出会い-2
二人は手続きを済ませると、センターに一つだけピッチングスペースに入り、キャッチボールを始めた。
「なんつーか、お前上手いなやっぱ。キャッチボールで分かるわ。送球が全然ブレないもんな」
「後藤君…ゴリも流石キャッチャーだと思うよ」
「…ッ!?、お前ゴリはやめろよ!ほら見てみろ、全然ゴリラじゃないだろ!」
理一の顔は確かにゴリラというよりは狐のようなシャープな造形である。しかし体格はキャッチャーらしくがっちりしていた。
「…じゃあミキリン呼びも止めてください」
「ったく、どうでもいいことは思い出しやがって…じゃあいいよ、ゴリで」
「止める気ないんですか!ミキリン呼び!」
「んな言われたってミキリンはミキリンだもんなー…というかお前、サイドスローなのな」
「体格無いし、変則フォームの方がいいかと思って」
凛太郎の身長は160センチに届かない程度。体格も細身で、それも「女の子っぽい」と言われる原因の一つだった。
「お前ダメだよー最初から守りに入っちゃ。身長なんてこれからまだ伸びるんだからよ。エースになるんだろ?エースならオーバースローからストレートビューン、フォークズドーンよ」
「…そういうもんかな」
「いやそうでもないな」
あっさり前言撤回。
「エースに大事なのは心意気だからな。フォームやスタイルは関係ない…よし、立ち投げはこの辺にして、座ってみようか」
理一は片膝をついて座ると、ミットを凛太郎に向け構えた。
「フォームくらいちょっと作ってみたんだろ?」
「…うん」
人に投球を受けてもらうのは始めてのことだった。
ピッチャーとしての第一球。
そう考えると凛太郎は少し緊張した。
「何やってんだ、来いよ」
「…オッケー」
フッと一息吐くと、理一の構えるミットを見つめる。
腕を高く掲げ、ワインドアップ(※)モーション。
(お、それっぽいじゃん)
理一 、ニヤリと。
凛太郎は高く足を振り上げるとタメを作り、左足を踏み出すと同時に力感を開放。
右腕を思いきり振り抜いた。
(な!?)
※ワインドアップ
腕を頭の上まで振りかぶること。また、そのフォーム。