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一
高校生にもなってぬいぐるみが欲しいだなんて、恥ずかしくて誰にも言えなかった。
ましてや欲しくなった理由というのが、恋人に振られて寂しいからなんて口が裂けても漏らしちゃいけない。
学校からの帰り、途中の公衆トイレで制服から私服に着替える。家のあるほうとは逆方向の電車に乗り、ショッピングモールを訪れる。知り合いに見られたくなかったが、木を隠すなら森、人ごみのほうが却って一人ひとりにまで目が行かないだろうと踏んでの選択だった。
モール内の雑貨屋やおもちゃ屋を覗いてみるが、これと思えるものが無かった。大きすぎず、小さすぎず、可愛らしすぎず、かといって無愛想でもないような、と思うのは、願いすぎだろうか。でも、私ももう高校生で、可愛げのある子たちと違って、それを持っていることが何かのプラスになるわけでもない。ここで買って、帰る途中で恥ずかしくなるようなものは選びたくなかった。




