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 正樹とは、高校に入ってから知り合った。彼は軽音楽部で、決してクラスの中で目立つタイプではなかったけど、少なからず私とは趣味が合ったし、私にはそれでよかった。

 順調だと思っていた。もう、二年の付き合いだったし、ついこの間記念日を二人で祝ったばかりだった。ただ、人生というのは、そううまくは行かないように出来ているらしく、一昨日、急に、別れを告げられた。理由は、語られなかった。彼なりの考えが在るのだろうが、私に伝わらなければ、それは自己満足でしかない。意味を成さない。

「大丈夫」男はまた、微笑んだ。「アイは、君にぴったりだと思う。君のような人に持っていてもらいたい。アイは君から離れて行きはしないよ」

 彼のほうを見る。

 そのあと、ちらりと値札に視線が行ったのを、気付かれてしまった。

「もちろん、君がよければ、そのまま持って帰っていいよ。お金は要らない」

 胸の前で両手を開いて見せる。

「そんな」こちらは慌ててそれを振った。「頂くなんて。ちゃんとお金は払います」

「と言うより、実は値段、考えてなかったんだよね」わざとらしく顎に手をやる。「ネットで売っていたものとはまた違う、特別な子たちだから、本当はこういう風に、誰かにあげるためだけに、店を開いたのかもしれない。だから、これはサービスなんじゃなくて、お願いなんだ。君にアイを引き取って欲しい、という」

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