『安らぎの鐘』改造計画
ーー安らぎの鐘ーー
「まず、この宿の欠点をのべてみるぞ」
俺が勢い込んで堂々と言う。誰からともなくごくりと唾を飲み込む音が聞こえる。あ、違うランが肉を飲み込んだ音だった。
「この宿の最大の欠点、それは……」
「「「……」」」
「名前と情況が矛盾していることだ!」
「「「……」」」
「つまり、名前を『轟音の鐘』にすればいい!」
「「「……」」」
あ、あれ。沈黙の感じがなんか変わってきてる。具体的にいうと期待からの戸惑いからの呆れみたいな……。
「とりあえず、冗談はおいといて」
「「「冗談だったんかい!」」」
ツッコミありがとうございます。
「ここの鐘の音は煩いのだが、例えばこんな音はどうかな?」
そして、指をパチンと鳴らし魔力をだす。それに効果を付与すると、風鈴のような、鈴のような可憐な音をだす。
「う、うむ。これならば安らぎの鐘にふさわしい音だな」
「で、でもそれがどうしたの?」
おっと、これでは夫妻は分からない様子。
「つまり、俺の防音結界を使って轟音の鐘の音を可愛くしちゃうのさ」
「そ、そんなことできるの?」
「ああ」
ランが期待に満ちた目でみてくる。
「しかし、その、だな……」
「ええ、その、ね……」
ん、どうかしたのか?
「「申し訳ありません!!」」
「え、ママ! パパ! どうしたの?」
何か訳ありだな。
「実は、もう貯金が尽きるんです……」
「あと、2か月しか持たないわ……それまでに客足を戻すなんて無理よぉ……」
「安心しろ!」
なんだそんなことか。
「1ヶ月あれば十分だ。ギルドへの依頼を使って宿屋を宣伝する。さ、まずは宿に結界を張るぞ」
ーー
その夜、9時になる手前の時刻。3人家族とダイダはワクワクしながら宿内にいた。防音結界に細かい穴を開け、らさに音の振幅と振動数を変化させる効果を付与した。いけるはずだ。
ーー9時になったーー
~チリーン、チリーン
それは、風鈴が風にあおられて鳴るような、儚くか細く、しかし聞いた人が安らぐ音を出していた。
「「「やったぁー!」」」
「よし、成功だ」
さ、『安らぎの鐘』の反撃開始だ!




