出会い-1
三城凛太郎がわざわざ家から二駅も離れた上野バッティングセンターを訪れた理由、それはピッチングスペースの存在だった。
「悪りィ悪りィ、待たせちまってよ」
ベンチで本を読んでいると、約束から十五分遅れて待ち人が来た。
「いやごめん、わざわざ来てもらって」
「いいってことよ。他でもないミキリンの頼みだからな」
そう言うと、ニカッと笑う
「久しぶりだな」
待ち人の名は、後藤理一。
小学校時代の凛太郎の友人。
「受験の時会ったばかりじゃないですか」
「あ、そうだっけー?じゃ高校ではよろしくなミキリン」
「…その呼び方はやめてください」
「アハーッ、冷たいぞミキリン!てか何だそのしゃべり方!よそよそしいぞ!フランクに行こうぜ、これからチームメイトなんだからよ」
「…何でもいいじゃないですか!ミキリンはやめてください」
「あー、さてはシニアの荒波に揉まれて人が変わっちまったのか?なんせあの久我峰だもんな。でもーー」
と言うと、理一はいきなり凛太郎の頬をつまむ。
「なんか小学校の時より可愛くなってね?いいんだぞもうカミングアウトして。…女の子なんだろ?」
「違う!僕は男だっ!!」
「おーその意気だ。やっと俺のミキリンが帰ってきたぜ。さて、そのミキリンが一世一代の決心をしたと聞いて俺はここに来たわけだが…」
そう言うと理一はおもむろにエナメルバッグを開け、大きなミットを取り出した。
「とりあえず、投げろよ。話はそれからってことで」
後藤理一。
ポジションは、キャッチャー。