キメラーsecond stageー
ーー王城 2Fーー
「信次! おい信次! いっかりしろ!」
ダイダは信次のかたを思いっきり揺らし起こそうとするが全く起きる気配がない。ただ、見る限り外傷はないのだ。なのでもし起きれないとするならば呪いの類か、沈黙のこうかと考えられる。脈を測るとかなり弱ってるのがわかった。なれない力の使用と沈黙というユニーク魔法との戦いで予想以上に消耗していたようだった。
「くそ、『回復』! 『回復』! 『回復』!」
脈が弱りつつあったのが回復傾向に向かう。繰り返していくと脈がもとに戻ったようだ。
「とりあえずこれでいいな……」
疲れたのでそのまま座る。そして壊れた壁から見える空を見た。そこは青々としているきれいな空だった。
ふと、日本人だったことを思い出す。あのときはこんなきれいな空が見れなかった。大人になってからは旅行とか行けなくなった。時間がないのだ。時間という鬼と『おっかけっこ』している気分になる。遊びのように表現しているが決して楽しいものではなかった。しかし、日本にいた頃は本当にそれが当たり前だったことに……感慨深く感じる。
(……家族のことまでは思い出せないか)
家族という存在が自分にはいた気がする。いや、日本社会においては必ずいたはずだ。だが、神に転生したことにより思い出せなくなった。その事が辛く感じれないことが辛いのだ。誰しも、家族のことを忘れたくないと考えるはずだ。だが、ダイダは完全に忘れてしまったのだ。そして完全に忘れてしまったので、悲しむことすらない。
「……ま、俺には家族なんて要らんか。今は最高神、そしてワーカーホリックから逃げ出した奴なんだから、自由にいきるのが一番だな」
そんなことを呟きながら、ダイダは念話でフィリアを呼ぼうとしたときだった。逆にフィリアから念話が掛かってきたのだ。
『ダイダ様! 大変ですぅ!』
『んー? こっちは片付いたぞー』
『そっちがかたづいてもこっちが片付いてないのですよー!』
ん? 何言ってんだ? 敵はもういないだろう……。
そして俺は感知魔法を使い、範囲を王都に指定した。すると、フィリアと思われる魔力と、神力をもつ物体が戦ってることがわかった。
しかし、ダイダは1時間前には神力を持った奴を殺している。偶然なわけがない。
『ダイダ様! キメラですよキメラ! 倒したって嘘だったんですかー!』
『すまん、たぶんそいつスキルで復活しやがった』
恐怖の段階か。ここまで厄介だとは思ってなかった。
『フィリア、勝てそうか?』
『う~、ちょっときついかもしれません』
『いや、俺の時は圧勝で終わったぞ』
『す、すごいです! ダイダ様はさすがです。帝級魔法使ったのに倒せませんでした~』
何をいっている……? 帝級魔法で倒せない!?
たしか俺の時は『氷層世界』と『古代水龍』の二つの帝級魔法で倒したはず……。進化しているということか。
『わかった。今すぐ向かう。ただし、天界級魔法は使うなよ』
『はい!』
天界級魔法とは、人間に認知されていない、帝王級(帝級)魔法以上に存在する階級の総称だ。そんなものを王都で撃てば、大騒動になる。もう既に騒動になってるが……。
さて、フィリアに任せっぱではいられない。急いで向かわねば!
……信次をどうするか。その事に今気づいた。
「ったく、王さまんとこに届けるか」
信次を担いだダイダは、最上階にあるであろう謁見の場へと向かった。
ーー王城 5F 謁見の間ーー
ーー第3者side
謁見の間では意気消沈な状態の、衛兵と黒装束の人間が呆然と佇んでいた。この国の王であるグレゴリウスは50代という年齢にプラス20したのでは? というぐらいに老けて見えた。
近くにいた大臣は何人もが気絶しており、数人は首が胴から離れていた。王妃は泣きながら顔を伏せて手に埋めている。王子もまた、王と同じく老けていた。
「ひぐっひっひぐっうぐっ」
「うぅ……う~……ぐすっ」
二人の王女は泣いてしまっていた。どちらも成人に近い、またはしたとは言えどまだ10代、凄惨な現場になれているわけがなかった。
いったい何が謁見の場で行われたのか……。それは、ダイダと信次が、ブレイカーズのテンに苦戦していたときに遡る。
マルスはテンに神&勇者コンビを任せたあと、空間拒絶剣の回収をしようとした。しかし、テンが相手しているのは最高神。足止めに関して言えば能力の欠点がばれなければテンは無敵だ。初見では、沈黙は最強のユニーク魔法に感じるだろう。だが、複数属性の攻撃には対処できないので、時間がないと感じたマルスは、謁見の間へ突撃したのだ。
「魔族だ! やれゴハァ!」
「くそなにしグフゥッ」
「ひっ! や、やめアガアアァァ!」
こちらへと襲ってきた近衛兵を次々に殺害する。近衛兵は基本的に優秀な者が多い精鋭だが、ダークネスのマルスに勝てるほどの者はいなかった。
ほとんどの近衛兵が殺され、大臣や王族に連なる者が震えるなか、マルスは国王グレゴリウスに問う。
「この城にある神器『空間拒絶剣』の居場所を答えよ」
「……何故それを求める?」
「お前は質問できる側ではない。質問に答えよ」
威厳たっぷりに国王が問うが軽く一蹴する。しかし、王の余裕な態度を見た大臣が恐慌状態から脱却し、マルスへと強気に詰め寄る。
「こ、こんなことしてただで済むと思ってるのか!」
「魔族の国へと攻め込むぞ」
「神託はそちらにも届いているだろ! 協力しないとはなんたることだ!」
批判した大臣3人は、マルスの強さが測れていなかった。そして……。
大臣の3人の首が飛んだ。
マルスは全く動いているようには見えない。しかし、大臣の首が一瞬で飛んだのだ。ゴロゴロと転がる首が隣に並んでた大臣たちの足元で止まる。それを見た大臣たちは気絶してしまう。
さらにマルスは
「悪いが、これがいるから強気だったのか?」
剣を一振りした。すると風圧で天井が崩れ、中から黒装束を着た者達が落ちてきた。8人いた黒装束のうち4人が首と胴が離れている。
この者たちは、スパイや王族の護衛、国内の不穏分子の調査を行う 影の部隊だった。
「さて、どうする?」
剣先を王の鼻へ突きつけるマルス。もはや、この場の支配権はマルスに握られてしまった。
「……神器をもって参れ」
「……くっ、御意……」
国王が遂に折れた。
ーー
神器を回収したマルスは最後に王へ言った。
「魔王からの伝言を伝えよう。もし、復讐するのであれば我が魔族の国¨グラパリア¨へ宣戦布告すがよい。存分に相手になってやるとのことだ」
「な!? 貴様は四魔将か!?」
「さらばだ!」
そして、マルスは謁見の間から立ち去った。残ったのは凄惨な死体の山と、意識が抜けたかのような人だけであった。




