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シタ大陸

 勇者一行は全滅した。

 果敢にも四天王に挑んだ勇者一行は平均70レベル。

 彼は最弱である最初の四天王に敗北すると思っていたが、意外にも勇者一行は三人目までは撃破した。

 そして四人目を相手に片腕を奪うまで奮闘して、全滅した。

 彼は大王烏賊に蹂躙された後の日々を思い起こして、とても成長したと感慨深く溜息を吐いた。

 大王烏賊に蹂躙されるまでの勇者一行は、自分達が死んだ理由は外的要因に終始していて、自分達に大きな落ち度は無いと思っていた。

 しかし、大王烏賊と言う存在はそんな奢りを打ち砕いた。

 敵わない強敵が存在する事を知ったのだ。

 更に言えば四天王は大王烏賊よりも強く、魔王はその更に先にある事を理解したのだ。

 大王烏賊を自力で倒せるレベルまで強くなった勇者達に対して、彼は初めて期待をしたのだ。

 仕事に終わりが来る事を。

 彼はこの新米勇者を一人前になるまで見守ったら、回収技師の職を辞する事を決意していた。

 そして最後の仕事がこんな間抜けな勇者だと言う事に少なくない失望を抱いていた。

 最初の評価が低いからこそ、今の勇者に対する評価が相対的に高くなる。

 本来であれば四天王や魔王に敗れた勇者を回収する必要性は無い。

 可能であれば回収すると言う程度だ。

 しかし彼は、殺していた気配を完全に開放して四天王の前へと歩み出た。

「何や――っつ!?」

 四天王は誰何の声を投げ掛けようとして、途中で剣を構えた。

 深緑の大剣が彼の攻撃を辛うじて受け止める。

 弱い者やモンスターであればそれだけで消し飛んでしまいそうな気迫が深緑の剣に衝突した。

 彼が携えているのは三叉槍と鎌が一体となった武器である。

「……我は四天王が頂点、オー。汝の名を名乗れ」

 気迫に相対する四天王が冷や汗を流しながら名を名乗り、彼の名を尋ねる。

「名乗る名は無い。我は勇者の影、物語の舞台裏也」

 静かな回答が終わるその一瞬、隙とも呼べないほんの僅かな呼吸の瞬間。

 四天王が持つ深緑の大剣が砕け散った。

 堪らず後方へと飛び退く四天王が直後に目にしたのは、誰も居ない空間だった。

 彼はそこに居ない。

 切り伏せた勇者一行の遺骸もそこには無かった。

 既に彼の気配もそこには無く、実際彼は勇者一行の死体を持って王都へと引き返していた。

 他に誰も居ない場所で、四天王はゆっくりと腰の短剣を抜いた。

 四天王が警戒を解いて極度の精神疲労からその場に崩れ落ちるのは三時間も後の事である。

 その頃には神官がいつもと同じ復活の呪文を唱えていた。


「おお ゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない」


●四天王

 魔族の中でも特に強力な力を持つ四人の総称。

 四天王は魔王によって任命され、その能力は個体によって大きく異なる。

 頻繁に入れ替わる為個体の能力に関する情報は実質取得不可能である。

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