ天使に言った。
「なん…だと?つまりそれはどんなに傷をつけても死ぬことはない。ということなのか?」
どうやら俺の理解はあっていたようでバカ天使は頷いた。
「うん、間違いなくそう…だからハルトは死ななかった。でも、代償があって痛みは感じる。それにもう一つ言わせてもらうと、私が付けた能力は一つじゃないよ。」
バカ天使の言葉に俺は何も言えなかった。
いやー、ついにこの作品もプロローグを含めてですが、二桁に突入したことでかなりうれしさを感じている作者です。
ラノベの作品がアニメ化するとうらやましいなと思い始めました。んでも、それほど売れてないとアニメ化の話って周ってこないらしいですね、すごいですよね小説家の人たちって…
とまあ、こんな余談に付き合う訳にもいかないのでとっとと次回予告しましょうか『次回の俺が異世界転生したらケモ耳とモフモフとダンジョンの世界だった件』第十話でお会いしましょう。




