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ゼルタ城

 勇者一行は全滅した。

 ここ数カ月で随分頼もしくなった魔法使いも、新しく仲間に加わった戦士も、抵抗虚しく幽霊甲冑に斬り殺された。

 勇者は抵抗する間も無く斬り殺された。最初に斬り殺された。

 まったくもって情けない限りである。

 彼は廃城のぼろぼろに崩れた壁の陰で気配を殺していた。

 幽霊甲冑も彼の存在に気が付いていない。

 幽霊甲冑の周囲を照らす鬼火達も彼の存在に気が付いていない。

 レベル30相当のモンスター等この程度だと彼は思う。

 しかし、同等レベルの勇者一行にとっては全滅する程度には強敵だった様だ。

 ある意味で致し方無い物ではある。

 彼は仕事柄勇者がどのモンスターで躓くのかは良く知っている。

 幽霊甲冑は殆どの勇者が一度は破れるのだ。

 一つには初めての人型モンスターだと言う事が挙げられる。

 レベル70を越えれば珍しくない人型モンスターなのだが、これまで獣系を相手に経験を積んできた勇者一行にとっては難しい相手だ。

 幽霊甲冑の攻撃は高度なフェイントが混ざる。対人戦の経験に乏しい者には荷が重い。

 戦士も魔法使いも頑張ったのだが、結局攻撃は当たらなかった。

 フェイントが上手いと言う事は、回避もまた上手いのだ。

 獣型のモンスターは回避を重視しない。

 幽霊甲冑の様に致命傷となる一撃を狙って淡々と攻撃を躱して来るモンスターは、30レベルまでは皆無なのだ。

 だから、焦れて隙の多い攻撃を加えた所を返り討ちに遭う。

 真正面から突っ込んで行って普通に斬り殺された勇者は論外としか言いようが無いが、魔法使いと戦士は及第点だなと、彼はそう思った。

 さてお仕事だと、彼は気配を殺したまま立ち上がる。

 立ち上がると、背負子から大筒を取り出した。

 最初に気付いたのは幽霊甲冑だった。

 大筒を見た幽霊甲冑は咄嗟に回避を試みるが、それよりも砲弾が半身を持ち去る方が先だった。

 がちゃりと虚しい音を響かせて、幽霊甲冑の上半身が石張りの床に落ちた。

 彼に五体の鬼火が襲い掛かる。

 彼は落ち着いて大筒を振り回した。

 ごうと風が舞い、大筒に薙がれた鬼火は掻き消えた。

 鬼火は炎が遺志を持った様なモンスターなので、普通の消火作業で倒す事が可能だ。

 まあ、大筒を振り回してそれを成す事は普通出来ないのだが。

 彼が勇者一行の死骸へと歩み寄ると、幽霊甲冑の上半身は腕だけで匍匐前進をして廃城の奥へと逃げて行った。

 追撃は簡単だが、それは彼の仕事では無い。

 彼の仕事は六つのパーツに分かれた勇者一行を持ち帰る事である。

 相変わらず見事な切断面だと、彼はそう思った。


「おお ゆうしゃよ しんでしまうとは なさけない」


●幽霊甲冑

 勝手に動く甲冑の人型モンスター。隙を見せると両断される。

 バスターソードと丸盾を持っており、驚くほど守りが硬い。

 堅い守りに加えて高い回避能力もある為、戦闘経験の乏しい者は何も出来ずに両断される。危険度は中級のモンスター。


●鬼火

 漂う火炎のモンスター。

 大量の水や土をかぶせる事で簡単に倒せるのだが、有効な消化手段が無ければ厄介な相手。

 洞窟や廃墟等の暗く狭い環境を好むが、時折そこから出て来ては周囲を焼き払う。危険度は中級のモンスター。

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