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異世界へダイブ

作者: 藤堂迷一

頭が痛い・・・


24歳ニートな俺は今泥酔して自宅への道を千鳥足で歩いている。

何故泥酔しているのかというと、祖父の「酒を飲める奴は友人だ。」と言う生前の迷言が原因だ。


そう、今日は祖父の葬式。


生前は何かと理由を付けて酒に誘われたが、断ってしまっていた。良く小遣いを貰っていたのに。


祖父の遺言のひとつに、「葬式が終わったら親戚で集まって飲みながら送ってくれ。」

というのがあった。


めっちゃ飲んだ。どのくらい飲んだか分からんが少なくとも俺的にはめっちゃ飲んだ。


そして、その結果として現在、祖父の供養?らしき事を終えた自己満足と酔いと頭痛を抱いて人気の無い道を歩き続けている。


ふと、気付くと道を一本間違えたのか、近所の神社の近くに来ていた。


祖父のことを、神様に頼んでおこうと思った俺はふらふらと神社の階段を上っていった。


鈴をガラガラ鳴らし、パチパチパチと手を叩き祖父のことを神様にお願いする。


ついでに俺のことを祖父から神様にお願いする。



生活が一遍するような奇跡が起こりますようように。

超一流スポーツ選手になれるような身体能力が手に入りますように。

透視能力とか千里眼とか未来視とか豪運とか超能力が日替わりで良いから使えたりしますように。



完全に酔ってるせいか中二病丸出しの願いを祖父と神様に願う24歳ニートの俺。


お参り?も終わらせふらふらと帰り道を歩いていく。


「あっ。」


おぼつかない足のせいで階段を踏み外す。


ゴロゴロと階段を転がらずに空を飛ぶかのように落ちていく。


そこで俺の意識は途絶えた。


頭痛ぇ・・・。」


目が覚めた途端に二日酔いに悩まされる。


「あれ?ここ何処だ?」


周囲を見渡すと、どう見ても自室ではない。それどころか森だ。どう考えても。


「え~と・・・確かじいちゃんの葬式に出て、それから酒飲んでお参りして・・・。」


そこでようやく俺は階段から落ちたことを思い出す。


「あ~誰かが運んでくれたのかな?それにしても身体に怪我したと思える所が全くないのはラッキーだったな。」


酔った挙句階段から落ちたにも関わらず怪我をしなかった幸運を喜ぶ。


「とりあえず町に戻ってみないとどうしようもないか。」


二日酔いの頭痛を我慢してのろのろと森の中を歩き始める。


だが歩けども歩けども町はおろか道すら見つからない。


「これは完全に迷ったか?」


どうやら森の奥の方へと歩いてしまったようだ。これ以上迷うとガチで遭難してしまいかねない。

やむなく俺は頭痛が収まるまで休憩する。


「そろそろ良いか。」


頭痛が収まり俺は自信が余りない木登りを開始する。木の上から町なり道を探そうという安直で確実と思われる作戦だ。不安要素としては木登りなぞここ10年一切していないことくらいか。


だがそんな不安も登り始めるとあっさり無くなる。まるで自分の身体ではないかのようにスルスルと木を登っていく。そして辺りを見渡す。


「おいおい冗談だろ・・・」


見える物は全て木。町どころか道すら見当たらない。


「まさか・・・。」


ここでようやく俺は酔った俺から所持品を盗み山奥へ捨てられた可能性に気付く。


「財布も携帯もあるな・・・他に目ぼしいものは持ってなかったよな?」


こうなってくると何が何だが分からない。しかしここで携帯の存在を思い出す。


「まあそうだよな・・・。」


しかし、当然のごとく圏外。分かったのは今が朝の10時30分である事だけ。


「これは本気でやばいな。遭難どころか殺されかけてるじゃねえか。」


そう思い途方に暮れてしばらくした頃、ドーン!という音とともに遠くで1本の木が倒れる。


俺は一瞬の迷いの後。すぐに倒れた木の方角へ走り始める。


 身体が軽い。まるで自分の身体ではないかのような華麗な疾走に自分で驚く。


頭の痛みの引いた錯覚だと自覚しつつも走り続ける。すると少し場所でまたドーンと音がする。

そちらへ向かい走る。しかしそこで音の出どころに居るのが一般人ではなく誘拐犯である可能性に思い至る。慌てて気配を殺して忍ぶように歩いて様子を見に行く。


居たのはどう見ても木こりのおっさんだった。倒した木を慣れた手つきで丸太にしている。

他に周りに人が居ないのを確認して、声をかける決心をする。


「こんにちは。」

「うおっ。誰だおめぇこんなところに。」

おっさんは俺をやや警戒しながらも返事をしてくれた。


「俺は柴田裕二。道に迷ってしまってしまいまして。すみませんが町への道を教えていただけませんか?」


俺が名乗ったことでおっさんは警戒をといて返事をしてくれた。


「変わった名前だな。ワシはハイムという。町へと言うがこの辺の町だとここから3日はかかるぞ。」

「ええ!?」


俺はあまりの衝撃に一瞬頭の中が真っ白になった。俺の名前は平凡だと思われることやハイムというやや変わった名前は良いとしても、町まで3日とはこの人は仙人か何かなのだろうか。


「それじゃハイムさんは森の中に住んでいらっしゃるのですか?」

頭に湧いた疑問をそのままハイムさんにぶつける。


「いや、ワシは近くの村で木こりをしている。村で良ければ案内してやろうか?」

「すみませんがお願いできますか。」


村でもなんでも人里にさえ行ければ家まで帰れるだろうという考えでお願いする。


「分かった。それじゃすぐ用意するから少し待っててくれ。」


ハイムさんは、そう言うと木をあっという間に丸太にして先ほど倒したと思われる丸太と2本まとめてあっさり担いでしまう。


呆気にとられていたが、俺の道案内の為に仕事を中断させているのだ担げるかどうかは怪しいが言わねばならないセリフを口にする。


「1本は俺に担がせてください。お仕事の邪魔をしてしまっているのに手ぶらで道案内してもらうのも余りに申し訳ないので。」


「そうか?それじゃすまんが頼むわ。」


木こりから丸太を1本受け取る。予想に反してあっさり担げた事に拍子抜けしつつも安堵する。


「それじゃ行くぞ。」


こうして俺は木こりの後を付いて村へと向かって歩き出した。




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