三
まるで何かの儀式のようだ。
吸い寄せられるようにその三角形の中心に身を置いた。
お店だと言うのに、棚にはそれぞれ一段につき一体のぬいぐるみしか置かれていない。つまり、たったの六つしか商品が無いわけだ。よく、お店を作る気になった。
「こんにちは」
失礼なことを考えていたからか、声を掛けられて驚いた。店内に客は私しか居ない。視線を彷徨わせてみると、声の主はレジの向こうに居た若い男だとわかった。身体を傾け、首を伸ばし、目が合うと笑みをくれる。
「ど、どうも」
返事をされると思っていなかったのかどうか、男はさらに破顔一笑し、近付いてきた。すらりと長い四肢に、細面。全体的にひょろ長い風体だった。ただ顔の彫りは深く、男らしくも見える。
「とりあえず、ご来店ありがとう」制服を着ていなくても、話し相手である私のことを自分よりも年下であると認識したらしい。「こんな立地だからあんまり人が来ないんだ」
曖昧な相槌を返してやる。こうして知らない人間に話しかけられるのは苦手だった。
適当にやり過ごして、切りが良くなったら店を出よう。思って、視線を逸らした先から、今度は、目を動かせなくなってしまう。