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戦国ロリポップ  作者: カノン
第壱章 不思議な二匹
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プロローグ

戦国武将が好きで、知識もあまりない中、書きました!

宜しければ読んで見てください…。

──十二月二十四日 クリスマス・イブ


雪降る夜の街に、イルミネーションが様々な色に輝き、道行く人を幸せいっぱいの表情にしていく。

手を繋ぎ家路を歩く家族連れ。

お互いの手をしっかりと握り、寄り添いあうカップル。

皆がこの日、街の中心にある大きなモミの木の下で、幸せに溢れていた。


「はあ~…。今日も寒いね……」


そして此処にも、悴む手に息を吐きながら家路を急ぐ女の子がいた。

学校の冬用制服に、ピンクのマフラーを巻いただけの見るからに寒そうな格好で、彼女は肩まである黒髪を靡かせ、道に積もる雪を踏みしめ歩いていた。


「えっと……今日はコロッケとエビフライと…あ、あと唐揚げと、それから……あ!」


今日の晩御飯の献立を考える彼女の顔には、自然と笑みが浮かぶ。

だが、急に顔色を変えると、携帯を取り出しどこかに電話を掛け始めた。


『はい…雪崎です』


電話の向こうから聞こえたのは、二十代後半だろう男の声だった。


「も、もしもし!?あ、あの…月之瀬です!」


彼女が名を名乗ると、電話の向こうで男のククッと笑う声が聞こえた。

その笑い声に彼女が口ごもると、それを察したように男は言った。


『ふふ…相変わらず、そそっかしいですね…月之瀬さん。大丈夫です、まだ閉めていませんよ?…ふふ」


全部お見通しと言っているようなその落ち着いた声に、赤面しつつもホッと息を吐くと、彼女は「今から行きます!」とだけ言って電話を切った。


(もう~!何で肝心のクリスマスケーキを忘れるのよ、私のバカ!)


心の中で自分の失態を嘆きながら、彼女は来た道を走り出した。


──そして、数分後…。

色んな店が軒を連ねる街の一角で、彼女は『洋菓子店 雪崎』と書かれた看板が掛けてあるお店の前に立っていた。


「こんばんは…」


鈴の付いたドアを開け中に入ると、コック帽を被ったこの店の主人である雪崎が、両手で箱を持ち出迎えてくれた。


「いらっしゃい。…こちらがご注文のクリスマスケーキです」


「あ、ありがとうございます!」


彼女が嬉しそうに箱を受け取ると、雪崎は笑みを浮かべ優しい眼差しで彼女を見つめる。

だが直ぐに、意地悪く微笑むと彼女に言った。


「今度は、取りにくるのを忘れないでくださいね?……お客様」


「うっ……はい、気をつけます」


お客様を強調されうなだれた彼女に、雪崎は笑い声を上げた。

それに吊られ顔を上げると、彼女も笑顔をみせた。


店を出て空を見上げると、雪が少し激しくなっていた。

彼女は雪崎を振り返ると、頭を下げる。


「本当にありがとうございました!…失礼します」


「はい…雪で滑らないよう、気をつけて帰ってね」


「はい!」


顔を上げ笑顔を見せると、彼女は歩き出した。

その後ろ姿を見送ると、雪崎は笑みを浮かべ、店の中に戻っていった。



「頼んだのが雪崎さんのケーキで良かった…。他の所じゃ、きっと受け取れなかったよね……」


ケーキの入った箱を抱えながら、彼女は雪道を歩きながら一人呟いた。

雪崎の洋菓子店には、小さな頃から通っている彼女にとって、主人の雪崎は兄のように頼りにしている人物だ。

だからこそ、閉店間際でも店を開けて置いてくれた彼に、彼女は感謝していた。


「よし!ケーキも買ったし、早速家に帰って晩御飯を………ん?」


その時彼女の目の前を、寒さに震えながら何かを加えた犬が横切った。


(野良犬?確かあれって…ゴールデンレトリバーだっけ?……ていうか、加えてたの子犬じゃなかった!?)


この寒さの中、人間でも厳しい程の気温だ。子犬を連れた野良犬など、凍死や餓死してもおかしくないだろう。


(どうしよう、気になるけど……でも、晩御飯が…………。)


「あーもう!しょうがないなぁ……。お祖父ちゃんごめん、晩御飯は少し待っててね…」


家で待っているであろう祖父に謝罪し、彼女は犬を追い駆け出した。ケーキを崩さないように…。


やっと追いついた所は、洋菓子店雪崎と隣の店の間の人が一人入れるくらいの隙間だった。


(………。結局、戻っただけじゃん!私!)


脱力しかけた彼女は、隙間で丸まり暖を逃がさないようにしているゴールデンレトリバーと、その腕の中でぐったりしている豆柴を目に留めると側に近づいた。


「ガウゥゥ……」


すると彼女の気配に気付いたのか、ゴールデンレトリバーは豆柴を庇うように立つと、彼女を威嚇した。豆柴もその後ろで牙を見せる。

だが、体力が限界なのか今にも倒れそうだった。


「怖がらないで……私は何もしないよ。」


ケーキの箱を地面に置き、両手を広げ敵ではないことを示す。

だが、ゴールデンレトリバーはさらに威嚇を強め、今にも噛みつきそうな勢いだった。


(どうしたら、伝わるかな……?)


そう、彼女が考えていた時だった。突然ドサッと雪の上に豆柴が倒れたのだ。

それを見た彼女は、反射的に手を伸ばし豆柴を抱き上げようとした。


「いっ!!」


だが、腕に激痛が走りその手を一瞬止めた。彼女は、震える体で噛み付くゴールデンレトリバーを睨みつけ声を荒げた。


「今此処にこの子を置いたままにしたら、この子は死んじゃうの! 私は…この子も…貴方も助けようとは思っても、危害を加えようとは思ってないの!!分かった!?」


彼女の怒気に一瞬怯んだのか、それとも彼女の言葉を理解したのかわからなかったが…ゴールデンレトリバーは口を離した。

それを見た彼女は豆柴を抱き上げ、首に巻いたマフラーを外し、豆柴を包み込んだ。

その小さな体は氷のように冷たく、寒さに震え、今にも凍死しそうだった。


(どうしよう…このままじゃ、家に着く前に死んじゃうよ……)


「月之瀬さん…?」


ギュッと豆柴を抱きしめ途方に暮れていた彼女の背後から、声をかける人物がいた。

その声の主に気付いた彼女は立ち上がると、振り返り距離を詰める。

 

「雪崎さん!!お願いします!家まで送ってくれませんか!?…無理なのは重々承知ですが……」


「う、うん?…構わないけど」


「ホ、ホントですか!?」


彼女の真剣さに雪崎は一瞬怯むも、ちょうど自分も帰宅するところだったことを話し、車を取りに一旦戻っていった。


「大丈夫……必ず助けるよ」


彼女が優しくそう囁くと、腕の中の豆柴が安心したように微笑んだ…気がした。



───これから起こる戦いに、巻き込まれていくとは……まだ彼女は知らない。


深々と、雪降る夜に……彼女『月之瀬 千代』は彼らと出会った。









読んで下さりありがとうございます!


感想等頂けると嬉しいです…。

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