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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

∋AnotherWorld

作者: dai

多少残虐な表現がありますのでご注意下さい。

ようこそ、不思議な世界へ。

…『一体どういう事か判らない』…なら僕が説明しよう。

君はこの世界に迷い込んでしまったみたいなんだ。…何で分かったかって?それはもちろん、この世界で君みたいな人間を見かけるなんて事は中々無いからさ。

…『もとの世界に戻れなかったらどうしよう!?』だって?それに関しては大丈夫だよ。今までに何十人、何百人もこの世界に迷い込んでるけど、みんな暫くしたらもとの世界に戻れたんだもの。

さて、このままボーッとして過ごすのもどうかと思うし、ちょっとこの世界を案内しよう。…『面倒』…そんなこと言わないでちょっとついてきて。


さて、暫く見ても面白くないものしかないからこの世界の説明をしよう。一番最初は、この世界には形がある物は存在してなくて、まるで霧だけが漂っているような世界だったらしいんだ。でも数千年くらい前に突然生き物が生まれたんだ。立て続けに何匹も、何匹も。僕が生まれたのはそんなに前の話じゃなくて数百年くらい前で―

…『数百年も生きている生き物なんて居るはずがない』…ここは君がいつも居る世界とは違うんだよ。生き物が生まれる条件も、死ぬための条件も違うんだ。


さあ、やっと着いた。ここは足…いや、生き物の名前を言うのは止めておこう。前にこの世界に迷い込んだある人は名前を聞いただけでアレルギーを起こして一目散に逃げちゃったからね。

…『大きいアメーバみたいなこれにアレルギーを起こす人なんて居る?』…僕にも何でそんなことが起こるのかさっぱり分からないんだ…

それで、多分今の時間帯、時期だともうすぐ面白い事が…見えた!ほら、あの向こうのあいつ!透明な槍が一本、また一本と突き刺さって槍まみれになってる!見てると楽しいんだよね、これが…

…『どうしてこんなことに…』?君がいつも居る世界ではただ単純作業としてやっている事で、小学生でもやっている事のはずなんだけどなあ…。

…『気持ち悪くなってきた』…なら違う場所に行こう。…あそこなら簡単に死ぬような生き物は居ないと思うし。さあ立って、早く行こうよ。


また見ても面白くないものしかない場所を通るから、今度はまた別の話をしよう。実はこの世界は、君がいつも居る世界と繋がっているんだ。そして、この世界は君たちがいつも居る世界の内側に含まれている。…『信じられない』って?だろうね。普通、君たちがいつも居る世界からは、この世界の物はこんな感じには見えないらしいからね。

そして、君たちがいつも居る世界の人間の介入によって、今さっきみたいに生き物が傷ついたり死んだりするんだ。…『君はそれを悲しんだり、恨んだりすることは?』…そんなことはしないさ。どうしてかと言えばそもそもこの世界は…あ、着いたよ。

さっきとは違う生き物、それも見るからに複雑な生き物…『名前を知りたい』?多分聞かない方が良いと思うよ。教えたことがあるけど、ほとんどの人が名前を聞いて嫌な思い出を思い出してその辺りにうずくまっちゃったし…。

…『犬みたいで可愛い』…それは良かった。もし可愛がりたいなら撫でたりしても良いよ。この世界の生き物はみんな突進してきたり、噛みついたりはしないから安心して。

…『この子が突然悲鳴を上げだした!』…?…あー、脇腹に透明な短刀が突き刺さってる。たくさん血も出てる。短刀の動きも内臓を抉るような動きだ。この様子だと数分で重要器官まで到達して死んじゃうね。『助ける方法は無い?』?無いよ。この世界から外側の世界には干渉できない。この生き物の悲鳴も聞こえたりなんかしない。成すがままにされて死ぬ、それがこの世界の生き物の運命なんだ。

…とうとう死んじゃったね。…『また気分が悪くなってきた』…そうか。じゃあ、今度は逆に何も居ない所へ行こう…あ、ちょっと待って、今から変わったものが見られそうだよ。

ほら、さっき死んだあいつを見て。さっき短刀が突き刺さったところから傷口が開いて…そして腹部の皮を切り取るように更に傷口が広がって…内部の器官が短刀で無造作に掻き出されて…中から透明な刀が出されて…

…ごめん、もっと気分を悪くさせちゃったみたいだね。じゃあ、何もないような所に行こう。


…えーと…何を話そうかな…。そういえばこんな事があったんだ。あるとき、君みたいにこの世界に迷い込んだ人が居たんだ。その人はとある職業の人だったんだけど、その人は僕がなにも説明していないにもかかわらず、直感的にこの世界が何なのか理解したんだ。そして、その人は手当たり次第に武器を生み出しては生き物を殺していった。簡単に死んでしまうような生き物からそう簡単には死なないような生き物まで…。その人の職業柄か、慣れていたんだって。そして、あるときにふと、その人は僕の正体に気付いて、僕を殺そうとした。僕がこの世界で数百年も生きているにもかかわらず、一度も見たことがないくらい複雑な武器でね。…結果はこの通り、僕はまだ生きている。ただ左足に浅い傷ができただけ。あの時に限らず、時たまにこの身体に武器が刺さるけど、浅い傷をつけて僕を苦しめるだけ。僕は無駄に死ににくかったのさ。この世界で無駄に苦しみながら生きていかなければいけない運命なのさ。…あ、ごめん。間違って物凄く存在感がある物の前に連れてきちゃった。


『これは何?透明で綺麗だけど…』…これは全部武器なんだよ。この透明な山全てが武器でできているんだよ。石器や無骨な鈍器から、刃物・ハンマー、果ては拳銃やライフル、光学兵器まで。そしてこの山の上の方には機関砲が何十万門、何百万門も設置されているんだ。単体の威力はたかが知れているけど、それで殺した生き物から採れる材料を組み合わせれば、大抵の生き物を殺せる武器が作れる。


…君の身体、だんだん透明になってきてる。そろそろお別れの時間のようだね。またいつか、別な形で会えるかもしれないね。この世界は君がいつも居る世界に含まれている。でも君たちからはこの世界はこんな風には見えない。ここはそういう世界なんだから。

『最後に、この世界が何なのか教えて』…良いよ。ここはある学問の世界なんだよ。人間が作り出したんだよ。この世界の生き物は俗にいう「問題」というもの。


最後に僕からも言わせて。またいつか会おうね。完璧で美しく、それでいて残酷な、

数学の世界で。


[Q.E.D.]

お願いなので「これを読んで数学が嫌いになった」なんて言わないで下さい。お願いですから…。

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