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二
南館三階の隅っこ、アジアン雑貨屋と百円ショップに挟まれる形で、ぬいぐるみ専門店があった。外観はさほど凝っているようには見えない。店名も聞いたことのないものだった。そういえばこの場所は、前に来たときはウィッグ専門店だった気がする。移り変わりが激しい場所というのは街中に点在しているものだ。多分、ここも、そういう「場」なのだろう。だからここの店主も、或いは自分がまたどこかへ移ろっていくのを自覚していて、それでシンプルなつくりにしているのかもしれない。というのは、考えすぎか。
何気なしに店内に踏み入る。両隣とは当然間仕切りがされているが、そうでなくとも、少々閉鎖的な印象を受けるであろう棚の配置だった。というのも、二段積みの棚が三つ、それぞれが内を向くように、店の中央に三角形を作っているのだ。もちろん人が出入りできるようにと、棚同士が接しているわけではないのだが、それにしても内向的に思えた。