四
よくある、熊のぬいぐるみのはずだった。ただ、感覚が、私に、これだと言っている。そんな気がしたのだ。
男は私の視線に気付いて、
「それ、アイという名前なんだ」さらに加えて、聞いても居ないのに、「実は元カノの名前なんだよ」
余計な情報までくれる。
「そうなんですか」ただ、私がこのアイを気に入ったのは、間違いなかった。「可愛いです」
「え?」呆けたような声は、私の言葉を何か勘違いして受け取ったからかもしれない。「あ、うん。よく出来たと思ってる」
「ハンドメイドなんですか?」そこで私は改めてちゃんと男の顔を見た。「海外の、とかじゃなくて?」
「そうだよ」照れくさそうに笑う。「ここにある六体は全部僕が作ったものなんだ。以前はネット販売をやっていたんだけど、こういう風に、ちゃんとお客さんに会って、話して、この人にならと思える人に売りたいなって」
「そうなんですか」また私はそれを繰り返した。「凄いです」
「凄くは無いよ」頭を掻く。無邪気な人のように思えた。「でも、ありがとう」
この人になら、いいか、と思った。
「実は私、彼に振られて、寂しくて、こういう拠り所が欲しくなったんです」