出会い-6
「うーん…これがそういうわけでもないんだな」
理一の言葉に上野氏が返す。
「え、あんなデカくてパワーあるなら角度付ければホームランなんてポンポン打てるんじゃ?」
「この子を外で打たせたことも何度かあるんだけどね…ホームランはあまり打てない様子だった」
「…どうして?」
「簡単なことだ。上見てみなさい」
上野氏が上を指差す。二人も見上げてみた。
「…そういやここ、天井低いっスね」
「あいつのバッティングはここで形作られた。正面にいくら鋭いライナーを飛ばしても、なかなか弾道が上にはいかないようだ」
「それはちょっと、もったいないですね」
「仕方ないが…確かに…少しかわいそうでもある」
その時、不意に打球音が止んだ。
「親父」
ビクリとする二人。
『パンダ』が、喋った。
「今日、もう上がるわ」
「そうか」
上野氏が事もなげに答える。
理一が小声で「やべーよやべーよ」と繰り返し呟いている。
金属バット片手に迫るパンダは、ヤンキーのカチコミのそれだった。
「そろそろ新しいの作ってくれ。手応えが無い」
「全く、呆れたやつだ」
「それに付き合ってるあんたもな」
パンダは居すくまる二人を空気のように無視して、バッグを背負い立ち去ろうとした。
「・・・あの!」
凜太郎の口が、勝手に動いた。